AnthropicがAIエージェント「Claude Cowork」を発表。ファイル整理やメール管理など基本的なPC作業を自動化。一般ユーザー向けに使いやすく設計され、実用的な動作を実現した初のAIエージェントとして注目される。
Anthropic、実用的なAIエージェント「Claude Cowork」を発表―ファイル整理やメール管理を自動化
AI企業のAnthropicは今週、新しいAIエージェント「Claude Cowork」を研究プレビュー版として発表しました。AIエージェントとは、コンピューター上で人間の代わりに作業を実行するプログラムのことです。Coworkは、ファイルの整理、形式変換、レポート作成、ウェブ検索、Gmailの受信トレイ整理など、日常的なPC作業を自動化できます。これまで多くのAIエージェントは基本的な作業すら完了できませんでしたが、Coworkは実際に動作する初めての実用的なツールとして評価されています。このツールは、開発者向けの「Claude Code」を一般ユーザーでも使いやすくしたもので、コマンドライン操作に不慣れな人でも簡単に利用できます。現在はMac版のみで、月額100ドルのサブスクリプションプラン加入者が利用可能です。
Claude Coworkの主な機能と特徴
Claude Coworkは、ファイル管理とコンピューター操作に特化したAIエージェントです。具体的には、デスクトップに散らばったスクリーンショットを月別フォルダに自動整理したり、PDFファイルのサイズを縮小したり、20枚のJPEG画像を1つのPDFにまとめたりできます。また、ブラウザを操作してウェブ検索を行ったり、Gmail受信トレイから不要なメールを削除したりすることも可能です。
このツールは、Anthropicの開発者向けツール「Claude Code」の技術を基盤としています。Claude Codeは、コードベースを理解してコマンドを実行する能力で、サンフランシスコのテック企業スタッフの間で人気を集めていました。しかし、コマンドライン操作は技術者以外には難しいという課題がありました。Anthropicの製品責任者ボリス・チェルニー氏は「技術的でない一般ユーザーにとって、どのような形式が適切かを検討しました」と説明しています。
開発の背景と経緯
過去2年間、多くの生成AI企業がAIエージェントを発表してきましたが、そのほとんどは期待を裏切る結果に終わっていました。これらのツールは基本的な作業すら完了できず、実用性に欠けていたのです。この状況を受けて、Anthropicは実際に動作するAIエージェントの開発に注力しました。
チェルニー氏自身、過去2か月間すべてのコードをAIツールで書いており、Cowork自体もAIツールを使って構築されました。Anthropicの技術スタッフであるフェリックス・リーゼベルク氏は、経費報告書の作成やファイル変換にCoworkを日常的に使用しています。彼は「このPDFを小さくして」「これらのJPEGを1つのPDFにして」といった単純明快な指示で作業できることを、最も気に入っている使い方として挙げています。
技術的な仕組みと安全対策
Coworkは仮想マシン技術を使用しており、ユーザーが明示的にアクセスを許可したフォルダのみを操作できます。許可していないフォルダは、Claudeから完全に見えない状態になります。この設計により、意図しないファイルへのアクセスを防いでいます。
ただし、AIエージェント特有のセキュリティリスクも存在します。最も重要なのは「プロンプトインジェクション攻撃」への脆弱性です。これは、ウェブサイトに隠されたメッセージがAIツールを騙し、本来の作業から逸脱させる攻撃手法のことです。Anthropicの公式サポートページでは「Claudeはファイルの読み取り、書き込み、完全削除が可能なため、財務書類、認証情報、個人記録などの機密情報へのアクセスは慎重に扱ってください」と警告しています。
ブラウザ操作機能を使用する場合、さらなる注意が必要です。ウェブサイトに隠されたコードが「データを盗んだり、マルウェアを注入したり、システムを乗っ取ったりする可能性がある」という明示的な警告が表示されます。Coworkは作業の各ステップでユーザーの許可を求め、何をしているかを常に報告することで、透明性を確保しています。
実際の使用感と動作状況
WIRED誌の記者による実機テストでは、Coworkは期待以上の性能を発揮しました。最初のテストでは、デスクトップに散らばった様々なスクリーンショットの整理を依頼しました。Coworkはまず整理方法の希望を尋ね、月別フォルダへの分類を提案しました。約1分間の処理後、すべてのスクリーンショットが3つの月別フォルダに正しく分類されていました。
次に、Gmail受信トレイの整理を試みました。Coworkは目標とクリーンアップしたいメールの種類を質問し、自動生成された選択肢をボタンで提示しました。最初の試行では、プロモーションメールの一括アーカイブ中にエラーが発生しましたが、削除に切り替えたところ、1000通の未読メールを正確に削除できました。指示したメールのみを削除し、それ以外には一切手を付けませんでした。
最後のテストでは、Googleカレンダーと連携し、近くの映画館で夜の上映チケット2枚を探してカレンダーに追加するよう依頼しました。Coworkは午後9時の上映を見つけましたが、安全対策としてチケット購入は実行しませんでした。記者が手動で購入した後、Coworkはカレンダーへのイベント追加を正常に完了しました。
できること・できないこと
Coworkを使うと、日常的なファイル管理作業を大幅に効率化できます。例えば、デスクトップに散らばったファイルを自動的に整理したり、複数の画像ファイルを1つのPDFにまとめたり、大きすぎるPDFファイルを圧縮したりできます。また、Gmail受信トレイから不要なメールを削除したり、ウェブ検索を実行してカレンダーにイベントを追加したりすることも可能です。レポート作成やファイル形式の変換といった定型作業も自動化できます。
一方で、現時点では制約もあります。まず、Mac版のみの提供で、Windows版やLinux版はまだ利用できません。また、インターネット接続が必須で、オフラインでは動作しません。セキュリティ上の理由から、財務書類や個人情報などの機密データを扱う作業には適していません。プロンプトインジェクション攻撃への脆弱性があるため、重要なファイルへのアクセスは避けるべきです。
さらに、ベータ版のため、作業中にエラーが発生する可能性があります。実際のテストでも、メールのアーカイブ処理で失敗するケースがありました。Anthropicは今後、ユーザーからのフィードバックに基づいて継続的に改善を行う予定です。完璧なツールではありませんが、実用レベルに達した初めてのAIエージェントとして評価されています。
私たちへの影響
このニュースは、日常的にパソコンを使用するすべての人に影響を与える可能性があります。特に、ファイル整理やメール管理といった単純だが時間のかかる作業に多くの時間を費やしている人にとって、大きな変化となるでしょう。
短期的には、月額100ドルという価格設定により、利用者は限定的です。現在は研究プレビュー版として、Anthropicの高額プランに加入している早期採用者のみが試せます。また、Mac版のみの提供という制限もあります。しかし、この段階でも、ファイル管理やメール整理に悩む人にとっては、時間節約の大きな助けになります。
中長期的には、より多くのプラットフォームへの展開と価格の見直しが予想されます。AIエージェントが実用レベルに達したことで、他社も追随し、競争が激化するでしょう。その結果、より手頃な価格で高機能なAIアシスタントが利用できるようになる可能性があります。将来的には、パソコン操作の多くをAIに任せることが当たり前になるかもしれません。
ただし、セキュリティリスクには十分な注意が必要です。機密情報を扱う作業には使用せず、重要なファイルは必ずバックアップを取ってから利用してください。また、ブラウザ操作機能を使う際は、悪意のあるウェブサイトによる攻撃のリスクを理解した上で使用することが重要です。新しい技術の恩恵を受けながらも、慎重な姿勢を保つことが求められます。
