Anthropic、企業向けAI市場でOpenAIを逆転しシェア首位に

ベンチャーキャピタルのメンロ・ベンチャーズが2025年12月に発表した調査で、AnthropicがOpenAIを抜いて企業向けAI市場のシェア1位に。コーディングツールの人気が成長を牽引。企業のAI支出は前年比3倍の370億ドルに達し、バブルではなく本格的な需要拡大を示す。

Anthropic、企業向けAI市場でOpenAIを逆転しシェア首位に

2025年12月9日、米国のベンチャーキャピタル企業メンロ・ベンチャーズは、企業向け生成AI市場に関する年次調査レポートを発表しました。この調査によると、AI企業のAnthropicが2025年に企業向けAI支出のシェアで40%を獲得し、OpenAIの27%を大きく上回って首位に立ちました。わずか2年前の2023年にはAnthropicのシェアは12%に過ぎず、OpenAIが50%を占めていたことを考えると、劇的な逆転劇です。この変化の背景には、プログラマー向けのコーディングツールという「キラーユースケース」の台頭があります。Anthropicの主力製品であるClaude大規模言語モデルは、コーディング市場で54%という圧倒的なシェアを獲得しており、CursorやReplitといった人気のコーディングツールの多くがClaudeを採用しています。調査では、米国企業のAI支出が前年比3倍以上の370億ドルに達したことも明らかになり、これは単なるバブルではなく実需に基づく成長であることを示しています。この結果は、企業がAIツールを自社開発するのではなく、既製のソリューションを購入する方向にシフトしていることも浮き彫りにしました。

調査の概要と主な発見

メンロ・ベンチャーズは2025年11月、米国企業495社の経営幹部、IT部門、エンジニアリング部門の責任者を対象に調査を実施しました。これは同社が実施する3回目の年次調査です。調査では、企業が本番環境で使用するAPI利用料として支払った金額を基に、各AI企業の市場シェアを算出しています。各顧客の規模で重み付けした結果、Anthropicが40%、OpenAIが27%という結果になりました。

調査チームのティム・タリー氏らは「基盤モデルの状況は今年決定的に変化しました。Anthropicが業界関係者を驚かせる形でOpenAIを抜き、企業向け市場のリーダーになったのです」と報告書に記しています。Anthropicのシェアは2023年の12%から2024年には24%に上昇し、2025年には40%に達しました。一方、OpenAIは2023年の50%から2025年には27%へとほぼ半減しています。

コーディングツールがAnthropicの成長を牽引

Anthropicの急成長の最大の要因は、プログラマー向けのコーディング自動化ツール市場での圧倒的な強さです。調査によると、Anthropicはコーディング市場で54%のシェアを獲得しており、OpenAIの21%を大きく引き離しています。コーディングツールとは、プログラマーがコードを書く作業を支援または自動化するAIツールのことです。具体的には、Replit、Cursor、Harness、Windsurf、Augment Code、All Hands AIといったスタートアップ企業が提供するサービスがあります。

これらのコーディングツール市場は現在、年間40億ドル規模に成長しており、「アプリケーション層全体で最大のカテゴリー」となっています。メンロ・ベンチャーズは、これを「生成AIの最初のキラーユースケース」と位置づけています。キラーユースケースとは、新技術の普及を決定づける重要な用途のことです。多くのコーディングツールがAnthropicのClaude技術に依存していることが、Anthropicの市場シェア拡大に直接貢献しています。

企業のAI支出は前年比3倍に急増

調査では、米国企業の生成AIへの年間支出総額が370億ドルに達したと推定されています。これは前年の115億ドルから3倍以上の増加です。この急激な成長について、調査チームは「これはバブルではなく、本格的な需要拡大である」と結論づけています。バブルとは、実需を伴わない投機的な資金流入のことですが、今回の調査では企業が実際に使用して価値を得ているツールに対価を支払っていることが確認されました。

報告書は「企業AI市場は現在370億ドル規模で、ソフトウェア史上最速で成長しているカテゴリーです。あらゆる業界で、AIは仕事の進め方の中核になっています。実際のリターンを得ている企業は、投資を倍増させています」と述べています。ただし、この数字は米国内の支出のみを対象としており、グローバルな傾向については明確ではありません。

