AI学習データ提供のMicro1、年間経常収益1億ドル突破を発表

AI学習データ提供のMicro1が年間経常収益1億ドル突破を発表。年初の700万ドルから急成長。MicrosoftなどAI大手企業への専門家データ提供で市場拡大。

AI学習データ提供のMicro1、年間経常収益1億ドル突破を発表

2025年12月4日、AI学習データ提供企業のMicro1が、年間経常収益(ARR)1億ドルを突破したと発表しました。年間経常収益とは、サブスクリプション型ビジネスで1年間に得られる収益の見込み額のことです。同社は2025年初めには約700万ドルのARRでしたが、わずか1年で約14倍に成長しました。この数字は、9月に発表した5000万ドルの2倍以上となります。Micro1は、MicrosoftをはじめとするAI研究機関や大企業に対し、AIモデルを訓練するための専門家による高品質なデータを提供しています。創業3年の同社の急成長は、AI開発における人間の専門知識の重要性が高まっていることを示しています。AI業界では、より賢いモデルを作るために、専門家が作成・評価したデータへの需要が急増しており、この市場は現在の100億から150億ドル規模から、2年以内に1000億ドル規模に成長すると予測されています。

Micro1の事業内容と急成長の背景

Micro1は、AI研究機関や企業に対して、AIモデルを訓練するための専門家を募集・管理するサービスを提供しています。同社の創業者でCEOのアリ・アンサリ氏(24歳)によると、Microsoftなどの主要なAI研究機関や、フォーチュン100企業が顧客となっています。これらの企業は、大規模言語モデルを改善するために、ポストトレーニングや強化学習と呼ばれる手法を使っており、そこで高品質な人間のデータが必要とされています。

同社の急成長には、業界の大きな変化が影響しています。2025年、MetaがScale AIに140億ドルを投資し、Scale AIのCEOを採用したことで、OpenAIやGoogle DeepMindがScale AIとの取引を停止したと報じられました。この動きにより、Micro1や競合のMercor、Surgeといった企業への需要が急増しました。ただし、競合他社の規模はさらに大きく、Mercorは4億5000万ドル以上、Surgeは2024年に12億ドルのARRを報告しています。

専門家の迅速な採用と評価システム

Micro1の強みは、専門家を迅速に採用し評価できる仕組みにあります。同社はもともとZaraという名前のAI採用ツールとして始まり、エンジニアリング人材とソフトウェア職をマッチングしていました。その後、データトレーニング市場に軸足を移しましたが、当時開発したAIツールが現在も活用されています。このツールは、プラットフォーム上で専門家の役割を求める応募者を面接し、審査する機能を持っています。

現在、同社は数百の専門分野にわたって数千人の専門家を管理しています。対象分野は高度に技術的な領域から、意外にもオフラインの分野まで幅広く含まれます。アンサリ氏によると、多くの専門家は時給100ドル近くを稼いでおり、「ハーバード大学の教授やスタンフォード大学の博士号取得者が、週の半分をMicro1を通じてAIの訓練に費やしている」と述べています。

新たな成長分野:企業向けAIエージェントとロボティクス

アンサリ氏は、現在のAI研究機関向けビジネスに加えて、2つの新しい市場セグメントが今後の成長を牽引すると予測しています。第1の分野は、AI専業ではないフォーチュン1000企業によるAIエージェント開発です。これらの企業は、社内業務、サポート業務、財務、業界特有のタスクのためにAIエージェントを構築し始めています。

AIエージェントの開発には体系的な評価が必要です。具体的には、最先端のAIモデルをテストし、その出力を採点し、最適なモデルを選択し、微調整を行い、本番環境で継続的にパフォーマンスを検証するというサイクルです。アンサリ氏は、このサイクルが人間の専門家による大規模なAI行動の評価に大きく依存すると主張しています。「AI専業ではない企業の製品予算のうち、評価と人間データに充てられる割合が、現在の0%から少なくとも25%に増加すると予想しています」と同氏は述べています。

第2の分野はロボティクスの事前訓練です。これには、日常的な物理的タスクの高品質な人間による実演データが必要となります。Micro1はすでに、世界最大のロボティクス事前訓練データセットの構築を進めています。数百人の一般参加者が自宅で物体との相互作用を記録し、そのデータを収集しています。ロボティクス企業が家庭やオフィスで確実に動作するシステムを実現するには、膨大な量のこうしたデータが必要になるとアンサリ氏は説明しています。

できること・できないこと

Micro1のサービスにより、AI研究機関や企業は高品質な専門家データを迅速に入手できるようになります。例えば、医療分野の専門家による診断データや、法律分野の専門家による契約書レビューデータなど、特定領域の深い知識を必要とするAIモデルの訓練が可能になります。また、AIモデルの出力を専門家が評価することで、モデルの精度向上や問題点の特定が効率的に行えます。

一方で、まだ課題もあります。競合他社と比較すると、Micro1の規模はまだ小さく、市場シェアの拡大が今後の課題となります。また、ロボティクスデータや企業向けAIエージェント評価といった新市場は、まだ黎明期にあり、本格的な収益化には時間がかかる可能性があります。今後1〜2年で、これらの新分野がどの程度成長するかが、同社の長期的な成功を左右するでしょう。

私たちへの影響

このニュースは、AI技術の開発に関心を持つ人々や、AI関連ビジネスに携わる人々に重要な示唆を与えます。Micro1の急成長は、AIモデルの訓練において人間の専門知識が依然として不可欠であることを示しています。完全に自動化されたAI開発ではなく、人間とAIの協働が今後も続くことを意味します。

短期的な影響としては、専門知識を持つ人々にとって新たな収入機会が生まれています。時給100ドル近くという高い報酬で、自宅からAI訓練に貢献できる仕事が増えています。中長期的には、AI専業ではない一般企業でも、製品開発予算の4分の1をAI評価と人間データに充てるようになると予測されており、この分野での雇用機会がさらに拡大する可能性があります。

ただし、この市場は急速に変化しており、競合も激しくなっています。専門家として参加を検討する場合は、信頼できるプラットフォームを選び、データの使用目的や報酬体系を十分に理解することが重要です。また、企業がこうしたサービスを利用する際には、データの品質管理や専門家の適切な評価体制が整っているかを確認する必要があります。

出典:Micro1, a Scale AI competitor, touts crossing $100M ARR(techcrunch.com)

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