企業のAIエージェント導入が加速、安全対策の遅れが深刻化とデロイト報告

デロイトが2026年1月に発表した調査で、企業のAIエージェント導入が急速に進む一方、安全対策の整備が追いついていない実態が明らかに。2年以内に74%の企業が導入予定だが、現時点で適切な監視体制を持つ企業は21%のみ。

企業のAIエージェント導入が加速、安全対策の遅れが深刻化とデロイト報告

デロイトは2026年1月20日、企業におけるAI活用の実態調査レポートを発表しました。この調査は24カ国の3,200人以上の企業リーダーを対象に実施されたものです。調査結果によると、現在23%の企業がAIエージェントを「少なくとも中程度」使用しており、この数字は今後2年間で74%まで急増すると予測されています。AIエージェントとは、人間の監督をほとんど必要とせず、複数のステップにわたるタスクを自動的に実行できるAIツールのことです。例えば、文書への署名や購入手続きなど、これまで人間が行っていた業務を代行できます。しかし、この急速な導入の一方で、安全対策の整備が大きく遅れています。現時点で適切な安全管理と監視の仕組みを持つ企業はわずか21%にとどまっています。この状況は、AIエージェントが予期しない動作をしたり、悪意ある攻撃を受けたりした場合に、企業が重大なリスクにさらされる可能性を示しています。デロイトは、AIエージェントの導入拡大に伴い、強固なガバナンス体制の確立が不可欠だと警告しています。

AIエージェント導入の現状と予測

デロイトの調査では、企業のAIエージェント導入が驚異的なスピードで進んでいることが明らかになりました。現在、AIエージェントを全く使用していない企業は25%ですが、この数字は2年後にはわずか5%まで減少すると予測されています。つまり、ほぼすべての企業が何らかの形でAIエージェントを活用する時代が目前に迫っているのです。

OpenAI、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、セールスフォースといった大手テクノロジー企業は、AIエージェントを生産性向上のツールとして積極的に販売しています。これらの企業が提唱する基本的な考え方は、反復的で重要度の低い業務をAIエージェントに任せることで、人間の従業員がより重要な仕事に集中できるようにするというものです。

安全対策の遅れが生む深刻なリスク

AIエージェントは従来のチャットボットとは大きく異なります。チャットボットは人間が細かく指示を出す必要がありますが、AIエージェントはより高い自律性を持ち、様々なデジタルツールと連携して動作します。例えば、組織を代表して文書に署名したり、購入手続きを行ったりすることができます。

しかし、この自律性の高さが同時にリスクも高めています。AIエージェントは予期しない動作をすることがあり、時には壊滅的な結果を招くこともあります。また、プロンプトインジェクション攻撃と呼ばれる手法で悪意ある指示を注入される脆弱性も指摘されています。プロンプトインジェクション攻撃とは、AIシステムに対して本来の目的とは異なる指示を巧妙に与えることで、意図しない動作をさせる攻撃手法のことです。

デロイトの調査で明らかになった最も懸念すべき点は、適切な安全管理体制を持つ企業がわずか21%しかないという事実です。これは、残りの79%の企業が、AIエージェントが引き起こす可能性のある問題に対して十分な備えがないことを意味します。

他の調査も同様の警告を発信

デロイトの報告は、AI導入が安全対策を上回るスピードで進んでいることを指摘した最初の調査ではありません。2025年5月に発表された別の研究では、調査対象となったIT専門家の84%が、自社がすでにAIエージェントを使用していると回答しました。しかし、これらのシステムの活動を規制する方針を持っていると答えたのは44%にとどまりました。

さらに、非営利団体ナショナル・サイバーセキュリティ・アライアンスが2025年9月に発表した調査では、ChatGPTのようなAIツールを日常的に使用する人が増えている一方で、その大半が雇用主から安全性に関する研修を受けていないことが判明しました。この研修には、例えばチャットボットを使用する際のプライバシーリスクについての教育などが含まれます。

2025年12月にギャラップが発表した世論調査の結果も同様の傾向を示しています。個々の労働者によるAIツールの使用は前年から増加していましたが、回答者のほぼ4分の1にあたる23%が、自分の雇用主が組織レベルでこの技術を使用しているかどうかを知らないと答えました。

できること・できないこと

現段階で企業がAIエージェントに対して完璧な安全対策を求めるのは現実的ではありません。技術は常に、その技術が引き起こす問題についての理解よりも速く進化するものです。その結果、あらゆるレベルでの政策は導入に遅れをとる傾向があります。

これはAIにおいて特に顕著です。AI開発者が新しいモデルをリリースし、組織のリーダーがそれらの使用を開始するよう促す文化的な誇大宣伝と経済的圧力の量は、おそらく前例のないものだからです。

しかし、デロイトの新しい報告のような初期の研究は、企業がAIエージェントやその他の強力なAIツールの使用を拡大するにつれて、導入と安全性の間に危険な隔たりが生じる可能性を指摘しています。現時点では、企業は完璧な対策を整えることはできませんが、リスクを認識し、基本的な監視体制を構築することは可能です。

私たちへの影響

このニュースは、AIツールを業務で使用するすべての労働者、そしてAI導入を検討している企業のリーダーに重要な影響を与えます。

短期的な影響については、企業は自社のAIエージェント使用状況を見直し、適切な監視体制があるかを確認する必要があります。デロイトは報告書の中で、組織はエージェントの自律性に明確な境界を設定し、どの決定をエージェントが独立して行えるか、どの決定に人間の承認が必要かを定義すべきだと推奨しています。また、エージェントの動作を追跡し異常を検知するリアルタイム監視システムや、エージェントの行動の完全な記録を残す監査証跡も不可欠です。

中長期的な影響としては、AI安全性に関する規制や業界標準が整備されていくことが予想されます。現在は各企業が独自に対策を講じている状況ですが、今後は統一的なガイドラインや法規制が導入される可能性が高いでしょう。企業は今から準備を始めることで、将来的な規制への対応がスムーズになります。

ただし、過度に恐れる必要はありません。AIエージェントは適切に管理されれば、業務効率を大幅に向上させる強力なツールです。重要なのは、導入のスピードと安全対策のバランスを取ることです。企業は「まず導入してから考える」のではなく、「安全を確保しながら導入する」という姿勢を持つべきでしょう。

出典:Businesses are deploying AI agents faster than safety protocols can keep up, Deloitte says(www.zdnet.com)

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