Google、AIエージェント向け管理型MCPサーバーを公開―Maps、BigQueryへの接続を簡素化

Googleが2025年12月、AIエージェントが同社サービスに簡単に接続できる管理型MCPサーバーを公開。Maps、BigQueryなど主要サービスで利用可能に。開発者の接続作業を大幅に削減し、企業のAI活用を加速する狙い。

Google、AIエージェント向け管理型MCPサーバーを公開―Maps、BigQueryへの接続を簡素化

Googleは2025年12月10日、AIエージェントが同社のサービスに簡単に接続できる「管理型MCPサーバー」を公開しました。MCPとは、Model Context Protocolの略で、AIシステムがデータやツールに接続するための標準規格のことです。この規格は約1年前にAI企業のAnthropicが開発し、オープンソースとして公開されました。今回Googleは、Google MapsやBigQueryといった主要サービスに対応するMCPサーバーを提供開始しました。これにより、開発者はこれまで1〜2週間かかっていた接続設定作業を、URLを貼り付けるだけで完了できるようになります。AIエージェントとは、ユーザーの指示に基づいて自律的にタスクを実行するAIシステムのことで、旅行計画の作成やビジネス上の質問への回答など、さまざまな用途で活用が期待されています。しかし、これまではAIエージェントを外部のツールやデータと連携させることが技術的に難しく、企業での実用化が進みにくい状況でした。Googleの今回の取り組みは、この課題を解決し、企業がAIエージェントをより実用的に活用できる環境を整えることを目指しています。

GoogleがMCPサーバーを提供開始した背景

AIエージェントは、旅行計画の作成、ビジネス上の質問への回答、さまざまな問題解決の手段として注目されています。しかし、チャット画面の外にあるツールやデータと連携させることが大きな課題でした。開発者は、さまざまなコネクター(接続プログラム)を組み合わせて動作させる必要がありましたが、この方法は不安定で、規模を拡大することが難しく、管理上の問題も多く発生していました。

Google Cloudのプロダクトマネジメントディレクターであるステレン・ジャンニーニ氏は、「私たちはGoogleを設計段階からエージェント対応にしています」と述べています。今回の発表は、同社の最新AI言語モデル「Gemini 3」の公開に続くもので、より強力な推論能力と、実世界のツールやデータへの信頼性の高い接続を組み合わせることを目指しています。

MCPは、Anthropicが約1年前に開発したオープンソース標準規格です。AIシステムとデータやツールを接続するための共通の仕組みを提供します。この規格は、AIエージェント関連のツール開発者の間で広く採用されており、Anthropicは2025年12月初旬に、MCPをLinux Foundationの新しい基金に寄付し、AIエージェントのインフラストラクチャをオープンソース化し標準化することを発表しました。

管理型MCPサーバーの仕組みと利点

従来、開発者がAIエージェントを外部サービスに接続するには、1〜2週間かけて接続プログラムを設定する必要がありました。しかし、Googleの管理型MCPサーバーを使えば、開発者は管理されたエンドポイント(接続先)のURLを貼り付けるだけで接続が完了します。ジャンニーニ氏によれば、この簡素化により開発時間が大幅に短縮されます。

公開時点では、Google Maps、BigQuery、Compute Engine、Kubernetes Engineの4つのサービスに対応するMCPサーバーが提供されています。実際の使用例としては、分析アシスタントがBigQueryに直接クエリ(データ検索の命令)を送信したり、運用エージェントがインフラストラクチャサービスと対話したりすることが考えられます。

Google Mapsの場合を例にとると、MCPサーバーがない状態では、開発者はAIモデルが持つ内蔵知識に頼るしかありませんでした。しかし、Google Maps MCPサーバーをエージェントに接続することで、場所や旅行計画に関する実際の最新の位置情報に基づいた回答が得られるようになります。ジャンニーニ氏は、「エージェントにGoogle Maps MCPサーバーのようなツールを与えることで、実際の最新の位置情報に基づいた情報が得られます」と説明しています。

MCPの利点は、標準規格であることです。ジャンニーニ氏は、「MCPの素晴らしい点は、標準規格であるため、Googleがサーバーを提供すれば、どのクライアント(接続する側のアプリケーション)とも接続できることです」と述べています。MCPクライアントとは、MCPサーバーと通信し、提供されるツールを呼び出すAIアプリケーションのことです。Googleの場合、Gemini CLIやAI Studioがこれに該当します。ジャンニーニ氏は、AnthropicのClaudeやOpenAIのChatGPTをクライアントとして試したところ、「そのまま動作した」と報告しています。

