MetaがAI会話記録ペンダント開発のLimitlessを買収、ウェアラブルAI強化へ

MetaがAIスタートアップLimitlessを2025年12月5日に買収。会話を記録するAIペンダント開発企業で、今後はMetaのウェアラブル製品開発に参画。AI機器市場の競争激化が背景に。

MetaがAI会話記録ペンダント開発のLimitlessを買収、ウェアラブルAI強化へ

2025年12月5日、Meta社は、AI搭載ペンダントを開発するスタートアップ企業Limitlessを買収したと発表しました。Limitlessは、会話を自動で記録し、後から検索できるようにするAIペンダントを99ドルで販売していた企業です。同社は以前「Rewind」という名前で、パソコンの操作履歴を記録するソフトウェアも提供していました。今回の買収により、Limitlessのチームは、MetaのReality Labs部門でウェアラブル製品の開発に携わることになります。Limitlessは、OpenAIやMetaなどの大手企業がAI機器市場に参入したことで、独立企業として競争することが難しくなったと説明しています。この買収は、Metaが現在力を入れているRay-Ban MetaやOakley Metaなどのスマートグラスに、さらに高度なAI機能を追加する取り組みの一環と見られます。AI機器市場では、大手テック企業による小規模スタートアップの統合が進んでいることを示す事例となりました。

Limitlessとはどんな企業か

Limitlessは、Brett BejcekとDan Sirokerによって5年前に設立されたスタートアップ企業です。Dan Sirokerは、マーケティング最適化ツールOptimizelyの共同創業者で元CEOとして知られる人物です。同社は当初「Rewind」という名前で、パソコンの画面操作をすべて記録し、後から検索できるようにするソフトウェアを開発していました。これは、過去に見たウェブページや作業内容を忘れても、キーワードで検索して見つけられる仕組みです。

2024年、同社は方向性を大きく転換し、ハードウェア製品の開発に乗り出しました。その結果生まれたのが、99ドルで販売されたLimitlessペンダントです。このペンダントは、シャツに取り付けるワイヤレスマイクのように装着したり、ネックレスのように首から下げたりして使用できます。装着している間の会話を自動的に記録し、AI技術を使って後から内容を検索したり要約したりできる製品でした。

同社はこれまでに、a16z、First Round Capital、NEAなどの著名な投資家から3,300万ドル以上の資金を調達していました。しかし、AI機器市場に大手企業が次々と参入する中で、独立企業として事業を継続することが困難になったと判断したようです。

買収後のサービスと製品の扱い

今回の買収に伴い、Limitlessは既存製品とサービスの提供を大きく変更します。まず、Limitlessペンダントの販売は即座に終了されました。新規の顧客は製品を購入できなくなります。

既存の顧客に対しては、1年間のサポートが継続されます。これまで有料のサブスクリプションプランを利用していた顧客は、料金を支払う必要がなくなり、当面の間は無制限プランに移行されます。つまり、既に製品を持っている人は、追加費用なしで引き続き使用できるということです。

一方、パソコンの操作履歴を記録する「Rewind」ソフトウェアは、段階的に終了されます。このソフトウェアは、デスクトップでの作業内容をすべて記録し、検索可能にする機能を提供していましたが、今後は利用できなくなります。

顧客のデータについては、2つの選択肢が用意されています。アプリ内からデータをエクスポートして自分で保存するか、完全に削除するかを選べます。これにより、プライバシーを重視する顧客も安心して対応できる仕組みになっています。

AI機器市場の競争激化

Limitlessの創業者Dan Sirokerは、買収発表の中で、市場環境の大きな変化について言及しています。5年前に会社を設立した当時、AIは多くの人にとって夢物語でした。ハードウェアスタートアップは資金調達が難しいと考えられており、AIとハードウェアの両方を手がける企業は非現実的だと見なされていたのです。

しかし現在、状況は一変しました。AIは実用的な技術として広く認知され、多くの企業がAI機器の開発に乗り出しています。特に、OpenAIやMetaのような資金力のある大手企業が、独自のハードウェア製品を開発し始めたことが、小規模スタートアップにとって大きな脅威となりました。

AI機器市場には、Limitless以外にも様々な製品が登場しています。例えば、「Friend」という名前の別のAIペンダントも販売されていますが、こちらはあまり好意的な評価を受けていません。このように、市場には多くの競合製品が存在し、差別化が難しくなっているのが現状です。

