Asanaが5年分の移行を1.5週間で終えた AIへの指示は5文、では何を渡さなかったのか?

Asanaは2026年8月7日、自社のテストの仕組みを全面的に移し替えた取り組みを公開しました。これまでのペースなら5年かかると見積もっていた作業です。

実際にかかったのは、エンジニアの稼働で約1.5週間でした。費用は合計で1万2000ドルです。

最大4つのAIエージェントを同時に動かし、それぞれに別の担当範囲を割り当てました。渡した指示は、5つの文からなるプロンプト1つだけです。目的、対象とする範囲、テストの実行方法、簡単なファイルから先に手を付けること。人は毎朝と毎晩、進み具合を確認していました。

一方で、詰まった原因も記録されています。社内のドキュメントが古いままだったため、エージェントが非推奨のやり方へ誘導されたことです。人の手が必要になったのは、AIの性能不足よりも、こうした環境の問題によるものだったと報告されています。

出典:We migrated off Enzyme in 2 weeks. It should have taken five years(asana.com/2026年8月7日)

指示を細かくしたのではなく、絞ったから動きました

この事例で目を引くのは、5年分の作業を1.5週間に縮めた結果よりも、その指示が5つの文しかなかったことです。手順を事細かに書き下したのではありません。目的と範囲と確認方法だけを渡して、どう進めるかはエージェントに委ねています。

従業員が10名から100名の会社に置き換えると、こうなります。仕事を任せるときに用意すべきなのは、細かい手順書ではありません。目的と、範囲と、できたかどうかを確かめる方法です。そして、任せた側が定期的に中身を見る時間です。

手順は書けます。書けないのは、判断の材料のほうです

手順と判断は、性質が違います。手順は、順番と作業内容なので書けます。判断は、その場の状況に応じて何を選ぶかなので、書こうとすると「状況による」としか書けません。だから、任せる側は手順を渡し、判断のほうは相手に残すことになります。

問題は、残した判断を相手が下せるかどうかです。下すには材料が要ります。過去にどういう場面で、どちらを選び、なぜそちらにしたのか。人に任せるときは、隣に座って教えることも、報告の場で確かめることもできます。

AIに任せるときは、その材料が社内の文書になります。ここでAsanaの報告に戻ります。エージェントが非推奨のやり方へ進んでしまった原因は、社内のドキュメントが古いままだったことでした。渡した材料のほうが壊れていた、ということです。

古い文書は、間違っているとは限りません。かつては正しかったものが、更新されないまま残っています。人が読めば「これはもう使っていないやり方だ」と分かります。ところがAIには、その但し書きが見えません。書かれている以上、それが現在の正解だと受け取ります。

なぜ但し書きが残らないのか。やめた理由が、やめると決めた人の頭の中にしかないからです。「この書き方は使わなくなった」「あの手順は前の体制のときのもの」。こうした情報は口頭で共有されて、そのまま消えていきます。文書には、やめたことが反映されません。判断の材料として渡すには、この一行が要ります。

明日から、費用をかけずに試せること

いま社内にあるマニュアルや手順書を1つ選んで、次の作業をしてみてください。

  • 書かれている項目を、「順番が決まっている作業」と「その場で選ぶこと」の2つに分ける
  • 「その場で選ぶこと」に印を付ける。ここは手順書に書いてはいけない部分です
  • 残った手順のうち、いまはもう使っていないものに取り消し線を引く。消さずに、いつやめたかを1行添える
  • 印を付けた項目について、直近で判断した例を「何を選んだか、なぜそちらにしたか、選ばなかった案は何か」の3行で書き足す

取り消し線と3行が入った時点で、その文書はAIに渡せる状態に近づきます。費用も新しい契約も要りません。

ただし…

どこまでを手順にして、どこから先を判断として残すか。この線の引き方には一般解がありません。扱う商品、顧客との関係、メンバーの経験年数によって、任せてよい範囲は変わります。他社でうまくいった線をそのまま持ち込むと、任せすぎか、縛りすぎのどちらかになります。

UNICUSは、この線引きを一緒に考えるところから関わっています。私自身、企業向けの研修教材を外注も分業もせず一人で作り、日々の業務でもAIを使っている立場です。

30分だけ、現状を聞かせてください

30分いただければ、御社の仕事のうちどこまでが手順で、どこからが判断なのかを伺い、最初に手を入れる文書を一緒に決めるところまでできます。その場で提案や見積もりは出しません。

お問合せは簡単です。以下の問い合わせフォームに、お名前などの必要事項と御社のURLと社員数と現在お困りの事象について、できるだけ具体的にお書きください。その上で、希望の日時を3つほど書いてお送りください。後ほど、こちらからメールにて返信をさせていただきます。

ただし、対応しているのは私一人です。そのため、新規でご相談をお受けするのは月に2名までとさせていただいております。思いついたときに、すぐお問合せされることをお勧めします。

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