最高データ責任者600人の調査で、AI導入企業の半数がデータ品質と取得の問題を課題に挙げました。76%がAIガバナンスの遅れを認識。86%が2026年にデータ管理への投資を増やす計画です。
AI活用企業の半数がデータ品質に課題、CDOの86%が投資増を計画
2026年3月5日、情報管理企業のインフォマティカとデロイトが、最高データ責任者(CDO)600人を対象とした調査結果を発表しました。この調査では、年間売上5億ドル以上の企業の69%が生成AIを業務に活用していることが明らかになりました。これは2025年の48%、2024年の45%から大きく増加しています。しかし、AI導入が進む一方で、データの品質と管理に関する課題が浮き彫りになっています。特に、自律的に判断して行動するエージェント型AIを導入している企業の半数が、データ品質とデータ取得の問題を主要な障壁として挙げています。この調査結果は、企業がAIを本格的に活用するためには、信頼できる高品質なデータの確保が不可欠であることを示しています。データ管理への投資を増やす企業が86%に達していることから、多くの企業がこの課題に真剣に取り組み始めていることがわかります。
AI導入の現状とデータ品質の課題
調査によると、年間売上5億ドル以上の企業における生成AIの導入率は69%に達しました。わずか2年前の2024年には45%だったことを考えると、急速な普及が進んでいます。さらに注目すべきは、エージェント型AIの導入状況です。エージェント型AIとは、人間の指示を待たずに自律的に判断し、複数のタスクを実行できるAIのことです。例えば、顧客からの問い合わせに対して、過去のデータを検索し、適切な回答を作成し、必要に応じて他部門に連携するといった一連の作業を自動で行います。
この調査では、47%の企業がすでにエージェント型AIを導入しており、さらに31%が今後12か月以内に導入を計画していることがわかりました。特に大企業(従業員5000人以上)では54%が導入済みで、中小企業(従業員5000人未満)の44%を上回っています。しかし、導入企業の50%がデータ品質とデータへのアクセスを主要な課題として挙げています。これは、AIが正確に機能するためには、正確で最新のデータが必要だからです。不正確なデータや古いデータを使うと、AIが誤った判断をしてしまう可能性があります。
データリテラシーとAIリテラシーの不足
調査対象のCDOの75%が、従業員にはデータリテラシーの向上が必要だと考えています。データリテラシーとは、データを読み取り、理解し、適切に活用する能力のことです。同様に、74%がAIリテラシーの向上が必要だと回答しています。AIリテラシーとは、AIの仕組みを理解し、AIが生成した結果を適切に評価し、日常業務で責任を持って使用する能力を指します。
興味深いことに、65%のデータ責任者は、従業員が自分たちの使用しているデータを信頼していると考えています。エージェント型AIを使用している企業では、この数字は74%にまで上昇します。しかし、ここに矛盾があります。従業員のデータリテラシーとAIリテラシーが不足しているにもかかわらず、データへの信頼度が高いのです。これは、従業員が何が高品質なデータなのかを判断できていない可能性を示唆しています。データの品質が低くても、それに気づかずに使用してしまうリスクがあるのです。
ガバナンスの遅れと投資計画
調査では、76%のデータ責任者が、自社のデータ管理とガバナンスが従業員のAI利用の増加に追いついていないと認識していることが明らかになりました。ガバナンスとは、データの使用方法、アクセス権限、セキュリティ、プライバシー保護などを管理する仕組みのことです。AIの利用が急速に広がる中、誰がどのデータにアクセスできるのか、データがどのように使われているのかを把握し、管理することが難しくなっています。
この課題に対応するため、86%のCDOが2026年から2027年にかけてデータ管理への投資を増やす計画を立てています。投資の優先事項として、データのプライバシーとセキュリティの向上(43%)、データとAIのガバナンスの改善(41%)、データとAIのリテラシー向上(39%)が挙げられています。データ責任者の41%は、既存のツールをAIガバナンスに適応させる方針で、30%は専用ツールへの投資を、22%は新しいツールの開発を計画しています。
エージェント型AI導入の利点と障壁
エージェント型AIを導入することで、企業は複数の利点を得られます。最も多く挙げられた利点は、顧客体験の向上(29%)です。例えば、顧客からの問い合わせに対して、AIが過去の購入履歴や問い合わせ履歴を瞬時に分析し、個別化された対応を提供できます。次に、ビジネスインテリジェンス、分析、意思決定の改善(28%)が挙げられています。AIが大量のデータを分析し、人間では気づかないパターンや傾向を発見することで、より良い経営判断が可能になります。
その他の利点として、規制基準への準拠(27%)、従業員の協力とワークフローの向上(26%)が挙げられています。しかし、導入には障壁もあります。データ品質の問題(50%)に加えて、セキュリティへの懸念(43%)、エージェント型AIの専門知識の不足(42%)が主要な課題として挙げられています。特に、パイロット段階から本格的な運用段階への移行において、57%がデータの信頼性を主要な障壁と見なしています。
ベンダーパートナーシップの複雑さ
データ責任者は、データとAIの目標を達成するために、複数のベンダーパートナーが必要だと考えています。2026年の調査では、データ管理のために平均7社、AI管理のために平均8社のベンダーと提携していることがわかりました。しかし、ベンダーの数が増えると、システムの複雑さが増し、拡張性が低下するというジレンマがあります。異なるベンダーのツールを統合し、一貫性のあるデータ管理を実現することは技術的に困難です。
データ責任者は、ベンダーパートナーに対して、AIに向けたデータの準備を支援することを期待しています。これには、データの品質向上、データの統合、ガバナンスツールの提供などが含まれます。企業は、複数のベンダーを使用することの利点と、それによって生じる複雑さのバランスを取る必要があります。
私たちへの影響
このニュースは、AI技術を業務に活用している、または活用を検討している企業の経営者、データ管理者、IT担当者に重要な示唆を与えます。AI導入の成功は、技術そのものよりも、データの品質と管理体制にかかっていることが明確になりました。
短期的には、企業はデータ品質の評価と改善に取り組む必要があります。具体的には、データの正確性、完全性、最新性を確認し、不正確なデータや重複データを修正する作業が求められます。また、従業員のデータリテラシーとAIリテラシーを向上させるための研修プログラムの実施も急務です。従業員がデータの品質を判断できるようになれば、AIの誤った出力に気づき、適切に対処できるようになります。
中長期的には、AIガバナンスの体制整備が重要になります。誰がどのデータにアクセスできるのか、AIがどのようにデータを使用しているのかを可視化し、管理する仕組みが必要です。また、データのプライバシーとセキュリティを確保するための投資も継続的に必要になるでしょう。エージェント型AIの導入が進むにつれて、AIが自律的に行動する範囲が広がるため、より厳格な管理体制が求められます。
ただし、データ管理への投資は一朝一夕に成果が出るものではありません。データの品質向上は継続的な取り組みが必要であり、組織全体の文化として根付かせる必要があります。また、複数のベンダーツールを使用する場合は、システムの複雑さが増すため、統合と管理に十分なリソースを割く必要があります。AI導入を急ぐあまり、データ管理の基盤整備を怠ると、かえって非効率や誤った判断につながる可能性があることを認識しておくべきです。
