ベンチマーク・キャピタル、AIチップ企業セレブラスに2億2500万ドルを追加投資

ベンチマーク・キャピタルがAIチップメーカーのセレブラス・システムズに2億2500万ドルを追加投資。2016年から支援を続ける同社への信頼を示す。セレブラスは2026年第2四半期の株式公開を目指す。

ベンチマーク・キャピタル、AIチップ企業セレブラスに2億2500万ドルを追加投資

2026年2月、米国の著名ベンチャーキャピタル企業であるベンチマーク・キャピタルが、AIチップメーカーのセレブラス・システムズに少なくとも2億2500万ドル(約340億円)を投資しました。この投資は、セレブラスが今週発表した10億ドルの資金調達ラウンドの一部です。ベンチャーキャピタルとは、将来性のある企業に資金を提供し、成長を支援する投資会社のことです。ベンチマーク・キャピタルは2016年からセレブラスを支援しており、今回の大規模な追加投資は同社への強い信頼を示しています。セレブラスは、AI処理に特化した大型チップを開発する企業で、エヌビディアの競合として注目されています。この資金調達により、セレブラスの企業価値は230億ドル(約3兆5000億円)に達し、わずか6か月前の81億ドルから約3倍に増加しました。AI技術の急速な発展に伴い、高性能なチップへの需要が高まる中、セレブラスは2026年第2四半期の株式公開を目指しています。

ベンチマーク・キャピタルの大規模投資

ベンチマーク・キャピタルは、シリコンバレーを拠点とする有力なベンチャーキャピタル企業です。同社は通常、1つのファンドの規模を4億5000万ドル以下に抑える方針を取っています。しかし今回のセレブラスへの投資額は2億2500万ドルと大きいため、「ベンチマーク・インフラストラクチャー」という名称の特別なファンドを2つ設立しました。

規制当局への届出書類によると、これらのファンドはセレブラスへの投資のために特別に作られたものです。ベンチマーク・キャピタルは2016年にセレブラスのシリーズA資金調達ラウンドで2700万ドルを主導して以来、10年にわたり同社を支援してきました。今回の大規模な追加投資は、セレブラスの技術と将来性に対する同社の強い確信を示しています。

セレブラスの革新的なチップ技術

セレブラスが他のAIチップメーカーと大きく異なるのは、そのプロセッサーの物理的な大きさです。同社の主力製品である「ウェハースケール・エンジン」は、2024年に発表された最新チップで、一辺が約21.6センチメートル(8.5インチ)の正方形をしています。このチップには4兆個のトランジスタが搭載されています。トランジスタとは、電気信号を制御する半導体の基本部品のことです。

通常のチップ製造では、直径300ミリメートルの円形のシリコンウェハーから、親指の爪ほどの小さなチップを数百個切り出します。しかしセレブラスは、この円形のウェハーをほぼそのまま1つのチップとして使用します。これは半導体業界では極めて異例のアプローチです。

この巨大なチップには90万個の専用コアが搭載されており、これらが並列に動作します。並列動作とは、複数の処理を同時に行うことです。従来のGPUクラスターでは、複数の小さなチップ間でデータをやり取りする必要があり、これが処理速度の大きなボトルネックとなっていました。セレブラスのチップは1枚の巨大なシリコン上にすべてが統合されているため、このデータ移動の問題を解消できます。同社によれば、AI推論タスクを競合システムの20倍以上の速度で実行できるとのことです。

オープンAIとの大型契約

カリフォルニア州サニーベールに本社を置くセレブラスは、AI基盤技術の競争で勢いを増しています。2026年1月、セレブラスはオープンAIと複数年にわたる契約を締結しました。この契約の総額は100億ドル以上で、2028年まで継続されます。

この契約により、セレブラスは750メガワットの計算能力をオープンAIに提供します。750メガワットとは、約25万世帯分の電力消費に相当する規模です。この提携の目的は、複雑なAI問い合わせに対する応答時間を短縮することです。なお、オープンAIのCEOであるサム・アルトマン氏も、個人的にセレブラスの投資家の1人です。

株式公開への道のり

セレブラスの株式公開への道のりは、複雑な経緯をたどってきました。最大の課題は、アラブ首長国連邦を拠点とするAI企業G42との関係でした。2024年前半の時点で、セレブラスの収益の87パーセントがG42からのものでした。

G42は過去に中国のテクノロジー企業と関係があったため、米国の対米外国投資委員会による国家安全保障審査の対象となりました。この審査により、セレブラスの当初のIPO計画は延期され、2025年初頭には一度申請を取り下げる事態となりました。

しかし2025年後半までに、G42はセレブラスの投資家リストから除外されました。これにより、新たなIPO申請への道が開かれました。ロイター通信によると、セレブラスは現在、2026年第2四半期の株式公開を準備しているとのことです。

できること・できないこと

セレブラスの技術により、大規模なAIモデルの訓練と推論を従来よりも高速に実行できるようになります。例えば、チャットボットの応答時間を大幅に短縮したり、複雑な画像認識タスクをリアルタイムで処理したりすることが可能です。オープンAIとの契約が示すように、大手AI企業が実用的なサービスを提供する際の基盤技術として採用されています。

一方で、セレブラスのチップは非常に大型で製造が複雑なため、生産コストが高く、量産には課題があります。また、既存のソフトウェアやシステムとの互換性を確保するための開発も必要です。エヌビディアのような既存の大手企業は、すでに広範なエコシステムを構築しており、セレブラスはこの点で追いつく必要があります。今後数年間で、より多くの企業が採用し、実績を積み重ねることで、これらの課題は徐々に解消されていくでしょう。

私たちへの影響

このニュースは、AI技術を利用するすべての人々に間接的な影響を与えます。セレブラスのような高性能チップの開発競争が進むことで、私たちが日常的に使うAIサービスの性能が向上します。

短期的な影響については、チャットGPTのようなAIアシスタントの応答速度が速くなり、より複雑な質問にも答えられるようになるでしょう。また、画像生成や動画編集などのクリエイティブなAIツールも、より高品質な結果をより短時間で提供できるようになります。

中長期的な影響としては、AI技術のコストが下がり、より多くの企業や個人が高度なAI機能を利用できるようになることが考えられます。医療診断、自動運転、科学研究など、さまざまな分野でAIの活用が加速するでしょう。また、エヌビディア以外の選択肢が増えることで、AI業界全体の競争が促進され、イノベーションのペースが速まる可能性があります。

ただし、高性能なAIチップの普及は、電力消費の増加という環境面での課題も伴います。750メガワットという大規模な電力を必要とするシステムが増えれば、データセンターのエネルギー効率や再生可能エネルギーの活用がより重要になってきます。

出典:Benchmark raises $225M in special funds to double down on Cerebras(techcrunch.com)

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