OpenAI、Anthropic、Blockが連携、AIエージェントの標準規格団体を設立

OpenAI、Anthropic、Blockの3社が2025年、AI エージェントの標準規格を推進する新団体を設立。異なる企業のAIが相互に連携できる仕組みを整備。ビジネスや日常生活でのAI活用が加速する見込み。

OpenAI、Anthropic、Blockが連携、AIエージェントの標準規格団体を設立

2025年、アメリカの大手AI企業であるOpenAI、Anthropic、Blockの3社が、AIエージェントの標準規格を推進する新しい組織「Agentic AI Foundation(AAIF)」を共同で設立しました。AIエージェントとは、ユーザーに代わって自動的に作業を行うAIプログラムのことです。例えば、旅行の予約や商品の購入、ビジネスでの顧客対応などを自動で処理します。この新団体は、異なる企業が開発したAIエージェント同士が円滑に連携できるよう、共通のルールや仕組みを整備することを目指しています。現在、各社が独自の方式でAIエージェントを開発しているため、相互の連携が難しい状況です。標準規格が確立されれば、まるでスマートフォンのアプリが異なるメーカーの端末でも動作するように、AIエージェントも企業の垣根を越えて協力できるようになります。この取り組みは、AI技術が対話型から行動型へと移行する中で、ビジネスや日常生活におけるAI活用を大きく加速させる可能性があります。

新団体の設立と参加企業

Agentic AI Foundationは、広く使われているオープンソースのLinuxオペレーティングシステムを管理するLinux Foundationの傘下に設立されました。Linux Foundationは、技術的・法的な支援を提供し、オープンソースプロジェクトの中立的な運営を支える組織です。創設メンバーの3社に加えて、Google、Microsoft、AWS、Bloomberg、Cloudflareなどの大手企業も参加を表明しています。これらの企業が協力することで、業界全体で統一された標準規格の策定が進むと期待されています。

3社は、すでに広く利用されている自社の技術を新団体に移管しました。Anthropicは「Model Context Protocol(MCP)」を提供します。これは、AIエージェント同士が情報をやり取りし、連携するための通信規格です。OpenAIは「Agents.md」を移管しました。これは、ウェブサイトやプログラムがAIエージェントに対して動作ルールを指定できる仕組みです。Blockは「Goose」というAIエージェント開発フレームワークを提供します。これらの技術はすでに無料で利用可能でしたが、新団体の管理下に置かれることで、より多くの開発者が改良に参加できるようになります。

背景と経緯

AI技術は現在、大きな転換期を迎えています。これまでのAIは、ユーザーが質問すると答えを返す「対話型」が主流でした。ChatGPTのようなチャットボットがその代表例です。しかし、最近では「行動型」のAIエージェントへの移行が進んでいます。行動型AIは、単に答えるだけでなく、実際にウェブサイトにアクセスしたり、予約を完了したり、他のAIと交渉したりといった具体的な作業を実行します。

この変化により、新たなビジネスチャンスが生まれています。消費者は、AIアシスタントに旅行の手配や商品購入を任せられるようになります。企業は、AIエージェントを使って取引処理や顧客対応を自動化できます。OpenAIの法人向けアプリケーション担当最高技術責任者であるスリニバス・ナラヤナン氏は、「将来、大量のAIエージェントが日常的にビジネスの場で互いに通信し合う時代が来る」と予測しています。そのような未来を実現するには、異なる企業のAIが共通の言語で話せることが不可欠です。

OpenAIのニック・クーパー氏は、「MCPは多くの企業で使われていますが、使っていない企業もあります」と指摘します。標準規格として確立されれば、より多くの開発者や企業が採用し、AIエージェントを統合したシステムを構築しやすくなります。「オープンな相互運用性、つまりオープンな標準規格があれば、企業は異なるプロバイダー間、異なるAIシステム間で通信できるようになります」とクーパー氏は説明します。

