
「Google検索でキーワード検索した際に表示される順位」から、AIに引用される設計へ
まず、AIO(AI Overviews)とLLMO(Large Language Model Optimization)を短く説明しましょう。AIOとは、検索結果の先頭でAIが要約を返す仕組みです。そして、LLMOとは、その要約の材料として「あなたのサイトを選び、引用してもらう」ための整え方です。
つまり、私たちがAIOやLLMOの対策としてやるべきことは難解な魔法ではありません。むしろ基礎の徹底です。まずAIに見つけてもらい、次に正しく理解させ、そしてAIが使いやすい形でコンテンツを渡します。その結果として、読者がWebサイトに来る可能性が高まるということなのです。
AIOと従来SEOのちがい
これまでのSEOは、「Google検索でキーワード検索した際に表示される順位」を上げる取り組みでした。検索結果の通常のリンク(いわゆる一覧)の中からクリックされて、初めてWebサイトに訪問してもらえます。
しかし、AIOでは、その順序が少し変わります。まず、AIはユーザーからの質問に対する答えを表示してから、その根拠となる出典リンクを並べます。SEOと少し流れが変わることで、勝ち筋も変わります。大事になってくるのは、以下の二点です。第一に、その検索でAIOとして、Webサイトが参照されたか。第二に、LLMOの要約の引用リンクに自分のWebサイトが含まれて表示されたかどうかです。
SEOと違って、表示された順位は参考情報程度でしかありません。つまり、これからは「参照されたか」「引用されたか」を定点で観測して、少しずつ改善する必要があります。
LLMに選ばれるまでの道筋(考え方)
まずは段取りを理解しましょう。AIがページを参照するまでには、流れがあります。
最初に発見。次に理解。そこから引用。そして来訪。ここまで辿り着けば成果となります。
たとえば、Webサイトの表示速度が遅かったり、全体のサイトマップの情報がなかったり、少なかったり、間違っているとAIに発見されるのが遅れます。逆に、Webサイトの構造化データ(サイトマップ)が整っていれば、AIがWebサイトの内容を理解するスピードが速くなり、回答への引用が起きやすくなります。したがって、そういった詰まりを一つずつ外していくことが、AIOやLLMOを進めることにつながるのです。
【導入】Yoast SEOプラグインについて
Yoast SEOとは
Yoast SEOは、WordPress用の最も人気のあるSEO(検索エンジン最適化)プラグインです。世界中で1300万以上のサイトで使用されており、初心者でも本格的なSEO対策を実施できるように設計されています。
複雑な設定や専門知識がなくても、プラグインの管理画面から必要な項目を入力するだけで、検索エンジンやAIに正しく情報を伝えるための仕組みが自動的に整います。本記事では、Yoast SEOの基本設定だけを使った、確実に実行できる方法を紹介していきます。
Yoast SEOでできること
Yoast SEOは、サイトのSEO対策に必要な基本機能を提供します。サイトマップを自動的に生成し、ページの追加や更新時に自動で反映してくれます。また、robots.txtファイルを管理画面から簡単に編集できます。さらに、構造化データと呼ばれる、検索エンジンやAIが理解しやすい形式のデータを自動的に出力します。
特に重要なのは、会社情報、サイト情報、記事情報といった基本的な構造化データを、設定画面で情報を入力するだけで自動生成できる点です。これにより、専門的なコードを書く必要がありません。
Yoast SEOのインストールと初期設定
インストール方法
- WordPress管理画面にログインします
- 左側メニューから「プラグイン」→「新規追加」をクリックします
- 右上の検索ボックスに「Yoast SEO」と入力します
- 検索結果に表示される「Yoast SEO」(緑色のYアイコン)を見つけます
- 「今すぐインストール」ボタンをクリックします
- インストールが完了したら、「有効化」ボタンをクリックします
初期設定ウィザード
有効化すると、初期設定ウィザードが自動的に起動します。起動しない場合は、「SEO」→「一般」から「設定ウィザード」を選択してください。
- サイトの種類を選択:
- 「組織」または「個人」を選択します
- 組織(会社)の場合は会社名を入力します
- 組織情報の入力:
- 正式な会社名を入力します
- ロゴ画像をアップロードします(正方形の画像を推奨)
- ソーシャルプロフィールの入力:
- X(旧Twitter)、Facebook、LinkedInなどのプロフィールURLを入力します
- ここで入力した情報は、自動的に構造化データとしてサイトに反映されます
- サイトマップの設定:
- 「XMLサイトマップを有効にする」にチェックが入っていることを確認します
- そのまま「次へ」をクリックします
- ウィザードの指示に従って最後まで進み、「完了」をクリックします
