OpenAIは2026年8月12日、企業でのAI利用について2本のレポートを公開しました。法人ユーザーの利用データをまとめた「Enterprise Signals」と、組織の中での使われ方を分析した「How Organizations Use AI: Evidence from ChatGPT」です。
レポートによると、企業向けCodexの週間アクティブユーザーは2026年2月以降、法務で108倍、営業で41倍に伸びました。一方、エンジニアリングは5倍です。最も伸びたのは、開発の部門ではありませんでした。
また、月ごとの利用量が上位10%に入る企業は、一般的な企業に比べて、利用者1人あたりの出力トークンが8.3倍でした。1月時点では2.6倍で、その差は半年で開いています。レポートは、この差が開いた企業ほど、AIを自社の情報や社内の手順につなぐ機能を使っている、と報告しています。
差がついたのは、AIを使ったかどうかではありませんでした
これは要するに、AIを導入したかどうかではなく、社内の事情をAIにどこまで渡せたかで差がついた、という話です。伸びが大きかったのは、日々の判断に社内の事情が絡む仕事でした。そして差が開いた企業ほど、AIを自社の情報につなぐ機能を使っています。使っている時間の長さではなく、渡している情報の量で分かれています。
従業員が10名から100名の会社に置き換えると、こうなります。ツールを入れたかどうかは、もう差になりません。差になるのは、その会社の社内の情報を、どこまでAIに渡せているかです。そして、その情報は、たいてい社内のどこにも書かれていません。
AIでつくったツールを配った日は喜ばれたのに、ログを見たら誰も使っていませんでした
私の失敗談をお話します。私は、ある仕事で、その部署の業務で使えそうなツールをAIで作って配りました。AIからの質問に順番に答えていくと、文章の案が出来上がる仕組みでした。手元で試したかぎりでは、十分に使えるものでした。
配った日の反応は良いものでした。画面を見せると「すごい」と言われ、その場は盛り上がりました。私も、これで仕事の形が変わると思っていました。あとは各自が自分の仕事で使うだけだ、というつもりでいました。
しばらくして、利用のログを確認しました。メンバーのほとんどが、一度も使っていませんでした。使った人も、数回でやめています。盛り上がった日から先、そのツールが開かれた記録は、ほとんど残っていませんでした。
使い勝手が原因だろうと考えました。そこで現場のリーダーに話を聞き、「この機能が欲しい」と言われた内容を盛り込んで、作り直しました。要望を出した本人がいるのだから、今度は使われるはずでした。しかし、これも使われずに終わりました。
ここで分かったのは、要望を聞いて作り直しても届かない、ということです。ツールの水準と、現場が実際にやろうとしていることが合っていない。合っていないものは、機能を足しても使われません。案内を増やしても、声をかけても、同じでした。使わせることに力を入れるほど、こちらの徒労が増えるだけでした。
そこで、やり方を変えました。全員に配るのをやめて、一人の隣に座りました。その人がこれからやる仕事を一緒に見て、そのうちのどこをAIに渡してみるかを、その場で決めます。出てきたものが使えなければ、渡し方を変えて、もう一度その場でやり直します。それを日々の業務の中で繰り返しました。
2週間ほど経つと、その人のAIには、その人の仕事の前提が溜まっていました。何のための文章なのか、誰に向けたものなのか、どこまでは書いてよくて、過去に何を却下したのか。そこまで入って、ようやく実務で使えるものになりました。同じ道具でも、前提が入る前と後では、返ってくるものが違いました。
そこから先は、私は手を引きました。すでに自分で使っている人に、他のメンバーへ話してもらう場を作りました。どう使っているかを紹介する機会も作りました。上から一斉に広げるのではなく、下から、やりたい人が自分で始める形にしました。私が説明するより、隣の席の人が話すほうが早く伝わりました。
今では、各自が作った指示や手順の型を、互いに共有し合うようになっています。共通のダッシュボードも、実際に使われています。最初に配ったツールは、結局いまも使われていません。
渡していたのは道具で、渡せていなかったのは前提です
良さそうなツールが使われない理由は、現場の意欲ではありません。渡されたものの中に、その人の仕事の前提が入っていないからです。
仕事の前提は、たいてい文書になっていません。この案件は何を狙っているのか、この相手には何が響かないのか、去年どの案を却下して、なぜ却下したのか。こうしたことは、判断した人の頭の中にあります。会議で口頭で決まり、その場にいた人だけが知っている、という形で残ります。記録が無いわけではなく、決まったことは残っていて、決めた理由だけが残っていない、という状態です。
そのため、ツールを配ると、受け取った側は前提を自分で埋めなければなりません。ところが、前提を書き出す作業は、その人の本来の仕事ではありません。誰の担当でもない作業が手前に挟まっているので、そこで止まります。使われないのは、この構造のためです。意欲のある人ほど、一度試して、割に合わないと判断して離れます。
最初の一人が動くのは、この埋める作業を横で一緒にやるからです。前提が入ったAIは、その人にとって実際に役に立つものになります。役に立ったものは、放っておいても人に話されます。広がるのは、この順番のときだけです。逆に、前提が入っていない状態でどれだけ配っても、順番が違うので広がりません。
明日から、費用をかけずに試せること
次の順番で進めます。
- 一人だけ決める。役職ではなく、今すでに自分で触っている人を選ぶ
- その人が今週やる仕事を一つ選ぶ。新しい仕事ではなく、毎週やっている仕事にする
- 横に座って、その仕事のどこをAIに渡すかを一緒に決める。うまくいかなければ渡し方を変えて、その場でもう一度やる
- やり取りの中で出てきた前提を、その都度AIに書き足していく。何を決めたかではなく、なぜそう決めたかまで書く
- その人が自分の判断で使うようになったら、他のメンバーへ話してもらう場を作る
この間、他のメンバーには何も案内しません。一人が実際に使えるようになるまでは、広げないほうが早く進みます。ここまでは、費用も新しい契約も要りません。必要なのは、横に座る時間だけです。うまくいかない場合も、失うのはその時間だけで済みます。全社に配ってから使われないと分かるより、はるかに安く終わります。
ただし…
この進め方が、そのまま御社に当てはまるとは限りません。誰を最初の一人にするか、どの仕事から渡すか、その人から横へどう渡していくかは、会社の状況、メンバーの構成、職種によって変わります。同じやり方が別の会社では動かない、ということが普通に起こります。ここに一般解はありません。
UNICUSは、この設計を一緒に考えるところから関わっています。私自身、企業向けの研修教材を外注も分業もせず一人で作り、日々の業務でもAIを使っている立場です。その前は検索連動型広告の運用を17年、200社以上で行ってきました。うまくいった話だけでなく、配って使われなかった側の経験も持っています。
30分だけ、現状を聞かせてください
30分いただければ、御社でいま何がどこまでAIに渡っているかを伺い、最初に手をつける一箇所を一緒に決めるところまでできます。その場で提案や見積もりは出しません。決めるのは、次に何を試すかだけです。
お問合せは簡単です。以下の問い合わせフォームに、お名前などの必要事項と御社のURLと社員数と現在お困りの事象について、できるだけ具体的にお書きください。その上で、希望の日時を3つほど書いてお送りください。後ほど、こちらからメールにて返信をさせていただきます。
ただし、対応しているのは私一人です。そのため、新規でご相談をお受けするのは月に2名までとさせていただいております。思いついたときに、すぐお問合せされることをお勧めします。
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