企業向けのセキュリティとガバナンス機能

Googleは、今回の取り組みが単にエージェントを同社サービスに接続するだけではないと強調しています。より大きな企業向けの戦略は、同社のAPI管理製品であるApigeeにあります。Apigeeは、多くの企業がすでにAPIキーの発行、クォータ(使用量制限)の設定、トラフィックの監視に使用しているツールです。

ジャンニーニ氏によれば、Apigeeは標準的なAPIをMCPサーバーに「翻訳」できます。つまり、製品カタログAPIのようなエンドポイントを、エージェントが発見して使用できるツールに変換し、既存のセキュリティとガバナンス制御を上に重ねることができます。言い換えれば、企業が人間が作成したアプリケーションに使用しているのと同じAPIガードレール(安全装置)を、AIエージェントにも適用できるようになります。

GoogleのMCPサーバーは、Google Cloud IAMと呼ばれる権限管理メカニズムで保護されています。これにより、エージェントがそのサーバーで何ができるかを明示的に制御できます。また、Google Cloud Model Armorによっても保護されています。これは、エージェント向けワークロード専用のファイアウォールで、プロンプトインジェクション(悪意のある指示の注入)やデータ流出といった高度なエージェント特有の脅威から防御します。管理者は、監査ログを使用して追加の可視性を確保することもできます。

これらのMCPサーバーは、現在パブリックプレビュー(一般公開前の試用版)として提供されています。つまり、まだGoogle Cloudの利用規約で完全にカバーされていない段階です。ただし、すでにGoogleサービスに料金を支払っている企業顧客には、追加費用なしで提供されています。ジャンニーニ氏は、「新年早々に一般提供を開始する予定です」と述べ、今後毎週のように新しいMCPサーバーが追加されることを期待していると付け加えました。

できること・できないこと

この技術により、開発者はAIエージェントをGoogleの主要サービスに迅速に接続できるようになります。例えば、ビジネスアナリストが自然言語で質問すると、エージェントがBigQueryのデータベースに直接アクセスして分析結果を返すといった使い方が可能です。また、旅行計画アシスタントがGoogle Mapsの最新情報を使って、リアルタイムの交通状況や営業時間を考慮した提案を行うこともできます。インフラ管理の場面では、運用エージェントがCompute EngineやKubernetes Engineと対話して、サーバーの状態確認や設定変更を自動化することも考えられます。

一方で、現時点では対応サービスが限られています。公開時点ではMaps、BigQuery、Compute Engine、Kubernetes Engineの4つのみで、他のGoogleサービスへの対応は今後数か月かけて段階的に展開される予定です。ストレージ、データベース、ログ記録と監視、セキュリティといった分野のサービスが追加される計画です。また、パブリックプレビュー段階であるため、本番環境での大規模利用にはまだ制約がある可能性があります。2026年初頭には一般提供が開始される見込みで、その時点でより安定した運用が可能になるでしょう。

私たちへの影響

このニュースは、AIエージェントを業務に活用しようとしている企業や開発者に大きな影響を与えます。これまでAIエージェントと外部サービスの連携には技術的なハードルが高く、専門知識を持つ開発者が長時間かけて設定する必要がありました。今回のGoogleの取り組みにより、この障壁が大幅に下がり、より多くの企業がAIエージェントを実用的に活用できるようになります。

短期的な影響としては、Googleのサービスをすでに利用している企業が、追加コストなしでAIエージェント機能を試せるようになることが挙げられます。データ分析、インフラ管理、顧客サービスなどの分野で、業務の自動化や効率化が進む可能性があります。中長期的には、MCPが標準規格として広く採用されることで、Google以外のサービスプロバイダーも同様のMCPサーバーを提供し、AIエージェントのエコシステム全体が成長することが予想されます。これにより、企業は複数のサービスを組み合わせた高度なAIエージェントシステムを構築しやすくなるでしょう。

ただし、AIエージェントに強力な権限を与えることには慎重さが必要です。セキュリティとガバナンスの仕組みが整備されているとはいえ、エージェントが誤った判断をしたり、悪意のある指示を受けたりするリスクはゼロではありません。企業は、適切な権限設定、監査ログの確認、定期的なセキュリティレビューなど、責任あるAI活用の体制を整える必要があります。

出典:Google launches managed MCP servers that let AI agents simply plug into its tools(techcrunch.com)

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