GoogleがAI需要に対応するため、今後6カ月ごとにサーバー容量を2倍にする必要があると従業員に伝えました。4〜5年で1000倍の処理能力増強を目指します。AI業界全体でインフラ不足が深刻化しています。
Google、AI需要急増で「6カ月ごとに処理能力2倍」必要と発表
Googleは2025年11月上旬の社内会議で、AI(人工知能)サービスの需要増加に対応するため、今後6カ月ごとにサーバーの処理能力を2倍にする必要があると従業員に伝えました。同社のAIインフラ責任者であるアミン・バダット副社長は、4〜5年以内に現在の1000倍の処理能力が必要になると説明しています。この発表は、AI業界全体でインフラ不足が深刻化している現状を浮き彫りにしました。GoogleだけでなくOpenAIなどの競合企業も、急増するユーザー需要に追いつけない状況が続いています。AI技術の普及が進む一方で、それを支えるデータセンターやコンピューター資源の確保が、業界最大の課題となっています。この状況は、私たちが日常的に使うAIサービスの品質や利用制限にも直接影響を与えています。
Googleが直面する処理能力不足の実態
Googleのクラウド部門でAIインフラを統括するアミン・バダット副社長は、11月上旬の全社会議で従業員に対し、同社が抱える深刻な課題を明らかにしました。同社は現在、AI関連サービスの需要に応えるため、6カ月ごとにサーバーの処理能力を2倍にする必要があるとのことです。
バダット氏が提示した資料によると、Googleは今後4〜5年で現在の1000倍の処理能力を確保しなければなりません。1000倍とは、例えば現在1秒かかる処理を1000台のコンピューターで同時に行えるようにすることを意味します。しかも、この大幅な能力増強を「基本的に同じコスト、同じ電力消費量で実現する必要がある」と同氏は強調しました。
この需要がどこから来ているのかは完全には明らかではありません。ユーザーが自発的にAI機能を使っている場合もあれば、Googleが検索エンジン、Gmail、Workspaceなどの既存サービスにAI機能を組み込んでいることによる需要もあります。いずれにせよ、Googleは現在のインフラでは対応しきれない状況に直面しています。
AI業界全体で広がるインフラ不足
処理能力不足に悩んでいるのはGoogleだけではありません。AI業界全体で同様の問題が深刻化しています。
GoogleのライバルであるOpenAIは、SoftBankやOracleとの共同プロジェクト「Stargate」を通じて、米国内に6つの大規模データセンターを建設する計画を発表しました。今後3年間で4000億ドル(約60兆円)以上を投資し、約7ギガワットの電力容量を確保する予定です。7ギガワットとは、原子力発電所約7基分に相当する膨大な電力です。
OpenAIのChatGPTは現在、週間利用者数が8億人に達しています。しかし、有料会員でさえ、動画生成や高度な推論モデルといった機能で頻繁に利用制限に達している状況です。これは、ユーザー数に対してサーバー資源が不足していることを示しています。
バダット氏は会議で「AIインフラの競争は、AI競争の中で最も重要であり、最も費用がかかる部分です」と述べました。単に競合他社より多くの資金を投じるだけでは不十分で、「より信頼性が高く、より高性能で、より拡張可能なインフラ」を構築することが真の目標だと説明しています。
GPU不足が引き起こす連鎖的な問題
AI需要に対応できない大きな理由の一つが、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の供給不足です。GPUとは、もともと画像処理用に開発されたコンピューター部品ですが、AI計算を高速に処理できるため、現在のAIブームで需要が急増しています。
GPU市場を支配するNvidiaは、数日前の四半期決算報告で、同社のAI向けチップが「完売状態」だと発表しました。需要の急増により、データセンター部門の収益は1四半期で100億ドル(約1兆5000億円)も増加しました。しかし、生産が需要に追いついていないのが現状です。
