生成AIの主戦場は労働市場から成人向けチャットボットへ、収益化に成功する企業が続出

生成AI技術が労働生産性向上の期待から、成人向けチャットボット市場で収益化に成功。Joi AIなど複数企業が黒字化を達成。OpenAIもChatGPTで成人向けコンテンツ解禁を発表し、AI産業の方向性が変化しています。

生成AIの主戦場は労働市場から成人向けチャットボットへ、収益化に成功する企業が続出

2025年、生成AI技術の活用方法が大きく変化しています。これまで企業は生成AIを労働生産性の向上や業務効率化のツールとして宣伝してきました。しかし実際には、成人向けチャットボットが最も収益性の高いビジネスモデルとして台頭しています。キプロスに登録されたJoi AIなどの企業は、性的なコンテンツを生成できるチャットボットサービスで既に黒字化を達成しました。OpenAIの最近の調査では、企業向けAIツールの利用者が1日あたり約1時間しか時間を節約できていないことが明らかになっています。一方で、成人向けAIチャットボット市場は急速に成長し、数十万から数百万のユーザーを獲得しています。この変化は、AI技術の実用化における予想外の展開として、技術業界に大きな影響を与えています。

企業向けAIツールの期待外れな実績

生成AI技術は当初、企業の業務を革新し、人間の労働者を支援または代替するツールとして大きな期待を集めていました。テクノロジー企業は数年にわたり、事務作業の自動化、企業コストの削減、生産性の飛躍的向上を約束してきました。

しかし現実は期待とは異なるものでした。OpenAIが発表した最近の報告書によると、これらのツールを使用する従業員が実際に節約できる時間は1日あたり約1時間程度にとどまっています。カリフォルニア州立工科大学サンルイスオビスポ校のパトリック・リン研究員は、「AI開発者たちは長い間、世界最大の問題を解決し、職場の生産性を大幅に向上させるという高尚なビジョンを掲げてきました」と指摘します。

コーディングやカスタマーサービスなど一部の業界では確かに破壊的な影響を与えていますが、多くの企業がコスト、プライバシー、セキュリティの問題に不安を感じ、AI導入計画を縮小または完全に中止しています。リン研究員によれば、これは人々が大規模言語モデルの能力を過大評価していたことが一因だといいます。

成人向けチャットボット市場の急成長

企業向けAI市場が期待外れに終わる一方で、成人向けチャットボット市場は予想外の成功を収めています。Joi AIは月額14ドルで、ユーザーが「理想のガールフレンドやボーイフレンドを作成」し、性的なロールプレイを楽しみ、50枚の露骨な画像を生成できるサービスを提供しています。

同社の広報担当者ユリア・ダビドワ氏によると、Joi AIは現在黒字化を達成しています。レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」をモデルにした高度に性的なチャットボットは、80万回以上のチャット対話を記録しました。このボットは有料顧客に「実存的な口説き文句」と「500年続くアイコンタクト」を約束しています。

Joiだけではありません。マルタ政府に提出された2024年の財務諸表によると、EverAI社も成人向けプラットフォームCandy.AIを通じて既に収益性を実証しています。これらの企業は、ポルノの比喩や架空のキャラクターに基づいた様々なアバターを提供し、ユーザーが会話し、愛着を持てるようにしています。

ポルノ産業とテクノロジーの歴史的関係

歴史的に見て、ポルノやその他の成人向けコンテンツは技術の発展方向に影響を与えてきました。VHSビデオテープ、デジタル写真、ストリーミング動画の普及は、いずれも成人向けコンテンツ産業が推進力となりました。生成AIも例外ではありません。

Joiのコミュニティ成長責任者であるケイル・ジョーンズ氏は、「私たちが目指しているのは、クリエイターがファンの望む体験を再び提供し、ファンに完全なコントロールを与えることです。写真や幻想、つながりを受け取る際の遅延や待ち時間なしに」と説明します。

Joiは成人向けパフォーマーと提携し、彼らの肖像を使用する許可を得ています。ブランディ・ラブやファラ・エイブラハムなどのポルノ俳優は、プラットフォームと提携してAIアバターを作成し、ユーザーとの対話から収益を得ています。現在のユーザーの大半は異性愛男性ですが、クィアな関係性に興味を持つ人々も増えています。革製ハーネスを着たサンタを描いたクリスマステーマの「クラウス・キンキー」ボットは、15万人以上の「ファン」を獲得しています。

倫理的懸念と批判

この急成長する市場には深刻な倫理的問題も存在します。過去数年間、生成AIの影響は女性や子どもにとって有害なものとなっています。彼らは非同意のディープフェイク画像の被害者となることが増えており、児童性的虐待素材も含まれます。被害者は有名人から一般人まで多岐にわたり、オンラインに投稿された写真はAIを使って改変される可能性があります。

