Googleが2025年1月、ChromeブラウザにAIエージェント機能「Auto Browse」を追加。フライト予約やアパート探しなどのオンライン作業を自動実行。現在は米国の有料プラン加入者のみ利用可能。
GoogleがChromeに「Auto Browse」機能を追加、AIがブラウザを自動操作
Googleは2025年1月15日、Chromeブラウザに新機能「Auto Browse」を発表しました。この機能は、Gemini 3という生成AIモデルを搭載したAIエージェントです。AIエージェントとは、人間の指示を受けて自律的に作業を進めるプログラムのことです。Auto Browseは、フライトの予約、アパート探し、経費の申請といったオンライン作業を、ユーザーに代わって自動的に実行します。この機能により、ユーザーは複雑なウェブ操作を自分で行う必要がなくなります。現在、Auto Browseは米国内でGoogleのAI ProまたはAI Ultraという月額有料プランに加入しているユーザーのみが利用できます。無料ユーザーへの提供時期や、他国での展開時期は明らかにされていません。この発表は、ウェブブラウジングの未来がAI中心になるというシリコンバレーの方向性を示すものです。
Auto Browseの具体的な機能
Auto Browseは、ChromeのGeminiサイドバーから起動します。サイドバーとは、ブラウザの横に表示される補助的な操作パネルのことです。ユーザーがサイドバーに指示を入力すると、AIが自動的にブラウザを操作し始めます。
Googleのプロダクトマネジメント責任者であるCharmaine D’Silvaは、事前デモでオンラインショッピングの例を示しました。彼女は「どこで買ったか思い出して再注文する代わりに、Auto BrowseにGemini経由で依頼し、ジャケットを購入してもらえます」と説明しました。実際のデモでは、昨年購入したジャケットの再注文を依頼し、さらに割引クーポンコードを探して購入するまでの作業をAIが実行しました。
起動されたAuto Browseは、専用のタブでChromeを制御します。画面上では、AIが自動的にクリックやページ遷移を行う様子が半透明の表示で確認できます。ユーザーは、AIが作業を進める過程をリアルタイムで見守ることができます。
背景と経緯
Auto Browseの発表は、GoogleがChromeにAI機能を統合する取り組みの一環です。2024年、Googleは「Gemini in Chrome」モードをリリースしました。この機能は、ウェブページの内容について質問に答えたり、複数の開いているタブから情報を統合したりできます。
今回の発表は、ウェブブラウジングの未来に関するシリコンバレーの共通ビジョンを反映しています。その未来とは、AIの役割が大幅に増え、人間の操作が大幅に減るというものです。OpenAIのAtlasのように最初から生成AI中心に設計されたブラウザもあれば、ChromeのようにAIツールを後付けしたブラウザもあります。現在、消費者が利用できるほぼすべてのブラウザに、何らかのレベルでAIが組み込まれています。AI搭載を避けたいユーザーには、Vivaldiブラウザが数少ない選択肢となっています。
技術的な詳細と制約
Auto Browseは、Googleの最新のGemini 3生成AIモデルを使用しています。生成AIとは、テキストや画像などを自動的に作り出す人工知能のことです。この技術により、AIはウェブページの構造を理解し、適切なボタンやリンクをクリックして目的を達成します。
ただし、自動化には限界があります。Googleが「より機密性の高い」と判断する作業については、ユーザーの監督が必要です。具体的には、ソーシャルメディアへの投稿やクレジットカードでの決済などです。これらの場面では、AIはそこまでの手順を示し、続行するかどうかをユーザーに確認します。
デモ版には「Geminiを慎重に使用し、必要に応じて制御してください。タスク中のGeminiの行動については、あなたが責任を負います」という免責事項が表示されます。AIを自動操作させても、最終的な責任はユーザーにあるとGoogleは明示しています。
セキュリティ上の懸念
Auto Browseの使用には、重要なセキュリティ上の考慮事項があります。Googleが安全性を高める努力をしているにもかかわらず、この種のAIツールには「プロンプトインジェクション攻撃」のリスクがあります。プロンプトインジェクション攻撃とは、悪意のあるウェブサイトがAIを騙して、ユーザーの意図しない行動を取らせる攻撃手法のことです。
例えば、悪意のあるサイトがページ内に隠された指示を埋め込み、AIがそれを読み取って不正な操作を実行する可能性があります。ユーザーは「ジャケットを購入して」と指示したつもりでも、AIが悪意のあるサイトの指示に従って別の商品を購入したり、個人情報を送信したりする危険性があります。
この問題は、AI技術全般に共通する課題です。現時点では完全な対策は存在せず、ユーザー自身が注意を払う必要があります。
できること・できないこと
Auto Browseにより、オンラインでの反復的な作業を自動化できます。例えば、定期的に購入する商品の再注文、複数のウェブサイトでのフライト価格の比較、賃貸物件の検索と条件に合う物件のリストアップ、経費精算システムへのレシート情報の入力といった作業が考えられます。これらは、手順が明確で繰り返し行う作業に適しています。
一方で、まだ難しいこともあります。クリエイティブな判断が必要な作業、高度な個人的判断を要する決定、複雑な交渉や問題解決などは、現在のAI技術では対応が困難です。また、前述のセキュリティリスクから、重要な金融取引や機密情報の扱いには慎重さが求められます。Googleが段階的に機能を展開する傾向から、今後数か月から1年程度で機能が改善され、より多くの作業に対応できるようになるでしょう。
私たちへの影響
このニュースは、日常的にウェブブラウザを使用するすべての人に影響を与えます。特に、オンラインショッピングや予約サイトを頻繁に利用する人、複数のウェブサイトで情報を比較する必要がある人にとって、作業時間の短縮という恩恵があります。
短期的な影響については、現在は米国の有料プラン加入者のみが対象ですが、Googleの過去のパターンから、数か月以内に無料ユーザーや他国にも展開される可能性が高いです。日本のユーザーも、2025年中には利用できるようになるかもしれません。
中長期的な影響としては、ウェブブラウジングの方法が根本的に変わる可能性があります。現在は自分でリンクをクリックしてページを移動しますが、将来は「○○を探して」とAIに指示するだけで結果が得られるようになるでしょう。これは便利な反面、ウェブサイトの運営者にとっては、AIに選ばれるサイト設計が重要になるという変化をもたらします。
ただし、記事の筆者も指摘するように、AIエージェントツールは過大評価されがちで、実際の信頼性には疑問が残ります。また、セキュリティリスクや責任の所在の問題もあります。新しい技術として期待しつつも、慎重に使用し、重要な決定は自分で確認する姿勢が必要です。