自社開発から既製品購入へのシフト

調査では、企業のAI導入戦略に大きな変化が見られました。昨年の調査では、AIソリューションの47%が社内で開発され、53%が購入されていました。しかし今年は、76%が購入、24%が自社開発という結果になり、完全に逆転しています。自社開発とは、企業が独自にAIシステムを構築することで、購入とは既製のAIツールやサービスを導入することです。

この変化について、調査チームは「しばらくの間、企業はほとんどのAIソリューションを自社で構築するだろうというのが一般的な見方でした。しかし今日では、既製のAIソリューションがより迅速に本番環境に到達し、即座に価値を示しています」と説明しています。これは、AIツールの成熟度が高まり、すぐに使える高品質な製品が増えたことを意味します。

エージェントAIはまだニッチな存在

一方で、大きな期待を集めている「エージェントAI」は、まだ主流にはなっていないことも明らかになりました。エージェントAIとは、大規模言語モデルが他の企業システムやデータベースと連携し、計画を立て、行動を実行し、フィードバックを観察して行動を調整できる高度なAIシステムのことです。例えば、顧客からの問い合わせに対して、複数のシステムから情報を集め、適切な対応を自動的に実行するようなシステムです。

調査によると、最大かつ最も急成長している横断的AIアプリケーション分野では、支出の86%がChatGPT Enterprise、Claude for Work、Microsoft Copilotといったシンプルな「コパイロット」型プログラムに向けられています。コパイロットとは、人間の作業を支援するAIのことで、最終的な判断は人間が行います。一方、Salesforce Agentforce、Writer、Gleanといったエージェント型AIへの支出はわずか14%にとどまっています。

15億ドル規模のAIインフラ支出カテゴリーでも、本番環境に導入されているシステムの大半はエージェント型ではなく、従来型のプロンプトエンジニアリングです。プロンプトエンジニアリングとは、AIに適切な指示を与えて望む結果を得る技術のことです。調査チームは「エージェントについて多くの議論がありますが、実際の本番環境のアーキテクチャは驚くほどシンプルです。企業の16%、スタートアップの27%のみが真のエージェントシステムを導入しています」と指摘しています。

できること・できないこと

現在の企業向けAI技術により、プログラマーのコード作成支援、顧客対応の自動化、財務データの分析といった具体的な業務が効率化されています。特にコーディングツールでは、定型的なコードの自動生成、バグの検出、コードの最適化提案などが可能になっています。調査チームは「AIは日常的な実用プログラミングタスクで人間のパフォーマンスを超えるでしょう」と予測しています。

一方で、複雑な判断を伴う業務や、複数のシステムを横断して自律的に動作するエージェント型AIの実用化はまだ限定的です。現時点では、AIは人間の指示に従って特定のタスクを実行する「コパイロット」としての役割が中心で、完全に自律的な判断と行動はまだ難しい段階です。ただし、数学やプログラミングのような検証可能な領域では、AIモデルの性能向上に停滞は見られず、今後も継続的な改善が期待されます。

私たちへの影響

このニュースは、企業でAIツールを導入する立場にある経営者やIT担当者、そしてAI技術を使って仕事をする実務者に重要な示唆を与えます。Anthropicの台頭は、特定の用途に特化した高性能なAIモデルが市場で評価されることを示しています。

短期的には、コーディングツールを中心としたAI導入が加速するでしょう。プログラマーの生産性向上が実証されているため、多くの企業がこの分野への投資を増やすと予想されます。また、自社開発よりも既製品の購入が主流になっているため、AIツールの選定と導入のスキルがより重要になります。

中長期的には、コーディング以外の分野でも「キラーユースケース」が登場し、AI市場がさらに拡大すると考えられます。ただし、エージェント型AIの本格的な普及にはまだ時間がかかりそうです。現時点では、シンプルで明確な価値を提供するAIツールに焦点を当てることが賢明でしょう。また、この調査は米国市場のみを対象としているため、日本を含む他の地域では異なる傾向が見られる可能性があることに注意が必要です。

出典:While Google and OpenAI battle for model dominance, Anthropic is quietly winning the enterprise AI race(www.zdnet.com)

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