このGPU不足は、Googleが新しいAI機能を展開する能力にも直接影響しています。11月6日の全社会議で、GoogleのCEOサンダー・ピチャイ氏は、同社の動画生成ツール「Veo」を例に挙げました。Veoは先月アップグレードされた動画作成AI機能です。ピチャイ氏は「Veoが公開されたとき、とても興奮しました。もしGeminiアプリでもっと多くの人に提供できていたら、より多くのユーザーを獲得できたと思います。しかし、処理能力の制約があるため、それができませんでした」と説明しました。
Googleの3つの対策戦略
バダット氏のプレゼンテーションでは、Googleが1000倍の処理能力増強という目標を達成するための3つの主要戦略が示されました。
第一の戦略は、物理的なインフラの構築です。これは新しいデータセンターの建設や既存施設の拡張を意味します。ただし、単に施設を増やすだけでなく、電力効率や冷却システムの改善も含まれます。
第二の戦略は、より効率的なAIモデルの開発です。同じ処理をより少ない計算資源で実行できるようにAIプログラムを改良することで、限られたインフラでより多くのサービスを提供できます。
第三の戦略は、独自設計のシリコンチップの開発です。Googleは自社でTPU(テンソル・プロセッシング・ユニット)と呼ばれるAI専用チップを設計しています。これにより、Nvidiaのハードウェアに完全に依存する必要がなくなります。今月初め、Googleは第7世代TPU「Ironwood」の一般提供を発表しました。同社によると、このチップは2018年の初代Cloud TPUと比較して「約30倍の電力効率」を実現しているとのことです。
AI投資バブルへの懸念と現実のギャップ
興味深いことに、AI業界では現在「投資バブル」への懸念が広がっています。過剰投資がいつか崩壊するのではないかという不安です。ピチャイCEO自身も最近のBBCインタビューで、この可能性について詳しく言及しました。
しかし、現場の状況は正反対です。GoogleやOpenAIなどの企業は、需要に追いつくためにインフラを構築するのに必死です。この矛盾した状況について、バダット氏は「投資不足のリスクが、過剰投資のリスクを上回る」というGoogleの判断を示唆しました。
ピチャイ氏は全社会議で、2026年は「激しい年」になると従業員に伝えました。AI競争の激化と、クラウドおよび処理能力への需要増加の両方に対応する必要があるためです。同氏は従業員のAIバブルへの懸念を認め、「確かに時代の雰囲気の中にある話題です」と述べました。
できること・できないこと
Googleの大規模なインフラ投資により、今後数年でAIサービスの品質と利用可能性が向上する可能性があります。例えば、現在は利用制限がある動画生成機能や高度な推論機能が、より多くのユーザーに提供されるようになるでしょう。また、検索結果やGmail、Googleドキュメントなどでより高度なAI支援が受けられるようになることも期待できます。
一方で、すぐに解決できない課題もあります。GPU不足は業界全体の問題であり、Googleだけでは解決できません。また、電力消費の問題も深刻です。1000倍の処理能力を同じ電力消費量で実現するという目標は技術的に非常に困難です。バダット氏自身も「簡単ではない」と認めています。さらに、データセンターの建設には時間がかかるため、短期的には需要と供給のギャップが続く可能性が高いでしょう。
私たちへの影響
このニュースは、AIサービスを日常的に使う私たち一般ユーザーに直接影響を与えます。現在、ChatGPTやGoogle Geminiなどのサービスで「利用制限に達しました」というメッセージを見ることがありますが、これはまさにこのインフラ不足が原因です。
短期的には、人気のあるAI機能で待ち時間が発生したり、利用制限がかかったりする状況が続くでしょう。特に無料ユーザーよりも有料ユーザーが優先される傾向が強まる可能性があります。また、新しいAI機能が発表されても、すぐに広く利用できるようになるとは限りません。Veoの例のように、段階的な展開になることが予想されます。
中長期的には、Googleや他の企業がインフラ投資を進めることで、より多くの人がより高度なAI機能を利用できるようになるでしょう。ただし、それには数年かかる見込みです。また、これらの大規模投資のコストは、最終的にはサービス料金に反映される可能性もあります。
ただし、AI投資バブルが崩壊した場合、企業が投資を急激に縮小し、サービスの質が低下するリスクもあります。現在のAIブームが持続可能かどうかは、今後数年で明らかになるでしょう。