オープン性をめぐる戦略的な意味

AI業界において、技術をオープンにするかクローズドにするかは、現在重要な戦略的判断となっています。アメリカ企業の多くは、強力なAIモデルへのアクセスをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)経由で提供し、収益を得ています。APIとは、プログラム同士が情報をやり取りするための窓口のことです。一方、Metaは以前、自社の最高性能モデル「Llama」の重み(モデルの内部パラメータ)を公開し、誰でもダウンロードして実行できるようにしていました。ただし、最近では方針を転換し、よりクローズドなアプローチに移行しつつあります。

対照的に、中国のAI企業は積極的にオープンソース戦略を採用しています。DeepSeek、Alibaba、Moonshot AI、Z.aiなどの企業は、高性能なオープンソースモデルを提供し、開発者やスタートアップ、AI研究者の間で人気を集めています。一部の専門家は、この状況が長期的に中国企業に大きな戦略的優位性をもたらす可能性があると懸念しています。オープンソースモデルは、世界中の開発者が自由に改良できるため、技術の進化が加速し、グローバルな影響力が拡大する可能性があるからです。

OpenAIも、いくつかのオープンソース活動を展開しています。「gpt-oss」というモデルや、コマンドラインインターフェース用のソフトウェア「Codex CLI」などを公開しています。今回の標準規格団体の設立も、こうしたオープン戦略の一環と位置づけられます。

できること・できないこと

この標準規格により、異なる企業が開発したAIエージェント同士が円滑に連携できるようになります。例えば、ある企業のAIアシスタントが旅行を計画する際、別の企業のAIエージェントが管理するホテル予約システムと自動的に交渉し、最適な部屋を確保するといった使い方が可能になります。ビジネスの場面では、顧客からの問い合わせを受けたAIエージェントが、在庫管理システムのAIと連携して即座に納期を回答し、そのまま注文処理まで完了させることもできるでしょう。

一方で、この標準規格はまだ初期段階にあります。実際に広く普及し、多様なAIエージェントが問題なく連携できるようになるには、時間がかかるでしょう。また、標準規格自体は技術的に中立ですが、OpenAI、Anthropic、Blockのモデルを使用することを義務付けるものではありません。しかし、これらの企業が主導する規格が世界的に支配的になれば、アメリカ企業に相当な影響力をもたらす可能性があります。インターネットの標準規格を管理するICANNやW3Cがウェブの進化を形作ってきたように、この新団体も世界中でAIがどのように使われるかを決定する力を持つかもしれません。

私たちへの影響

このニュースは、AI技術を利用する企業や開発者、そして一般消費者に幅広い影響を与えます。企業にとっては、異なるベンダーのAIツールを組み合わせて使いやすくなるため、システム構築の柔軟性が高まります。開発者は、標準規格に準拠したAIエージェントを開発すれば、より広い市場で自分の製品を展開できるようになります。

短期的な影響については、まず開発者コミュニティでの採用が進むでしょう。Blockのオープンソース責任者であるマニク・スルタニ氏によれば、同社のGooseエージェントは過去1年で人気が急上昇しました。新団体への移管により、より多くの開発者がコードベースに貢献し、その上に新しいアプリケーションを構築できるようになります。中長期的な影響としては、AIエージェントが日常生活やビジネスに深く浸透し、多くの作業が自動化される未来が考えられます。旅行の手配、買い物、顧客サービス、事務処理など、さまざまな場面でAIエージェントが活躍するようになるでしょう。

ただし、注意すべき点もあります。標準規格が特定の企業グループによって主導されることで、市場の競争が制限される可能性があります。また、AIエージェント同士が自動的に取引や交渉を行う世界では、透明性やセキュリティ、プライバシー保護の仕組みが重要になります。Linux Foundationのエグゼクティブディレクターであるジム・ゼムリン氏は声明で、「MCP、Agents.md、Gooseは、この新しいクラスのエージェント技術を構築する開発者にとって不可欠なツールとなっています。AAIFの下でこれらのプロジェクトをまとめることで、オープンガバナンスが提供する透明性と安定性をもって成長できることが保証されます」と述べています。

出典:OpenAI, Anthropic, and Block Are Teaming Up to Make AI Agents Play Nice(www.wired.com)

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