AMD CEO リサ・スー氏、競合との競争を恐れず AI市場での成長戦略を語る

米AMD社のリサ・スーCEOが、WIRED主催のイベントで競合他社との競争やAI市場について語りました。同社は10年で時価総額を2億ドルから3600億ドルに成長させた実績を持ちます。AI半導体市場での戦略と今後の展望が明らかになりました。

AMD CEO リサ・スー氏、競合との競争を恐れず AI市場での成長戦略を語る

2025年1月、米国の半導体大手AMD社のリサ・スーCEO(最高経営責任者)が、WIRED誌主催の「ビッグインタビュー」イベントに登壇しました。このイベントは、テクノロジー、文化、政治分野のリーダーたちとの深い対話を目的としたものです。スー氏は、AI(人工知能)バブルへの懸念や、競合他社との競争について率直に語りました。スー氏は台湾生まれで、幼少期に米国ニューヨークのクイーンズ地区に移住し、MIT(マサチューセッツ工科大学)で電気工学の博士号を取得した人物です。2014年にAMDのCEOに就任して以来、同社を破産寸前の状態から時価総額3600億ドル規模の企業へと成長させました。この10年間の劇的な業績回復は、業界で高く評価されています。今回のインタビューでは、AI半導体市場でのAMDの戦略や、4兆ドル企業となったNvidiaとの競争について、スー氏の考えが明らかになりました。

リサ・スー氏の経歴と AMD の復活劇

リサ・スー氏は1969年に台湾で生まれ、幼い頃に家族とともに米国に移住しました。父親はニューヨーク市で統計学者として働き、母親は会計士から起業家になった人物です。スー氏自身はMITで電気工学を学び、博士号を取得しました。その後、複数の半導体企業でキャリアを積み、2012年にAMDに入社しました。わずか18か月後の2014年には、同社のCEOに就任しています。

AMDは2000年代初頭、経営危機に直面していました。同社の時価総額は約20億ドルまで落ち込み、破産の危機にありました。しかしスー氏がCEOに就任してから状況は一変します。2014年から2025年までの約10年間で、同社の時価総額は20億ドルから約3600億ドルへと180倍に成長しました。この劇的な業績回復は、半導体業界における最も成功した企業再生の事例の一つとして知られています。

AI 半導体市場での競争と AMD の戦略

現在の半導体市場では、AI向けチップの需要が急速に拡大しています。この市場で圧倒的な存在感を示しているのが、時価総額4兆ドルに達したNvidia社です。Nvidiaは早い段階からAI革命を予見し、GPU(グラフィックス処理装置)をAI処理に最適化する戦略を取りました。その結果、AI向けGPU市場で圧倒的なシェアを獲得しています。

一方、AMDはCPU(中央処理装置)とGPUの両方を製造する企業です。同社のCPUはx86アーキテクチャと呼ばれる設計に基づいています。x86アーキテクチャとは、パソコンやサーバーで広く使われている命令セットのことです。AMDはこのCPU事業に加えて、AI向けGPUとAIアクセラレーターの事業を急速に拡大しています。AIアクセラレーターとは、AI処理を高速化するための専用チップのことです。

AMDのデータセンター事業も急成長しています。データセンターとは、大量のコンピューターやサーバーを集めた施設のことで、クラウドサービスやAIサービスの基盤となっています。スー氏は今回のインタビューで、AI市場での競争について楽観的な見方を示しました。Nvidiaとの競争を恐れるのではなく、市場全体の成長に注目していることが伺えます。

AI バブル懸念への見解

現在、AI技術への投資が過熱しているのではないかという懸念が一部で指摘されています。これは「AIバブル」と呼ばれ、1990年代後半のインターネットバブルや2000年代後半の住宅バブルのように、実態以上に評価が高まり、いずれ崩壊するのではないかという心配です。

しかしスー氏は、このAIバブル懸念は誇張されていると考えています。AI技術は実際に多くの産業で活用され始めており、実用的な価値を生み出しているというのが彼女の見解です。医療、製造業、金融、小売など、様々な分野でAIが業務効率化や新しいサービス創出に貢献しています。このような実需に支えられているため、単なる投機的なバブルではないとスー氏は主張しています。

ビッグインタビューイベントの他の注目トピック

今回のWIREDビッグインタビューイベントでは、スー氏以外にも多くの業界リーダーが登壇しました。AI企業Anthropicの共同創業者であるダニエラ・アモデイ氏、医師で作家のエリック・トポル氏、映画「ウィケッド」の監督ジョン・M・チュウ氏などが、それぞれの専門分野について語りました。

特に注目を集めたのは、エリック・トポル氏の講演です。トポル氏は、AIが網膜の画像からアルツハイマー病を診断できる可能性について語りました。網膜とは、目の奥にある光を感じる組織のことです。AIが網膜の画像を分析することで、脳の病気の兆候を早期に発見できるかもしれないという研究が進んでいます。このような医療分野でのAI活用は、早期診断と治療につながる可能性があります。

また、サンフランシスコ市長のダニエル・ルリー氏も登壇し、同市の未来について語りました。サンフランシスコはシリコンバレーに隣接し、多くのテクノロジー企業が拠点を置く都市です。ルリー氏は「私たちは上昇する都市です」と述べ、テクノロジー産業と都市の発展について前向きな展望を示しました。

私たちへの影響

このニュースは、テクノロジー業界の動向に関心を持つ人々や、AI技術の発展が社会に与える影響を考える人々にとって重要な意味を持ちます。AMD のような半導体企業の戦略は、私たちが日常的に使うコンピューター、スマートフォン、クラウドサービスの性能と価格に直接影響します。

短期的には、AMD と Nvidia の競争により、AI向けチップの選択肢が増え、価格競争が促進される可能性があります。これは企業がAIサービスを導入する際のコストを下げ、結果として消費者向けのAIサービスがより手頃な価格で提供されることにつながるでしょう。また、複数の企業が競争することで、技術革新のペースが加速する効果も期待できます。

中長期的には、AI半導体の性能向上により、より高度なAIアプリケーションが実現します。医療診断の精度向上、自動運転技術の発展、個人向けAIアシスタントの高度化など、私たちの生活の様々な場面でAI技術の恩恵を受けられるようになるでしょう。スー氏が指摘するように、AIバブルではなく実需に基づいた成長であれば、この技術は持続的に発展し、社会に根付いていくと考えられます。

ただし、AI技術の急速な発展には課題もあります。プライバシーの保護、雇用への影響、技術格差の拡大など、社会全体で考えるべき問題が残されています。技術の発展と社会的な配慮のバランスを取ることが、今後ますます重要になるでしょう。

出典:AMD CEO Lisa Su Isn’t Afraid of the Competition(www.wired.com)

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