AnthropicがClaude Sonnet 4.6を2026年2月17日に発表。無料・低価格ユーザー向けに最上位モデル並みの性能を提供。100万トークンのコンテキストウィンドウで長時間作業が可能に。
Anthropic、無料ユーザーにも最上位AI性能を提供するClaude Sonnet 4.6を発表
2026年2月17日、AI開発企業のAnthropicは、新しいAIモデル「Claude Sonnet 4.6」を発表しました。このモデルは、無料プランおよび低価格プラン(Proプラン)のユーザーに提供されるもので、これまで高価格帯のOpusモデルでしか実現できなかった高度な性能を、より手頃な価格で利用できるようにしたものです。Sonnetとは、Anthropicが提供する2つのAIモデルブランドのうち、より低価格で提供されるモデルシリーズのことです。今回の4.6バージョンでは、コーディング性能、コンピュータ操作能力、長文理解力、タスク計画能力などが大幅に向上しました。特に注目すべきは、100万トークンのコンテキストウィンドウ(ベータ版)が搭載されたことです。トークンとは、AIが処理する文章の単位のことで、100万トークンは約75万語に相当し、長編小説数冊分の情報を一度に扱えることを意味します。この進化により、無料ユーザーでも複雑なプログラミング作業や長時間の対話セッションを、セッションをリセットすることなく継続できるようになります。
Claude Sonnet 4.6の主な改善点
Claude Sonnet 4.6は、前バージョンの4.5から約4か月での大幅なアップグレードとなります。Anthropicの発表によると、開発者を対象とした初期テストでは、約70%のユーザーがSonnet 4.5よりも4.6を好むと回答しました。ユーザーからは「コードを修正する前に文脈をより効果的に読み取る」「共通のロジックを重複させずに統合する」といった評価が寄せられています。
さらに興味深いのは、旧世代の最上位モデルであるOpus 4.5(2024年11月リリース)と比較した場合でも、約60%の開発者がSonnet 4.6を好むという結果が出たことです。ユーザーは「過剰設計や手抜きが大幅に減少した」「指示への従順性が向上した」「成功したと誤って主張することが減った」「幻覚(AIが事実でない情報を生成すること)が減少した」「複数ステップのタスクでの一貫性が向上した」と報告しています。
コンピュータ操作能力も大きく進化しました。AIがデスクトップコンピュータを操作する能力が向上し、より多くの業務タスクに実用的に使えるようになりました。ただし、Anthropicは「最も熟練した人間のコンピュータ使用能力にはまだ及ばない」と認めており、今後さらなる改善が期待されます。
背景と経緯
Anthropicは、AIの安全性と有用性を重視する企業として知られています。同社は2つの主要なAIモデルブランドを展開しています。Opusは最高性能を誇る「キャデラック」のようなモデルで、高価格帯のプランやAPIで提供されます。一方、Sonnetはより手頃な価格で提供される「エントリーレベル」のモデルで、無料ユーザーにも提供されてきました。
今回のSonnet 4.6のリリースは、Opus 4.6の発表からわずか1週間後のことです。Opus 4.6は2026年2月上旬に発表されたばかりの最新の最上位モデルです。このように短期間で立て続けにモデルをリリースする背景には、AI業界全体の激しい競争があります。特にOpenAIが2025年に発表したGPT-5.3シリーズとの競争が激化しており、各社が性能向上とコスト削減の両立を目指しています。
Anthropicの戦略は明確です。最上位モデルのOpusで技術的な限界に挑戦しつつ、その成果を迅速にSonnetに反映させることで、より多くのユーザーに高度なAI技術を届けることを目指しています。今回の発表で、価格据え置きのまま性能を大幅に向上させたことは、この戦略の成功を示しています。
100万トークンのコンテキストウィンドウとは
今回の最も重要な技術的進化の一つが、100万トークンのコンテキストウィンドウ(現在ベータ版)の搭載です。コンテキストウィンドウとは、AIが一度に記憶して処理できる情報の量のことです。従来のモデルでは、長い対話や大量の文書を扱う際、途中で情報を「忘れて」しまい、セッションをリセットしたり情報を圧縮したりする必要がありました。
100万トークンは約75万語に相当し、具体的には以下のような情報を一度に扱えます。プログラムのソースコード全体(中規模のソフトウェアプロジェクト)、長大な契約書、数十本の研究論文、あるいは長編小説数冊分のテキストです。例えば、あるソフトウェアプロジェクトの全コードをAIに読み込ませて、「このプロジェクト全体を理解した上で、セキュリティ上の問題点を指摘してください」といった依頼が可能になります。
さらに重要なのは、Sonnet 4.6がこの大量の情報全体にわたって効果的に推論できることです。単に情報を保持するだけでなく、その情報を関連付けて分析し、長期的な計画を立てることができます。これにより、複雑なプロジェクトの全体像を把握しながら作業を進めることが可能になります。
できること・できないこと
Claude Sonnet 4.6により、これまで高価格帯のモデルでしか実現できなかった高度な作業が、無料または低価格で可能になります。例えば、中規模のソフトウェア開発プロジェクトでのコード生成や修正、長時間にわたる対話セッションでの一貫した応答、複数の文書を横断した情報分析、複雑なタスクの計画立案などが挙げられます。具体的には、ウェブアプリケーションの開発、データ分析レポートの作成、研究論文の要約と比較分析、ビジネス文書の作成支援などに活用できます。
一方で、まだ限界もあります。Anthropicは「最も熟練した人間のコンピュータ使用能力にはまだ及ばない」と明言しています。特に、極めて高度な推論が必要な作業、例えば大規模なコードベースの全面的なリファクタリング(プログラムの構造を改善する作業)、複数のAIエージェントを協調させるワークフロー、「完璧に正しくなければならない」重要な判断などは、依然として最上位モデルのOpus 4.6の方が適しています。また、開発者テストで30%のユーザーが旧バージョンを好んだという結果もあり、すべての用途で新バージョンが優れているわけではないことも示唆されています。
私たちへの影響
このニュースは、AIを日常的に使用する開発者、研究者、ビジネスパーソンに大きな影響を与えます。最も重要なのは、高度なAI機能へのアクセスが民主化されることです。これまで月額料金の高いプランに加入するか、高額なAPI利用料を支払わなければ使えなかった機能が、無料または低価格で利用できるようになります。
短期的な影響としては、無料プランやProプラン(月額20ドル程度)のユーザーが、より複雑なプロジェクトに取り組めるようになることが挙げられます。個人開発者や小規模なスタートアップ企業にとって、これは大きなコスト削減につながります。また、Sonnet 4.6は多くの場合Opus 4.6よりも高速に動作するため、作業効率も向上します。
中長期的な影響としては、AI業界全体の競争がさらに激化することが予測されます。Anthropicがこのような価格据え置きでの性能向上を実現したことで、他のAI企業も同様の対応を迫られる可能性があります。これは最終的に、ユーザーにとってより良いサービスとより低い価格をもたらすでしょう。また、高度なAIツールが広く普及することで、ソフトウェア開発や知識労働の方法そのものが変化していく可能性があります。
ただし、注意すべき点もあります。AIの性能が向上しても、最終的な判断や責任は人間が負う必要があります。特に重要な業務では、AIの出力を鵜呑みにせず、必ず人間が検証することが重要です。また、100万トークンのコンテキストウィンドウはまだベータ版であり、安定性や信頼性については今後の改善が期待されます。
