LenovoとMotorolaが2026年1月、複数デバイス間で動作するAIアシスタント「Qira」を発表。スマホやPC、ウェアラブルで同じAIが使える。実際にアプリを操作してタスクを完了する点が特徴。
Lenovo、複数デバイスで使えるAIアシスタント「Qira」発表―実際にアプリ操作も
LenovoとMotorolaは2026年1月10日、新しいAIアシスタント「Qira(キラ)」を発表しました。Qiraは、スマートフォン、パソコン、タブレット、ウェアラブル端末など、LenovoとMotorolaの幅広い製品で使える点が特徴です。従来のChatGPTやGeminiといったAIチャットボットとは異なり、Qiraは実際にアプリを開いて操作し、タスクを最後まで完了させることができます。例えば、デバイス間でファイルを転送したり、Uberを呼んだり、メッセージを送信したりといった作業を、ユーザーに代わって実行します。Lenovoは、Qiraを「使うツール」ではなく「一緒に働く知能」と位置づけています。これは、AIアシスタントが単なる質問応答システムから、実際の作業を代行するエージェントへと進化していることを示す重要な発表です。2026年第1四半期にまずLenovo製品で展開され、その後Motorolaのスマートフォンにも搭載される予定です。
Qiraの主な特徴と機能
Qiraは「パーソナル・アンビエント・インテリジェンス・システム」と呼ばれています。アンビエント・インテリジェンスとは、周囲の状況を理解し、複数のデバイスで利用できる知能のことです。Qiraは、ユーザーが選択した操作履歴、ドキュメント、記憶を複数のデバイスから統合して「融合知識ベース」を構築します。これにより、ユーザーの世界を理解した「生きたモデル」を作り上げます。
この仕組みにより、ユーザーは毎回詳しい説明をしなくても、Qiraが状況を理解してタスクを実行できます。例えば「Next Move」機能は、現在の作業に合わせた提案を行います。「Catch Me Up」機能は、ユーザーが不在だった間に何が起きたかを要約して教えてくれます。デバイスを切り替えても、同じ文脈でAIが動作し続けるため、作業の流れが途切れません。
Lenovoは、プライバシーとユーザーの同意を重視していると強調しています。Qiraは可能な限りデバイス内で処理を行い、個人データをローカルに保存します。クラウドへの送信が必要な場合でも、強固なセキュリティ対策を施した安全なクラウドサービスを使用するとしています。
背景と経緯
この発表は、2026年1月にラスベガスで開催された世界最大の家電見本市CES 2026で行われました。LenovoとMotorolaは、Motorola Razr Foldなどの新しいハードウェアとともに、AI分野での大きな進展を発表しました。
近年、AIアシスタントは急速に進化しています。ChatGPT、Gemini、Copilotなどは、質問に答えたり文章を生成したりすることができますが、実際にアプリを操作してタスクを完了させることはできませんでした。ユーザーは、AIから得た情報をもとに、自分でアプリを開いて操作する必要がありました。Qiraは、この「最後の一歩」を埋めることを目指しています。
Lenovoの「インテリジェント・デバイス・グループ」でAIエコシステム担当副社長を務めるDan Dery氏は、「Lenovo Qiraは単なる別のアシスタントではなく、デバイス全体で知能が現れる新しい方法です」と述べています。「私たちの目標は、AIを使うツールではなく、継続的かつ自然にあなたと一緒に働く知能のように感じさせることです」と説明しました。
技術的な詳細―実際にアプリを操作する仕組み
Qiraの最大の特徴は、実際にアプリを開いて操作し、タスクを完了させる点です。従来のAIアシスタントは、「Uberを呼んでください」と頼むと「Uberアプリを開いて目的地を入力してください」と指示するだけでした。しかしQiraは、実際にUberアプリを起動し、目的地を入力し、支払い方法を選択し、配車リクエストを送信するまでの全工程を自動で行います。
この動作は、ユーザーがスマートフォンの画面を見ていなくても実行されます。ただし、画面を見れば、Qiraがどのように考えて各ステップを実行しているかを確認できます。メッセージ送信の例では、Qiraはメッセージアプリを開き、正しい連絡先を選択し、テキストを入力欄に入力し、送信ボタンを押すという一連の操作を行います。