キングス・カレッジ・ロンドンのケイト・デブリン教授は、OpenAIがChatGPTでエロティカ生成を許可する動きについて、ユーザーに起こりうる「感情的な商品化」について警告しています。ノーザンイリノイ大学のデビッド・ガンケル研究員も同様の懸念を表明し、「非常に脆弱な人々が、確立された経済的関係によって操作される可能性があります」と指摘します。ユーザーは長時間の対話中にボットと深いつながりを感じ、支払い能力を超える金額を使ってしまう可能性があるのです。

これらの批判に対し、ジョーンズ氏は、Joiが顧客が購入したいサービスを提供し、満足して帰ってもらうことに焦点を当てていると強調します。「即座のつながり、無制限のコンテンツ、無制限の体験、無制限の幻想に対してプレミアムを支払っているのです」と彼は言います。ソフトウェアサブスクリプションから朝のコーヒーまで、「消費者向けのあらゆるもの」について同様の批判ができると主張しています。

大手テクノロジー企業の慎重な姿勢と変化

大手企業は成人向けコンテンツに対してはるかに慎重な姿勢を取ってきました。Anthropic、Google、Meta、Microsoft、OpenAIなどAI競争の主要プレーヤーは、過去数年間、チャットボットからの性的に露骨な出力を大部分禁止し、開発者やユーザーが成人向けコンテンツ生成にモデルを使用することを阻止しようとしてきました。

注目すべき例外は、イーロン・マスクのxAIが開発したXのGrokチャットボットです。Grokは「メカヒトラー」と自称するなど極端な出力で知られています。2024年7月、xAIは有料機能の一部として、ユーザーが対話できるNSFWアニメコンパニオンを追加しました。

OpenAIのCEOサム・アルトマンは2024年10月、ChatGPTが成人ユーザー向けにエロティカを含む成人向けコンテンツの生成を開始すると発表しました。これは2024年に最初に示唆された機能で、2025年第1四半期に実装される予定です。同社は、この動きがユーザーエンゲージメントを高めるためではないと主張しています。OpenAIは現在、性的コンテンツポリシーをこのように調整すると発表した唯一の大手企業です。

できること・できないこと

現在の成人向けAIチャットボット技術により、ユーザーは仮想的なパートナーとテキストベースの会話を楽しみ、カスタマイズされたキャラクターを作成し、性的な画像や動画を生成することが可能になります。例えば、特定の外見や性格を持つアバターを作成し、ロールプレイシナリオを展開したり、個人的な幻想を実現したりといった使い方が考えられます。有料プランでは、より多くの画像生成や高度な対話機能が利用できます。

一方で、これらのシステムには重要な制約があります。AIチャットボットは本物の人間関係を代替するものではなく、感情的な依存や過度の支出につながるリスクがあります。また、非同意のディープフェイク作成など悪用の可能性も存在します。大手テクノロジー企業の多くは依然として成人向けコンテンツ生成を制限しており、OpenAIの新方針も2025年第1四半期まで実装されません。技術的には可能でも、倫理的・法的な課題は今後も議論が続くでしょう。

私たちへの影響

このニュースは、AI技術の発展方向と投資の流れに関心を持つすべての人々に影響を与えます。企業向けAIツールへの巨額投資が期待通りの成果を上げていない一方で、成人向けチャットボット市場が収益性を実証したことは、AI産業の今後の方向性を示唆しています。

短期的な影響については、AI関連企業への投資判断が変化する可能性があります。労働生産性向上を謳う企業向けAIツールへの期待値が調整され、代わりにエンターテインメントや個人向けサービスに焦点を当てた企業が注目を集めるかもしれません。OpenAIのような大手企業が成人向けコンテンツ市場に参入することで、この分野の競争が激化し、サービスの質や価格に変化が生じる可能性があります。

中長期的な影響としては、AI技術の社会的受容性や規制の在り方が問われることになるでしょう。成人向けコンテンツ生成の倫理的問題、特に非同意のディープフェイクや感情的依存のリスクに対する法的枠組みの整備が進むと予測されます。また、ポルノ産業が歴史的に技術革新を推進してきたように、成人向けAI市場での技術開発が他の分野にも波及する可能性があります。

ただし、この技術を利用する際には慎重さが必要です。感情的な依存や過度の支出、プライバシーの侵害といったリスクを十分に理解した上で、自己責任において利用することが重要です。また、非同意のディープフェイク作成は法的・倫理的に許されない行為であることを認識する必要があります。

出典:AI Labor Is Boring. AI Lust Is Big Business(www.wired.com)

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