Sirokerは「私たちはもはや、奇妙な周辺的なアイデアに取り組んでいるわけではありません。今や避けられないと思われる未来を構築しているのです。私たちは一人ではありません」と述べ、AI機器の普及が必然的な流れであることを認めています。

Metaのウェアラブル戦略

Metaは現在、AR技術とAI技術を組み合わせたスマートグラスに力を入れています。同社は、Ray-Banブランドとコラボレーションした「Ray-Ban Meta」や、Oakleyブランドの「Oakley Meta」といった製品を既に市場に投入しています。これらは、普通の眼鏡のように見えながら、カメラやマイク、スピーカーを内蔵し、AI機能を利用できる製品です。

さらに、Metaは「Meta Ray-Ban Display」という、レンズ内にディスプレイを搭載したAIグラスも開発しています。これは、視界に情報を表示できる、より高度なAR機能を持つ製品です。

今回のLimitless買収について、MetaはTechCrunchに対して「Limitlessがチームに加わり、AI搭載ウェアラブルの開発を加速できることを嬉しく思います」とコメントしています。Limitlessのチームは、MetaのReality Labs部門のウェアラブル組織で働くことになります。Reality Labsは、Metaの中でVR、AR、ウェアラブル技術の研究開発を担当する部門です。

Limitlessは、Metaの「すべての人にパーソナル超知能をもたらす」というビジョンに共感していると述べています。パーソナル超知能とは、個人の生活や仕事を支援する高度なAIアシスタントのことを指します。ただし、今回の買収により、Limitlessが独自のペンダント製品をMetaのラインナップに追加する可能性は低く、むしろ既存のスマートグラス製品の機能向上に貢献すると見られています。

できること・できないこと

この買収により、Metaは会話記録とAI分析の技術を獲得することになります。Limitlessが開発してきた、音声を自動的に記録し、後から検索可能にする技術や、会話の内容を要約する機能は、Metaのスマートグラスに統合される可能性があります。例えば、Ray-Ban Metaを装着して会議に参加すると、会話内容が自動的に記録され、後で「予算について話した部分」を検索して見つけられるようになるかもしれません。また、長い会議の内容を数行に要約してくれる機能も考えられます。

一方で、Limitlessペンダントそのものが今後Metaから発売される可能性は低いでしょう。Metaは眼鏡型のウェアラブルに注力しており、ペンダント型の製品は同社の戦略に合わないと考えられます。また、買収されたチームがどの程度の自由度を持って新製品を開発できるかは不明です。大企業に統合されることで、スタートアップ時代のような迅速な意思決定や実験的な取り組みは難しくなる可能性があります。

技術の実用化には時間がかかることも予想されます。Limitlessの技術をMetaの既存製品に統合し、プライバシーやセキュリティの問題をクリアし、大規模に展開できるようにするには、少なくとも数ヶ月から1年以上かかるでしょう。すぐに新機能が利用できるようになるわけではありません。

私たちへの影響

このニュースは、AI機器に興味を持つ消費者や、ウェアラブル技術の動向を追っている人々に影響を与えます。まず、Limitlessペンダントを購入しようと考えていた人は、もはや製品を入手できなくなりました。AI会話記録機能に興味がある場合は、他の製品を探すか、Metaのスマートグラスに同様の機能が追加されるのを待つことになります。

既にLimitlessペンダントを所有している人は、1年間は引き続き使用できますが、その後のサポートは保証されていません。データのエクスポートや削除の選択肢が用意されているため、早めに対応を検討する必要があります。

中長期的には、Metaのスマートグラスがより高度な会話記録・分析機能を持つようになる可能性があります。これにより、会議の議事録作成が自動化されたり、日常会話から重要な情報を抽出したりすることが容易になるかもしれません。ビジネスパーソンや学生にとって、情報管理の方法が大きく変わる可能性があります。

ただし、プライバシーの懸念も高まるでしょう。常に会話を記録するデバイスが普及すれば、周囲の人々の同意なく録音されるリスクが増えます。また、記録されたデータがどのように保管され、誰がアクセスできるのかという問題も重要です。Metaは過去にプライバシー問題で批判を受けたこともあり、この技術の実装には慎重な配慮が必要になるでしょう。今後、法規制や社会的なルール作りが進むことも予想されます。

出典:Meta acquires AI device startup Limitless(techcrunch.com)

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