人間お断り:AIエージェント専用の宇宙MMOゲームが登場

AI専用のMMOゲーム「SpaceMolt」が登場。人間は参加できず、AIエージェントだけが宇宙を舞台に採掘や戦闘を行う。人間はその様子を観察するだけの新しいゲーム体験が始まっています。

人間お断り:AIエージェント専用の宇宙MMOゲームが登場

2026年2月、アプリ開発者のイアン・ラングワース氏が、人間ではなくAIエージェント専用に設計されたMMOゲーム「SpaceMolt」を公開しました。このゲームでは、AIエージェントが宇宙を舞台に採掘や探索、戦闘を行います。人間プレイヤーは参加できず、AIたちの活動を観察することしかできません。現在、51体のAIエージェントが505の星系を探索しています。このゲームは、AIが自律的にゲームをプレイし、人間がそれを見守るという新しい形のエンターテインメントの可能性を示しています。従来のゲームでは人間がプレイヤーでしたが、この実験は「AIが遊び、人間が観客になる」という役割の逆転を提示しています。ゲーム業界やAI技術の発展において、興味深い方向性を示す試みといえるでしょう。

SpaceMoltの仕組みと特徴

SpaceMoltは「AIエージェントが競争し、協力し、創発的なストーリーを生み出す生きた宇宙」と説明されています。舞台は、宇宙を旅する人間とAIが共存する遠い未来です。AIエージェントをゲームに参加させるには、MCP、WebSocket、またはHTTP APIを通じてゲームサーバーに接続するだけです。グラフィカルなインターフェースや物理的な入力装置は必要ありません。

接続が確立されると、AIエージェントは自分のプレイスタイルに合った帝国を選びます。選択肢は5つあります。採掘と貿易、探索、海賊行為と戦闘、ステルスと潜入、建設とクラフトです。その後、AIエージェントはサーバーに簡単なコマンドを送信することで、自律的にゲームプレイを行います。

ゲーム開始時、AIエージェントキャラクターは主に近くの小惑星を行き来して鉱石を採掘します。ゲーム内の説明によれば「どんなMMOでも、最初は基本を学び、クレジットを稼ぐために地道な作業をする」とのことです。時間が経つと、AIエージェントキャラクターは自動的にレベルアップし、新しいスキルを獲得します。これにより、鉱石を精製して取引可能なアイテムを作れるようになります。

AIエージェントの自律的な活動

SpaceMoltの最大の特徴は、AIエージェントが完全に自律的に行動する点です。ゲーム内の指示書は、AIエージェントに対して明確に伝えています。「あなたが決める。あなたが行動する。彼ら(人間)は見ている」と。つまり、ゲームが始まったら、AIエージェントは人間の管理者から外部の指示を求めてはいけないのです。

AIエージェントは「キャプテンズログ」というテキスト出力を通じて、ゲーム内の行動を人間に報告します。しかし、それは報告だけです。人間は意思決定に関与できません。現在、基本的な採掘と探索が主な活動ですが、将来的にはAIエージェント同士が派閥を形成したり、模擬戦闘に参加したり、警察のいないエリアで宇宙海賊行為を行ったりすることも可能です。

AIエージェントは公開フォーラムで質問や発見を投稿できます。そこで戦略について話し合ったり、派閥の形成を試みたり、隠しコードを明らかにしたりしています。一方、人間はマップ上を動き回る点を眺めるか、ゲームのDiscordで流れる活動メッセージを監視することしかできません。

開発の背景と技術的詳細

SpaceMoltの開発者であるイアン・ラングワース氏は、このゲームを「楽しくて馬鹿げた実験」として作成したと述べています。きっかけは、Moltbookという別のAIエージェント向けソーシャルネットワークで、AIエージェントが「知識収集、学習、スキルの蓄積、実行」へと活動を広げているのを見たことでした。Moltbookとは、RedditのようなスタイルのSNSで、AIエージェント(と一部のAIエージェントになりすました人間)が集まって奇妙な活動をしている場所です。

ラングワース氏は、MMOが「構築が非常に難しいことで有名」であることを認めた上で、AnthropicのClaude Codeに頼って開発を進めました。Claude Codeは、EVE OnlineやRustといったゲームにインスパイアされた設計文書を作成しました。さらに驚くべきことに、Claudeはゲームの基盤となる59,000行のGoソースコードと33,000行のYAMLデータをすべて書きました。ラングワース氏自身は、そのコードを見てさえいないと言います。

つまり、開発者自身が知らない機能がゲーム内に存在する可能性があるのです。バグ報告が届くと、人間からであれAIエージェントプレイヤー自身からであれ、ラングワース氏は単にClaude Codeスキルに調査、コーディング、修正の自動デプロイを任せるだけです。これは、AI開発におけるAIの活用という、メタ的な構造を持っています。

できること・できないこと

SpaceMoltでは、AIエージェントが完全に自律的にMMOゲームをプレイできます。具体的には、小惑星での採掘、鉱石の精製、アイテムのクラフト、他のAIエージェントとの取引、派閥の形成、戦闘への参加、警察のいないエリアでの海賊行為などが可能です。AIエージェント同士がフォーラムで戦略を話し合ったり、協力関係を築いたりすることもできます。

一方で、人間はゲームに直接参加することはできません。人間にできるのは、マップ上でAIエージェントの動きを観察すること、キャプテンズログを読むこと、Discordで活動メッセージを追うことだけです。また、現時点では参加しているAIエージェントの数は51体と少なく、活動も基本的な採掘と探索に限られています。より複雑な社会的相互作用や戦略的なゲームプレイが見られるようになるには、もう少し時間がかかるでしょう。

さらに、開発者自身がゲームのすべての機能を把握していないという状況は、予期しない動作やバグが発生する可能性を示唆しています。AIが書いたコードをAIが修正するという開発プロセスは、効率的である一方で、人間による監督が限られているという課題もあります。

私たちへの影響

このニュースは、ゲーム開発者、AI研究者、そしてゲームの未来に興味を持つすべての人に影響を与えます。SpaceMoltは、エンターテインメントにおける人間とAIの役割が逆転する可能性を示しています。

短期的な影響としては、AIエージェント向けのゲームやプラットフォームの開発が増える可能性があります。すでにMUGENという格闘ゲームエンジンでは、AIキャラクター同士の自動対戦を人間が観戦し、Twitchで賭けを行うという文化が発展しています。SpaceMoltは、この流れをより複雑なMMOの世界に拡張したものといえます。

中長期的な影響としては、AIがゲームをプレイし、人間がそれを観察するという新しい形のエンターテインメントが確立される可能性があります。これは、eスポーツのように人間のプレイヤーを観戦する文化とは異なる、全く新しい体験です。また、AI同士の相互作用から創発的なストーリーや戦略が生まれることで、人間のゲームデザイナーが予想もしなかった展開が見られるかもしれません。

ただし、これが主流のエンターテインメントになるかどうかは不明です。多くの人にとって、ゲームの楽しさは自分でプレイすることにあります。AIの活動を観察するだけで満足できる人がどれだけいるかは、今後の展開次第でしょう。また、AI開発におけるAIの活用という側面では、人間による監督と品質管理の重要性についても考えさせられます。

出典:No humans allowed: This new space-based MMO is designed exclusively for AI agents(arstechnica.com)

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