米大学でCS専攻が減少、学生はAI専門課程へ移行―中国に遅れる米国

米国の大学でコンピュータサイエンス専攻の学生が減少し、AI専門課程への移行が進んでいます。カリフォルニア大学では2025年秋に6%減少。一方、AI専攻を新設した大学では志願者が急増しています。

米大学でCS専攻が減少、学生はAI専門課程へ移行―中国に遅れる米国

2025年秋、米国カリフォルニア大学システムで異変が起きました。ドットコムバブル崩壊以来初めて、コンピュータサイエンス専攻の学生数が前年比6%減少したのです。2024年の3%減に続く減少で、全米の大学入学者数が2%増加する中での逆行現象でした。サンフランシスコ・クロニクル紙が2月に報じました。

しかし、これは単なる減少ではありません。学生たちは技術分野を離れているのではなく、従来のコンピュータサイエンスから、AI専門の学位課程へと移動しているのです。カリフォルニア大学サンディエゴ校は、2025年秋にAI専攻を新設した唯一のキャンパスとして、学生数を増やしました。全米の多くの大学が同様のAI専門課程を立ち上げており、学生の関心は明確にAIへと向かっています。

この動きの背景には、中国の大学が既にAI教育を必修化し、学生の60%近くが毎日複数回AIツールを使用している現実があります。米国の大学は対応を急いでいますが、教授陣の抵抗や方針の不一致により、移行は必ずしもスムーズではありません。学生たちは待たずに、既にAI教育を提供する大学へと移っているのです。

カリフォルニア大学で起きた歴史的な変化

カリフォルニア大学システム全体で、2025年秋のコンピュータサイエンス専攻の学生数は前年比6%減少しました。これは2024年の3%減に続く減少です。ドットコムバブルが崩壊した2000年代初頭以来、初めての大幅な減少となりました。

この減少は、全米の大学入学者数が2%増加している中で起きています。全米学生クリアリングハウス研究センターが2026年1月に発表したデータによると、大学全体への入学者は増えているのです。つまり、学生たちは大学進学自体を避けているのではなく、コンピュータサイエンス専攻を選ばなくなっているということです。

唯一の例外がカリフォルニア大学サンディエゴ校でした。この大学は2025年秋に、カリフォルニア大学システムで唯一、AI専攻を新設しました。そして学生数を増やすことに成功したのです。この対照的な結果は、学生たちが何を求めているかを明確に示しています。

中国が先行するAI教育の現実

中国の大学は、米国よりもはるかに積極的にAI教育を進めています。MITテクノロジーレビューが2025年7月に報じたところによると、中国の大学はAIを脅威ではなく、必須のインフラとして扱っています。

具体的な数字を見ると、中国の学生と教員の60%近くが、現在、AIツールを1日に複数回使用しています。浙江大学などの学校では、AI関連の授業を必修科目にしました。清華大学などのトップ大学は、学際的なAI専門の学部を新設しています。

中国では、AIを使いこなす能力はもはや選択肢ではありません。基本的なスキルとして位置づけられているのです。この姿勢の違いが、米国の大学との大きな差を生んでいます。

米国の大学が急ぐAI専門課程の新設

米国の大学も、過去2年間で急速にAI専門プログラムを立ち上げています。マサチューセッツ工科大学では、「AIと意思決定」専攻が現在、キャンパス内で2番目に大きな専攻になったと大学側が発表しています。

南フロリダ大学は、2025年秋学期に新設したAIとサイバーセキュリティの学部に3000人以上の学生を受け入れました。ニューヨークタイムズが2025年12月に報じています。バッファロー大学は2025年夏に「AIと社会」学部を立ち上げ、7つの新しい専門学士課程を提供しています。開校前に200人以上の志願者を集めました。

南カリフォルニア大学は2026年秋にAI学位課程を開始する予定です。コロンビア大学、ペース大学、ニューメキシコ州立大学なども同様の計画を進めています。これらの動きは、学生の需要に応えようとする大学側の努力を示しています。

大学内部で起きている抵抗と混乱

しかし、すべての大学で移行がスムーズに進んでいるわけではありません。ノースカロライナ大学チャペルヒル校のリー・ロバーツ学長は、2025年10月のインタビューで、教員の対応が両極端に分かれていると説明しました。一部の教員はAIに「前向き」ですが、他の教員は「頭を砂に埋めている」状態だというのです。

