第3回:パスワードが門番をしていた夜——MySQL 8.0 への引っ越し作戦
「白かった高い壁にヒビが入った。次に叩くのはデータベースだ。」
朝から続く白画面とのにらめっこは、夕方になると別の顔を見せ始めた。
ログはもう“functions.php が壊れている”とは言わない。
次の相手は——MySQL 5.6。
古い。速くない。落ち着かない。
LLMに拾われるためにサイトの反応速度を上げるには、ここの世代交代が必要だと分かっていた。
1|新居を借りる——MySQL 8.0 へ
私「ロリポップのコントロールパネル、DBの作成画面に入った。8.0 のサーバーは mysql***.***.*****.***。」
AI「データベース名は新しく。接続パスワードも新規で。“強い”やつにしましょう。」
フィールドに打ち込む手が、少しだけ震える。
“作成”。
ビッ、と画面が切り替わり、空っぽの新居ができた。
2|旧宅から荷物を出す——エクスポート
AI「まずは旧DB(5.6)からエクスポート。テーブル構造とデータ、両方。圧縮はお好みでOK。」
私「……完了。巨大な .sql が手元に。」
私はファイル名に旧サーバー名の尾形が付いているのを見て、
過去と未来をひとつのファイルに握っている気分になった。
3|新居の鍵穴でつまずく——“Access denied (HY000/1045)”
新DB(8.0)を選んで、インポート。
——跳ね返された。
画面「mysqli::real_connect(): (HY000/1045): Access denied for user ‘*********’@‘***.**.xx.xx’」
私「鍵が刺さらない。」
AI「ユーザー/パスワードが“新DB向け”になっていない可能性。コントロールパネルで新DBの接続パスワードをもう一度確認、控えたものと一致させてください。」
私はメモを見返し、1文字違いに気づく。
打ち直す。
扉はまだ開かない。
今度は別の札がぶら下がっていた。
画面「#1046 – データベースが選択されていません。」
AI「phpMyAdminの左側で、新DBを“クリックして選択”してからインポートを。SQLタブで直接流す場合も、上部のパンくずに新DB名が表示されているか確認を。」
クリック。
パンくずに新しいDB名が表示された。
もう一度、インポート。
4|“ここは俺の土地だ”という古い一文——CREATE DATABASE を外す
画面「エラー:CREATE DATABASE IF NOT EXISTS ********-****** …」
私「旧DBの名前を、新DBで“作ろう”として怒られている?」
AI「そう。新DBはもう作ってあるので、ダンプファイルの冒頭にある CREATE DATABASE と USE … の行は削除。無用の主張は消す。」
私は .sql を開いて、最初の数行を削った。
保存。
再インポート。
5|走り抜けるバー、数字は“244”
プログレスバーが止まらない。
最後に、静かに数字が出た。
画面「インポートは正常に終了しました。244 個のクエリを実行しました。」
私「……入った。」
AI「おかえりなさい。では、WordPress に新居の住所を教えましょう。」
6|WordPress に新住所を教える——wp-config.php
AI「wp-config.php のこの4行です。」
DB_NAME → 新DB名
DB_USER → アカウント(ロリポップの仕様どおり)
DB_PASSWORD → 新しいパスワード
DB_HOST → mysql***.***.*****.***
私「保存。ブラウザ、更新。」
(3秒)
画面が白くない。
メニューが、フォームが、見慣れたレイアウトが返って来た。
管理画面へも入ってみる。
——入れた。
「こんにちは」ではなく、「おかえり」と読めた。
7|終わらないチューニング——でも今日はここまで
私「サイトヘルスも見ておこう。」
AI「“永続オブジェクトキャッシュを使ってください”と出るかも。ロリポップのアクセラレータや、プラグインのDocket Cacheで解消できます。」
私はプラグインを入れて有効化。
サイトヘルスの数字が0(すべて良好)になった。
——長かった道のりに、ちゃんと丸がついた。
8|白画面と、あの朝の動機
白い画面は、何度も私を試した。
でも、そのたびに理由があった。
“return の居場所”“古いコンストラクタ”“閉じ忘れの endif;”“未選択のデータベース”“強すぎる門番のパスワード”“いらない CREATE DATABASE”。
AI「最初に言った“土台”の話、覚えていますか。」
私「忘れてない。LLMのSEOをやれるかどうか、確かめたかった。だからサイトを2025年の土台に持ち上げた。」
AI「やれます。いまなら。」
私は、画面の角に映る自分の顔が、朝より少しだけ明るいのに気づいた。
次は、AIが読むための見出し・要約・スキーマの話——“コンテンツの骨格”に手を入れる。
私「白い壁は壊した。次は見える壁だ。行こう。」
(第4回につづく)