これで基本設定は完了です。以降の各セクションでは、この設定を活用した具体的な方法を説明していきます。
1. 検索エンジンによる発見を早く・確実にする
【概要】サイトマップとrobots.txtとは
検索エンジンは、クローラと呼ばれる自動プログラムを使ってインターネット上のサイトを巡回し、情報を収集しています。クローラが効率よくサイトを見つけて巡回するには、適切な案内が必要です。
サイトマップは、サイト内のすべてのページを一覧にした「地図」です。クローラはこれを見ることで、どこにどんなページがあるのかを一目で把握し、効率的にサイト全体を巡回できます。
robots.txtは、サイトの入口に置く「案内板」です。クローラは最初にこのファイルを読み、どのページを巡回してもよいか、そしてサイトマップがどこにあるかを確認します。適切に設定することで、クローラの動きを最適化できます。
【Yoast SEOでの設定方法】
サイトマップの確認
Yoast SEOをインストールすると、サイトマップは自動的に生成されます。正しく動作しているか確認しましょう。
- ブラウザで
https://あなたのドメイン名/sitemap_index.xmlにアクセスします- 例:
https://example.com/sitemap_index.xml
- 例:
- XMLファイルが表示され、サイト内のページ一覧が記載されていれば成功です
robots.txtの設定
robots.txtにサイトマップの場所を記載します。
- WordPress管理画面で「SEO」→「ツール」を開きます
- 「ファイルエディター」をクリックします
- 「robots.txtファイルを作成」ボタンをクリックします(すでに存在する場合はスキップ)
- エディター画面に以下の行を追加します:
Sitemap: https://あなたのドメイン名/sitemap_index.xml
- 例:
Sitemap: https://example.com/sitemap_index.xml
- 「変更を保存」ボタンをクリックします
【確認方法】正しく設定できたか
サイトマップの確認
ブラウザで https://あなたのドメイン名/sitemap_index.xml にアクセスし、XMLファイルが表示されることを確認します。
robots.txtの確認
ブラウザで https://あなたのドメイン名/robots.txt にアクセスし、Sitemap: で始まる行が表示され、正しいURLが記載されていることを確認します。
2. サイトの意味を誤解なく検索エンジンに伝える
【概要】構造化データとは
検索エンジンやAIは文章を読めますが、構造が明確に定義されているほど、正確に理解できます。構造化データとは、ページの内容を機械が理解しやすい形式で記述したデータのことです。
会社の基本情報を示すOrganization、サイト全体の情報を示すWebSite、個別記事の情報を示すArticleなどの型があります。Yoast SEOを使えば、これらが自動的に生成されます。
【Yoast SEOでの設定方法】
組織情報とWebサイト情報の設定
一度設定すれば、サイト内のすべてのページに自動的に反映されます。
- WordPress管理画面で「SEO」→「設定」を開きます
- 「サイトの表示」タブをクリックします
- 以下を入力します:
- 組織名:正式な会社名
- 代替名:通称や略称(任意)
- ロゴ:会社のロゴ画像をアップロード
- 「ソーシャルプロフィール」セクションで各SNSのURLを入力します
- 「変更を保存」をクリックします
記事の基本情報設定
投稿記事に対して、Yoast SEOが自動的にArticleの構造化データを生成します。必要な設定は以下の3つだけです。
- アイキャッチ画像の設定:
- 記事編集画面で「アイキャッチ画像を設定」をクリック
- 横幅1200ピクセル以上の画像を推奨
- 著者の設定:
- 記事の投稿者を適切に選択
- 公開日の確認:
- 記事の公開日時が正しく設定されていることを確認
これだけで、Yoast SEOが自動的にArticleの構造化データを生成します。
【確認方法】正しく設定できたか
- 確認したいページをブラウザで開きます
- ページ上で右クリック→「ページのソースを表示」を選択
- Macの場合:Command+Option+U
- Windowsの場合:Ctrl+U
- ソースコード画面で検索機能を使います
- Macの場合:Command+F
- Windowsの場合:Ctrl+F
- 検索ボックスに「JSON-LD」と入力して検索します
- 以下が見つかれば成功です:
"@type": "Organization"(組織情報)"@type": "WebSite"(サイト情報)"@type": "Article"(記事情報)
3. AIの回答に引用されやすくする
【概要】ページの冒頭を工夫する