ロバーツ学長は金融業界出身で、学術界の外から着任しました。彼は教員の抵抗にもかかわらず、AI統合を強く推進しています。ノースカロライナ大学は、2つの学部を統合してAI重視の組織を作ると発表しましたが、この決定は教員からの反発を招きました。ロバーツ学長はAI専任の副学長も任命しています。

ロバーツ学長は次のように述べています。「卒業後、誰も学生に『最善を尽くしてください。でもAIを使ったら問題になります』とは言いません。しかし、今まさに教員がそう言っているのです」。この発言は、大学内部の温度差を浮き彫りにしています。

親世代の反応と誤解

親たちもこの移行に影響を与えています。大学入学コンサルティング会社カレッジズームを運営するデビッド・レイナルド氏は、クロニクル紙に対し、かつて子供をコンピュータサイエンスに進ませようとしていた親たちが、今では反射的に他の専攻へと誘導していると語りました。

親たちが選んでいるのは、AI自動化に対してより抵抗力があると思われる専攻です。機械工学や電気工学などが含まれます。しかし、この判断は必ずしも正確ではないかもしれません。AIはあらゆる工学分野に影響を与えているからです。

この親世代の反応は、AI時代の職業選択についての理解がまだ十分に広がっていないことを示しています。実際には、AIを理解し使いこなせることが、どの分野でも重要になっているのです。

全米規模で確認された学生の動き

非営利団体コンピューティング研究協会が2025年10月に実施した調査によると、回答者の62%が、所属する大学のコンピューティングプログラムで学部生の入学者数が2025年秋に減少したと報告しています。この協会には、多様な大学のコンピュータサイエンス学部とコンピュータ工学学部が加盟しています。

しかし、AI専門プログラムが急増していることを考えると、これは技術分野からの脱出ではなく、移動だと言えます。学生たちは技術を捨てているのではありません。代わりに、AIに焦点を当てたプログラムを選んでいるのです。

この傾向は、コンピュータサイエンス卒業生の就職難が報じられたことによる一時的な現象かもしれません。しかし、より可能性が高いのは、これが将来を示す指標だということです。学生たちは、従来のコンピュータサイエンスよりも、AI専門の教育が自分たちのキャリアに必要だと判断しているのです。

できること・できないこと

AI専門課程では、従来のコンピュータサイエンスとは異なるスキルセットを学びます。具体的には、機械学習モデルの構築と訓練、大規模言語モデルの活用、AIツールを使った問題解決などです。例えば、MITの「AIと意思決定」専攻では、AIを使って複雑な意思決定プロセスを最適化する方法を学びます。南フロリダ大学のプログラムでは、AIとサイバーセキュリティを組み合わせた実践的なスキルを習得できます。

一方で、まだ課題もあります。多くの大学では、教員がAI教育に十分に対応できていません。カリキュラムも試行錯誤の段階です。また、AI技術自体が急速に進化しているため、今日学んだ内容が数年後には古くなる可能性もあります。さらに、AI専門課程を新設した大学でも、十分な数の専門教員を確保できていないケースがあります。これらの問題は、今後数年かけて徐々に改善されていくでしょう。

私たちへの影響

このニュースは、これから大学進学を考えている学生とその家族、そして既に技術分野で働いている人々に重要な影響を与えます。

短期的な影響については、大学選びの基準が変わります。従来のコンピュータサイエンス専攻の評判だけでなく、AI専門課程の有無や質が重要な判断材料になります。既に多くの学生がこの視点で大学を選んでおり、AI専門課程のない大学は優秀な学生を集めにくくなる可能性があります。また、現在コンピュータサイエンスを学んでいる学生も、AIスキルを追加で習得する必要性を感じるでしょう。

中長期的な影響としては、技術業界全体の人材構成が変わることが考えられます。5年後、10年後には、従来型のコンピュータサイエンス教育を受けた人材よりも、AI専門教育を受けた人材の方が多くなるかもしれません。これは企業の採用基準や求めるスキルセットにも影響を与えます。また、中国が既にAI教育で先行していることは、国際的な技術競争力にも関わってきます。

ただし、注意すべき点もあります。AI専門課程が急増しているからといって、すべてのプログラムが質の高い教育を提供しているわけではありません。新設されたばかりのプログラムは、まだカリキュラムや教員体制が十分に整っていない可能性があります。大学を選ぶ際には、プログラムの内容、教員の専門性、就職実績などを慎重に確認する必要があります。

出典:The great computer science exodus (and where students are going instead)(techcrunch.com)

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