GoogleのAI検索ツール「AIモード」が、検索結果で自社サービスを優先的に引用していることが判明。全体の17%がGoogle自身へのリンクで、前年比3倍に増加。ウェブサイト運営者の収益減少が懸念されています。
GoogleのAI検索、自社サービスへの引用が前年比3倍に増加
2025年、検索エンジン最適化企業SE Rankingの調査により、GoogleのAI検索ツール「AIモード」が自社サービスを優先的に引用している実態が明らかになりました。AIモードとは、対話型のチャットボット形式で検索結果を表示するGoogleの新しい検索機能のことです。この調査によると、AIモードで表示されるリンクのうち約17%がGoogle自身のサービスに戻るリンクとなっており、この割合は1年前と比べて3倍に増加しています。さらに、2番目に多く引用されているのはGoogleが所有する動画サービスYouTubeでした。この傾向は、長年Googleからの訪問者に依存してきたウェブサイト運営者や出版社にとって深刻な問題となっています。なぜなら、AIが生成する検索結果が外部サイトではなくGoogle自身へのリンクで埋め尽くされることで、一般のウェブサイトへの訪問者が減少し、広告収入などの収益源が失われる可能性があるためです。
AIモードにおける自己引用の実態
SE Rankingの調査では、GoogleのAIモードが表示するハイパーリンクの多くが、外部のウェブサイトではなく別のGoogle検索結果ページに誘導していることが判明しました。現在、AIモードで最も多く引用されているサイトはGoogle.com自身です。2番目に多く引用されているのはYouTubeで、これもGoogleが所有するサービスです。
この傾向は特定の分野でより顕著に現れています。エンターテインメントと旅行のカテゴリーでは、AIモードの引用の約半数がGoogle検索結果に戻るリンクとなっています。例えば、2026年のアカデミー賞について質問した場合、候補作品へのリンクがすべてGoogle検索結果に誘導され、17個のハイパーリンクすべてがGoogleのページに戻る仕組みになっていました。
SE Rankingのブランド責任者でSEO専門家のモーディ・オーバースタイン氏は、「引用をクリックしても、クリックできるものが何もない。別のGoogle検索結果に連れて行かれるだけだ」と指摘しています。この状況は、ユーザーが求める情報にたどり着けない「ループ」を生み出していると批判されています。
背景と経緯
Googleは近年、検索結果にAIが生成する要約を表示する機能を積極的に導入してきました。AIオーバービューと呼ばれる機能では、検索クエリに対してAIが要約した回答を検索結果の上部に表示します。AIモードはさらに進化した形式で、対話型のインターフェースを通じて情報を提供します。
これらのAI機能の導入により、多くのウェブサイト運営者や出版社が訪問者数の減少を報告してきました。従来、Google検索は多くのウェブサイトにとって最大の訪問者獲得源でしたが、AIが直接回答を提供することで、ユーザーが外部サイトをクリックする必要性が減少しているのです。
Googleの検索責任者リズ・リード氏は以前、トラフィック減少の報告に異議を唱え、AIツールが「高品質なクリック」を生み出していると主張していました。しかし、今回の調査結果は、そのクリックの多くがGoogle自身のサービスに向けられていることを示しています。
Googleの説明と業界の反応
この調査結果について、Googleの広報担当者は「報告書で説明されているリンクの一部は、人々が関連する追加質問を探索し、追加のウェブリンクを見つけるのを助けるショートカットのようなものだ」と説明しています。これらのリンクはウェブへのリンクを置き換えることを意図したものではなく、「People also ask」のような他の検索機能と同様のものだとしています。
しかし、SEO専門家たちはこの説明に懐疑的です。Search Engine Landの編集ディレクター、ダニー・グッドウィン氏は「Googleが自社の検索結果にリンクすることが増えているのは継続的なトレンドだ」と指摘します。彼自身、AIオーバービューで昨年からこの傾向に気づいていたといいます。