AIも人間も、Webページの最初の数行に最も注意を払います。AIは冒頭部分から内容の要点を判断し、回答に引用するかどうかを決める傾向があります。
ページの最初に明確な要約や結論を配置することで、AIによる引用率が向上します。また、訪問者の理解も早くなり、サイトの評価も高まります。
【設定のポイント】
トップページやサービス紹介ページの冒頭を、以下のように工夫します。
一言で伝える
サイトやサービスの核心を一文で表現します。30〜70文字程度で、読者が3秒で理解できる簡潔さが重要です。
例:「中小企業の業務を、生成AIで2〜4週間で可視化・自動化します」
2〜3行で補足する
「誰が」「何を」「どのように」提供するのかを明確にします。
例:「創業10年の実績を持つ当社が、貴社の業務フローをヒアリングし、AIツールを活用した業務効率化をご提案します。」
3つのポイントを示す
対象(誰向けか)、進め方(どうやるか)、根拠(なぜ信頼できるか)を簡潔に示します。
例:
- 中小企業の経営者・マネージャー向け
- 初回ヒアリング→課題分析→実装の3ステップ
- 導入実績50社以上、平均業務時間30%削減
行動を促すボタンを一つ配置
「無料相談を予約する」「資料をダウンロード」など、具体的なアクションを示します。ボタンは一つだけにすることで、訪問者を迷わせません。
【確認方法】
スマートフォンでの確認
実際にスマートフォンでページを開き、スクロールせずに一言メッセージ、補足説明、ボタンが見えるかチェックします。
Googleでの確認
自社サービスに関連するキーワードでGoogle検索し、AI Overviewsが表示された場合、引用文があなたの冒頭文に近い内容になっているか確認します。
4. 効果を確認する
【概要】なぜ確認が大切か
SEO対策は一度やって終わりではありません。定期的に効果を確認し、少しずつ改善を続けることが大切です。週に一度、簡単なチェックをするだけで、何が効果的かが徐々に見えてきます。
【確認方法】
Google Analytics 4(GA4)での確認
GA4を使って、どこからサイトに訪問者が来ているかを確認します。
- GA4管理画面にログインします
- 左メニューから「レポート」をクリックします
- 「ライフサイクル」→「集客」→「トラフィック獲得」を開きます
- 表の中で「セッションのデフォルトチャネルグループ」という列を見ます
- 「Organic Search」の行を見つけます
- これが検索エンジンからの訪問数です
- 数値が増えていれば、SEO対策の効果が出ています
- 「Referral」の行も確認します
- 他のサイトからのリンク経由の訪問数です
- AI検索サービスからの流入もここに含まれることがあります
週次チェックの習慣
毎週同じ曜日に、以下をチェックする習慣をつけましょう。
- GA4で訪問者数を確認
- 前週と比較して増えているか
- Googleで自社名を検索
- サイトが上位に表示されているか
- 主要なサービス名で検索
- AI Overviewsが表示されるか
- 表示された場合、自社サイトが引用されているか
これらを記録していくことで、どの施策が効果的だったかが徐々に分かってきます。
【小さな改善を続ける】
効果が出ない場合は、以下のような小さな改善を一つずつ試してみましょう。
- ページのタイトルをより具体的にする
- 記事の冒頭に要約を2〜3行追加する
- アイキャッチ画像を内容に合ったものに変更する
- 関連ページへのリンクを追加する
一度に複数の変更をせず、一つずつ試して効果を確認することが大切です。の改善と週次観測を回すだけです。結果は小さくても構いません。ゼロではなく、線になれば十分です。
よくあるつまづきポイントと対処法
初心者がSEO・AI対策を進める中で、よくつまづくポイントが3つあります。事前に知っておくことで、無駄な時間や労力を避けることができます。
ポイント1:FAQページがAIに拾われにくい
どういうことか
よくある質問(FAQ)ページを作成すれば、すぐにAIが引用してくれると期待しがちですが、実際には思ったほど拾われないことが多くあります。
理由は主に2つあります。一つは、FAQページの質問が一般的すぎて、他の多くのサイトと重複している場合です。「料金はいくらですか?」「営業時間は何時ですか?」といった質問だけでは、AIがわざわざあなたのサイトを引用する理由がありません。
もう一つは、回答が短すぎて情報量が少ない場合です。「はい、対応しています」「9時から18時です」といった一言だけの回答では、AIが引用する価値のある情報とは判断されにくいのです。
対処法
FAQを作成する際は、以下の2点を意識しましょう。
具体的で独自性のある質問を選ぶ
あなたのビジネス特有の質問を優先します。例えば、一般的な「料金はいくらですか?」ではなく、「中小企業向けの業務自動化は、初期費用と月額費用を合わせていくらから始められますか?」のように、より具体的で詳細な質問にします。
