OpenAI、企業向けChatGPT利用が前年比8倍に成長と発表―Google対抗で企業市場を強化

OpenAIが2025年12月8日、企業向けChatGPTの利用が前年比8倍に成長したと発表。従業員は1日最大1時間の時間節約を報告。GoogleやAnthropicとの競争激化の中、企業市場での地位確立を目指す。

OpenAI、企業向けChatGPT利用が前年比8倍に成長と発表―Google対抗で企業市場を強化

OpenAIは2025年12月8日(月曜日)、企業向けAIツールの利用状況に関する新しいデータを公開しました。それによると、ChatGPTのメッセージ量は2024年11月と比べて8倍に増加し、従業員は1日あたり最大1時間の時間を節約していると報告しています。この発表は、サム・アルトマンCEOがGoogleの競争脅威について社内に「コードレッド」(緊急警告)のメモを送った1週間後に行われました。

OpenAIは現在、米国企業の約36%がChatGPT Enterpriseの顧客となっており、競合のAnthropicの14.3%を大きく上回っています。しかし、OpenAIの収益の大部分は依然として個人向けサブスクリプションから来ており、この分野ではGoogleのGeminiが脅威となっています。

このタイミングでの発表は、OpenAIが企業向けAI市場のリーダーとしての地位を再確認しようとする動きを示しています。同社は今後数年間で1.4兆ドル(約210兆円)のインフラ投資を約束しており、企業市場での成長が事業モデルにとって不可欠となっています。

企業利用の急成長と具体的な数値

OpenAIが公開したデータによると、企業でのChatGPT利用は単にメッセージ数が増えただけではありません。企業がOpenAIのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース、つまり開発者向けの接続口)を通じて消費する「推論トークン」は、1年前と比べて320倍に増加しています。

推論トークンとは、AIが複雑な問題を解決する際に使用する計算単位のことです。この数値の急増は、企業がより高度な問題解決にAIを活用していることを示唆しています。ただし、新技術を試験的に大量使用しているだけで、長期的な価値を得られていない可能性もあります。

また、カスタムGPTの利用も19倍に増加しました。カスタムGPTとは、企業が自社の知識やノウハウをAIアシスタントに組み込んだり、業務フローを自動化したりするための機能です。現在、企業メッセージの20%がカスタムGPTを通じて行われています。例えば、デジタル銀行のBBVAは4,000以上のカスタムGPTを定期的に使用していると報告されています。

背景と経緯

この発表の背景には、AI市場での激しい競争があります。サム・アルトマンCEOは先週、Googleの競争脅威について社内に緊急警告を発しました。Googleは自社のAIサービス「Gemini」を通じて、OpenAIの個人向け顧客基盤を脅かしています。

一方、企業向け市場ではAnthropicが強力な競合相手となっています。Anthropicの収益は主に企業向け販売から来ており、OpenAIとは異なる収益構造を持っています。さらに、オープンウェイトモデル(誰でも自由に使えるAIモデル)を提供する企業も増えており、企業顧客の選択肢は広がっています。

OpenAIは今後数年間で1.4兆ドルのインフラ投資を約束しています。この巨額の投資を回収するには、企業市場での成長が不可欠です。個人向けサブスクリプションだけでは、この投資を正当化することは困難だからです。

技術的な詳細と利用実態

OpenAIのブラッド・ライトキャップ最高執行責任者は、企業がこの技術をカスタマイズして自社のニーズに合わせている様子を強調しました。従業員は単にChatGPTに質問するだけでなく、自社の業務プロセスに深く統合しています。

調査によると、従業員の4分の3が、AIによって以前はできなかった技術的なタスクを含む作業ができるようになったと回答しています。特に注目すべきは、エンジニアリング、IT、研究チーム以外でのコーディング関連メッセージが36%増加したことです。これは、非技術者がAIを使ってプログラミングを行う「市民開発者」が増えていることを示しています。

ただし、推論トークンの大幅な増加は、エネルギー消費の増加と直結します。これは企業にとってコスト面で持続可能かどうかという疑問を生じさせます。TechCrunchはOpenAIに対し、企業のAI予算配分とこの成長率の持続可能性について質問していますが、まだ回答は得られていません。

できること・できないこと

この技術により、従業員は1日あたり40分から60分の時間を節約できると報告されています。例えば、文書作成、データ分析、コーディングなどの作業が大幅に効率化されます。カスタムGPTを使えば、社内の専門知識をAIに組み込み、新入社員のトレーニングや顧客対応の自動化も可能になります。

一方で、報告された時間節約には、システムを学習する時間、適切な指示(プロンプト)を作成する時間、AIの出力を修正する時間は含まれていない可能性があります。実際の効率化は、これらの追加作業を考慮するとやや控えめになるかもしれません。

また、非技術者によるコーディングの増加は、セキュリティの脆弱性やバグの増加につながる可能性があります。ライトキャップ氏は、OpenAIが最近リリースした「Aardvark」というセキュリティ研究ツール(現在は非公開ベータ版)が、こうした問題の検出に役立つ可能性があると指摘しました。

興味深いことに、最も活発なChatGPT Enterpriseユーザーでさえ、データ分析、推論、検索といった最も高度な機能を使いこなせていません。ライトキャップ氏は、AIシステムを完全に採用するには考え方の転換と企業データやプロセスとのより深い統合が必要だと説明しました。高度な機能の採用には時間がかかるでしょう。

私たちへの影響

このニュースは、企業で働くすべての人々に影響を与えます。AI導入が進む企業では、従業員の役割や求められるスキルが変化していくでしょう。

短期的な影響については、AI活用に積極的な「先進的な労働者」と、あまり使わない「遅れた労働者」の間で格差が広がっています。報告書では、先進的な労働者はより多くのツールをより頻繁に使い、より多くの時間を節約していることが示されています。ライトキャップ氏とチャタージー氏(OpenAIのチーフエコノミスト)は、これを遅れた労働者が追いつく機会だと前向きに捉えています。

中長期的な影響としては、企業のAI導入方法が二極化する可能性があります。一部の企業はAIを単なるソフトウェアとして扱い、従業員に配布するだけで終わります。一方、先進的な企業はAIをオペレーティングシステムのように扱い、会社の業務全体を再構築していくでしょう。後者のアプローチを取る企業で働く従業員は、より大きな生産性向上の恩恵を受けられます。

ただし、AIシステムに自分の仕事を学習させている労働者にとって、「追いつく」という言葉は「カウントダウン」のように感じられるかもしれません。AIが人間の仕事をどこまで代替するのか、そして労働者がどのように新しい役割に適応していくのかは、今後の重要な課題となるでしょう。

出典:OpenAI boasts enterprise win days after internal ‘code red’ on Google threat(techcrunch.com)

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