元Anthropic、xAI、Google出身者が創業したAIスタートアップHumans&が、創業3カ月で4億8000万ドルのシード資金を調達。AIは人を置き換えるのではなく、人々の協働を支援すべきという理念を掲げる。AI業界で巨額資金調達が続く中、注目の新興企業が誕生。
元Anthropic・xAI研究者ら創業のAIスタートアップ、創業3カ月で540億円調達
2026年1月20日、AIスタートアップのHumans&が、創業からわずか3カ月でシード資金として4億8000万ドル(約540億円)を調達したことがニューヨーク・タイムズの報道で明らかになりました。企業価値は44億8000万ドル(約5040億円)と評価されています。この資金調達には、半導体メーカーのNvidia、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、ベンチャーキャピタルのSV Angel、GV、ローレン・パウエル・ジョブズ氏のエマーソン・コレクティブなどが参加しました。Humans&は「AIは人を置き換えるのではなく、人々を支援すべき」という理念を掲げており、人々の協働を助けるソフトウェアの開発を目指しています。創業者には、AnthropicでClaude開発に携わった研究者、Googleの7番目の従業員、xAIでGrok開発に関わった研究者などが名を連ねており、AI業界の有力者が集結した注目のスタートアップです。この巨額調達は、主要AI研究所からの独立組が創業する企業に投資家が多額の資金を投じる最近の傾向を象徴しています。
Humans&の創業メンバーと企業理念
Humans&の創業チームは、AI業界の最前線で活躍してきた人材で構成されています。共同創業者のアンディ・ペン氏は、AnthropicでClaude 3.5から4.5の強化学習と事後訓練に携わった元研究者です。ジョルジュ・ハリック氏はGoogleの7番目の従業員で、同社の最初の広告システム構築に貢献しました。エリック・ゼリックマン氏とユーチェン・ヘ氏は、xAIでGrokチャットボットの開発に参加した元研究者です。さらに、スタンフォード大学で心理学とコンピューターサイエンスを教えるノア・グッドマン教授も創業メンバーに加わっています。
同社の約20名の従業員は、OpenAI、Meta、Reflection、AI2、MITなど、AI研究の主要機関から集まっています。これほど豪華な創業メンバーが集結したことは、AI業界でも異例といえるでしょう。Humans&が掲げる理念は明確です。AIは人間を置き換える存在ではなく、人々が互いに協力し合うことを支援する技術であるべきだというものです。
開発する技術の詳細
Humans&は、人々の協働を支援するソフトウェアの開発を目指しています。具体的には、AI版のインスタントメッセージングアプリのようなものを想定しているとのことです。これは、単なるチャットボットではなく、人と人とのコミュニケーションを仲介し、より効果的な協力関係を築くためのツールです。
同社の技術的な目標の一つは、既存のAI技術を使って新しい方法でAIを訓練することです。例えば、チャットボットがユーザーに情報を要求し、それを後で使用するために保存するようにプログラムすることなどが含まれます。これは、AIが単に質問に答えるだけでなく、ユーザーとの対話を通じて学習し、より個別化されたサポートを提供できるようになることを意味します。
同社のウェブページによると、Humans&は「組織やコミュニティを強化する、より深い結合組織としてのAI」を構築するために、「大規模なモデル訓練の方法と人々がAIと対話する方法」を再考しようとしています。具体的には、長期的な計画と複数のAIエージェントによる強化学習、記憶機能、ユーザー理解における革新が必要だと同社は述べています。また、科学的研究と製品開発の両方に緊密に統合された焦点を当てることも重視しています。
AI業界における巨額資金調達の傾向
Humans&の4億8000万ドルという調達額は巨額ですが、現在のAI業界の資金調達環境では決して異例ではありません。史上最大のシード資金調達は、2025年7月にThinking Machines Labが達成した20億ドル(約2250億円)で、企業価値は120億ドル(約1兆3500億円)と評価されました。この資金調達はアンドリーセン・ホロウィッツが主導し、OpenAIの元最高技術責任者ミラ・ムラティ氏がMetaやGoogleのトップ研究者とともに創業した企業です。ただし、最近数カ月で創業チームの半数が退社したことから、巨額の資金と優れた経歴が即座の成功を保証するわけではないことが示されています。
他の注目すべき巨額シード資金調達には、2025年12月にUnconventional AIが調達した4億7500万ドル(企業価値45億ドル)があります。この企業は元Databricks AI責任者のナヴィーン・ラオ氏が創業し、エネルギー効率の高いニューロモーフィック・コンピューティングシステムを開発しています。また、2025年3月にはLila Sciencesが自律型AI搭載ラボプラットフォームのために2億ドルのシード資金を調達しました。
カリフォルニア大学バークレー校から独立したAIモデルベンチマークプラットフォームのLMArenaも、2025年5月に1億ドルを企業価値6億ドルで調達し、2026年1月には1億5000万ドルのシリーズA資金調達を完了して企業価値は17億ドルに達しました。創業3年でこの成長は驚異的です。
できること・できないこと
Humans&の技術により、人々が互いに協力する新しい方法が可能になります。例えば、チーム内のコミュニケーションをAIが仲介し、情報の共有や意思決定をより効率的に行えるようになることが考えられます。また、AIがユーザーとの対話を通じて学習し、個々のニーズに合わせたサポートを提供することも期待されます。具体的には、プロジェクト管理ツールとして、メンバー間の調整を自動化したり、過去の会話から重要な情報を抽出して適切なタイミングで提示したりする使い方が想定されます。
一方で、まだ開発の初期段階であるため、具体的な製品やサービスの詳細は明らかになっていません。同社は創業からわずか3カ月であり、実際にどのような形で市場に製品を投入するのか、どの程度の性能を実現できるのかは未知数です。また、「人々の協働を支援する」という理念は魅力的ですが、それを技術的にどう実現するかは大きな挑戦です。長期的な記憶機能や複数のAIエージェントの協調動作など、技術的なハードルは高いでしょう。今後数年間で、これらの課題にどう取り組み、実用的な製品を生み出せるかが注目されます。
私たちへの影響
このニュースは、AI技術の開発に関心を持つ人々や、職場でのAI活用を検討している企業にとって重要な意味を持ちます。Humans&の「AIは人を置き換えるのではなく支援する」という理念は、AI導入に対する不安を和らげる可能性があります。多くの人々がAIによる雇用の喪失を懸念していますが、人々の協働を強化するという方向性は、より受け入れられやすいアプローチといえるでしょう。
短期的な影響については、まだ製品が市場に出ていないため限定的です。しかし、この巨額の資金調達は、AI業界における投資家の関心の高さを示しており、今後も同様のスタートアップが登場する可能性があります。中長期的な影響としては、職場でのコミュニケーションツールやコラボレーションプラットフォームにAI機能が統合され、チームワークの質が向上することが考えられます。また、教育現場や医療現場など、人と人との協力が重要な分野でも応用が期待されます。
ただし、注意すべき点もあります。巨額の資金調達を受けたスタートアップが必ずしも成功するわけではなく、Thinking Machines Labの例のように創業チームの分裂などの問題が起こる可能性もあります。また、AIによる人々の協働支援という概念は新しく、実際にどの程度効果的なのか、プライバシーやデータセキュリティの問題はどう扱われるのかなど、今後明らかになる必要がある点は多くあります。消費者や企業は、実際の製品が登場するまで慎重に見守る姿勢が求められるでしょう。