グッドウィン氏は実際にこの「ループ」を経験しています。「答えを見つけようとしているのに、唯一の選択肢がGoogle検索結果をクリックすることで、それがまた別の検索結果に連れて行く。でも、まだ質問に答えてくれない」と述べ、ユーザーとコンテンツを公開する出版社の両方にとって非常にフラストレーションがたまる体験だと語っています。
ゼロクリック検索への移行
オーディエンス調査会社SparkToroの共同創設者でデジタルマーケティング専門家のランド・フィシュキン氏は、「最近のGoogleのトラフィックの最大の受益者はGoogle自身だ」と指摘します。彼はこれを、検索ツールやソーシャルメディアサイトから外部ソースへのトラフィックが減少する全体的なトレンドの一部と見ています。
フィシュキン氏が言う「ゼロクリック検索」とは、ユーザーが検索結果ページで答えを得て、外部サイトをクリックせずに検索を終える現象のことです。これは「トラフィックを送信するウェブから、トラフィックを保持するウェブへの大きな転換」を意味します。AIが直接回答を提供することで、この傾向はさらに加速しています。
この変化は、過去にソーシャルメディアが台頭した際に起きた議論を思い起こさせます。新しい技術を活用しようとするシリコンバレー企業と、トラフィック減少を懸念する出版社との間で激しい議論が交わされました。当時、GoogleなどのIT企業と出版社との間でパートナーシップ契約が結ばれたのは、その大きな変化に適応しようとする試みでした。
できること・できないこと
GoogleのAIモードにより、ユーザーは対話形式で質問を重ねながら情報を探索できるようになりました。例えば、映画の候補作品について質問すると、AIが要約した情報とともに関連リンクが表示されます。また、追加の質問を提案するボタンも表示され、ユーザーは深掘りした情報を得ることができます。
一方で、現在のAIモードには重要な制約があります。表示されるリンクの多くがGoogle自身の検索結果に戻るため、ユーザーは元の情報源に直接アクセスできないことがあります。これは「ループ」と呼ばれる状況を生み出し、ユーザーが求める具体的な答えにたどり着けないまま、複数の検索結果ページを行き来することになります。また、外部ウェブサイトへの直接リンクは段落の最後にボタン形式で表示されることが多く、インライン引用ほど目立たない位置に配置されています。
私たちへの影響
このニュースは、ウェブサイト運営者、コンテンツ制作者、そして一般のインターネットユーザーに大きな影響を与えます。ウェブサイト運営者にとって、Googleからの訪問者が減少することは広告収入やビジネスの存続に直結する深刻な問題です。多くのオンライン出版社はGoogle検索からの訪問者に大きく依存してきたため、AIモードが自社サービスを優先することで収益源が失われる可能性があります。
短期的な影響については、すでに多くのウェブサイトが訪問者数の減少を報告しています。AIが直接回答を提供し、さらにその引用がGoogle自身のサービスに向けられることで、一般のウェブサイトへのクリック数は大幅に減少しています。中長期的な影響としては、質の高いコンテンツを制作するウェブサイトが収益を得られなくなり、結果としてインターネット全体の情報の質が低下する可能性が考えられます。オーバースタイン氏が「蛇が自分の尾を食べるとき、後に残るものは謎だ」と表現したように、Googleが自社のデータソースである外部ウェブサイトを弱体化させることは、長期的にはGoogle自身にも悪影響を及ぼす可能性があります。
ただし、Googleの長期的な戦略はまだ不透明です。OpenAIなどの一部のAI企業は、チャットボットの結果に表示される著名なウェブサイトに報酬を支払うパートナーシップを出版社と結んでいます。Googleも一部のニュース出版社と契約を結んでいますが、AIオーバービューやAIモードの出力に表示されるサイトに対して報酬を支払っているようには見えません。今後、Googleがどのようなビジネスモデルを構築し、ウェブエコシステム全体とどう共存していくかが注目されます。