回答は3〜5行以上で詳しく書く
回答には具体的な情報や理由、背景を含めます。例えば、「はい、土日も対応しています」ではなく、「はい、土日も対応しています。特に中小企業のお客様は平日がお忙しいため、当社では土日祝日も事前予約制で無料相談を承っております。ご希望の日時を第3希望までお知らせいただければ、調整いたします。」のように、詳細に記述します。
最初は3〜5個の質問から始めて、徐々に増やしていくのが現実的です。
ポイント2:キーワードを盛り込みすぎると逆効果
どういうことか
SEO対策では「キーワードを入れることが大切」と聞いて、ページ内にキーワードをできるだけ多く詰め込もうとする方がいます。しかし、不自然なほどキーワードを繰り返すと、逆に検索エンジンからの評価が下がります。
例えば、「WordPress制作」というキーワードで上位表示したいからと、「WordPress制作ならWordPress制作の当社へ。WordPress制作の実績多数のWordPress制作会社です」のように、同じキーワードを何度も繰り返すと、読みにくいだけでなく、検索エンジンから「スパム的な手法」と判断されるリスクがあります。
また、AIも不自然な文章を引用したがりません。AIは自然で読みやすい文章を優先して引用する傾向があります。
対処法
キーワードは自然な文脈の中で使用することを心がけましょう。
タイトルと見出し、冒頭に1回ずつ入れる
ページタイトル(H1)、最初の見出し、そして最初の段落にキーワードを自然に含めます。これだけで十分です。
類義語や関連語を使う
同じキーワードを繰り返すのではなく、類義語や関連する言葉を使います。例えば「WordPress制作」の代わりに「WordPressサイト構築」「WordPress開発」「Webサイト制作」などのバリエーションを使います。
読者にとって価値のある文章を優先する
キーワードを入れることよりも、読者が理解しやすく、役に立つ内容を書くことを最優先にします。自然な文章の中にキーワードが含まれていれば、それで十分です。
読み上げてみて違和感がある文章は、キーワードを減らすサインです。
ポイント3:効果が出るまでに時間がかかることを理解していない
どういうことか
SEO対策を始めて、数日から1週間程度で「まだ順位が上がらない」「AIに引用されない」と焦ってしまう方が多くいます。しかし、SEOやAI対策の効果が目に見えて現れるまでには、通常、数週間から数ヶ月かかります。
検索エンジンのクローラがサイトを巡回し、情報を更新し、その評価が検索結果に反映されるまでには時間が必要です。特に新しく作成したページや大幅に変更したページは、検索エンジンが信頼性を評価するために、より長い時間を要します。
効果が出ないからといって、毎日のように設定を変更したり、大きく内容を書き換えたりすると、かえって検索エンジンを混乱させ、評価が不安定になります。
対処法
長期的な視点を持ち、焦らず継続することが最も重要です。
最低4週間は同じ設定で様子を見る
設定を変更したら、最低でも4週間は同じ状態を維持して効果を観察します。毎日変更するのではなく、週に一度だけチェックする習慣にしましょう。
小さな改善を一つずつ試す
一度に多くの変更をするのではなく、一つの改善を試して4週間様子を見る、というサイクルを繰り返します。例えば、今週は「トップページの冒頭文を追加」、4週間後に「FAQを1問追加」、というペースです。
効果が出る時期の目安を知る
一般的な目安として、以下を参考にしてください:
- 新規ページの検索結果への反映:2〜4週間
- 検索順位の変動が見え始める:1〜3ヶ月
- AIによる引用が増え始める:2〜4ヶ月
- 安定した効果を実感できる:6ヶ月以上
これらはあくまで目安で、サイトの規模や競合状況によって変わります。焦らず、コツコツと継続することが成功への近道です。
記録を付けておくことで、数ヶ月後に振り返ったときに「確実に改善している」ことが実感できます。
まとめ
本記事では、Yoast SEOの基本機能だけを使った、初心者でも確実に実行できるSEO・AI対策をご紹介しました。
まず、Yoast SEOをインストールして初期設定を完了させます。次に、サイトマップとrobots.txtを確認し、検索エンジンがサイトを見つけやすくします。そして、組織情報と記事の基本情報を設定することで、構造化データが自動的に生成されます。ページの冒頭を工夫することで、AIに引用されやすくなります。最後に、GA4で週に一度効果を確認し、小さな改善を続けます。
これらはすべて、Yoast SEOの管理画面から簡単に設定できる内容です。専門的な知識がなくても、一つずつ確実に進めていけば、検索エンジンやAIに正しく理解されるサイトが完成します。
よくあるつまづきポイントを理解し、焦らず長期的な視点で取り組むことが大切です。効果が出るまでには時間がかかりますが、継続することで必ず成果につながります。
できることから始めて、少しずつ改善を続けていきましょう。