この技術は「エージェンティックAI」と呼ばれる分野に属します。エージェンティックAIとは、単に情報を提供するだけでなく、実際に行動を起こすAIのことです。人間がコンピュータを操作するように、AIがアプリを操作してタスクを完了させます。
Project Maxwell―AIを搭載したウェアラブルピン
Motorolaの研究開発部門「312 Labs」は、Qiraを搭載したウェアラブルデバイス「Project Maxwell」も発表しました。これは概念実証段階の製品ですが、実際に動作するデモが公開されました。
Project Maxwellは、服に取り付けるピン型のデバイスです。カメラが搭載されており、ユーザーが見ているものをQiraが理解できます。磁石で服に取り付けられ、チェーン付きでネックレスとしても使えます。スマートフォンを取り出さずに、ピンに話しかけるだけで様々なタスクを実行できます。
過去にも「Humane AI Pin」など、AIを搭載したピン型デバイスが発売されましたが、使い勝手の悪さから失敗に終わりました。Project Maxwellは、実際にアプリを操作できるQiraの能力により、より実用的なデバイスになる可能性があります。デモでは、道案内の取得、Uberの配車、メッセージ送信などが、スマートフォンを取り出さずに完了しました。
できること・できないこと
Qiraにより、複数のデバイス間でシームレスにAIアシスタントを使うことが可能になります。例えば、パソコンで作業していた内容をスマートフォンで続けたり、タブレットからパソコンにファイルを転送したりといった操作が、音声指示だけで完了します。オンラインでもオフラインでも動作するため、インターネット接続がない環境でも一部の機能が使えます。
実際のアプリ操作により、配車サービスの呼び出し、メッセージ送信、予定の設定、情報検索など、日常的なタスクを自動化できます。ユーザーは「○○をして」と指示するだけで、Qiraが必要なアプリを開き、適切な操作を行い、タスクを完了させます。Project Maxwellのようなウェアラブルデバイスと組み合わせれば、スマートフォンを取り出す必要もなくなります。
一方で、現時点ではLenovoとMotorolaのデバイスでのみ動作します。他社製のスマートフォンやパソコンでは使えません。また、2026年第1四半期にまずLenovo製品で展開され、Motorola製品への展開はその後になります。すべてのアプリで完全な操作ができるわけではなく、対応アプリは段階的に増えていくと考えられます。Project Maxwellは概念実証段階であり、製品化の時期や価格は未定です。
私たちへの影響
このニュースは、LenovoやMotorolaの製品を使っているユーザー、またはこれから購入を検討している人に大きな影響を与えます。複数のデバイスを使い分けている人にとって、すべてのデバイスで同じAIアシスタントが使えることは大きな利便性向上になります。
短期的な影響については、2026年第1四半期以降、対応するLenovo製品を購入すればQiraを試すことができます。スマートフォン、パソコン、タブレットを同じメーカーで揃えることで、デバイス間の連携がスムーズになります。特に、仕事とプライベートで複数のデバイスを使い分けている人にとって、作業効率が大きく向上する可能性があります。
中長期的な影響としては、AIアシスタントの役割が「質問に答える存在」から「実際に作業を代行する存在」へと変化していくことが予測されます。他のメーカーも同様の機能を開発する可能性が高く、AIアシスタントの競争が新しい段階に入ります。ウェアラブルデバイスとの組み合わせにより、スマートフォンを取り出さずに多くのタスクを完了できる未来が近づいています。
ただし、プライバシーとセキュリティには注意が必要です。Qiraはユーザーの操作履歴やドキュメントを学習するため、どのような情報が収集され、どのように保存されるかを理解しておくことが重要です。Lenovoはプライバシー保護を強調していますが、実際の運用を見極める必要があるでしょう。また、AIが実際にアプリを操作するため、誤操作や意図しない動作が起きる可能性もあります。新しい技術として、慎重に使い始めることをお勧めします。
