Wi-Fiの不安定さを解消、既存のケーブル配線で有線ネットワークを実現する方法

既存の同軸ケーブルを使って有線ネットワークを構築する方法が注目されています。MoCA技術により、壁に穴を開けずに高速通信が可能に。工事不要で低コストな解決策として期待されています。

Wi-Fiの不安定さを解消、既存のケーブル配線で有線ネットワークを実現する方法

2025年12月、米国の技術メディアZDNETが、家庭やオフィスで有線ネットワークを簡単に構築する方法を紹介しました。この方法では、既に壁に設置されているテレビ用の同軸ケーブル配線を活用します。新たにイーサネットケーブルを這わせる必要がなく、壁に穴を開ける工事も不要です。

使用するのはMoCA(Multimedia over Coax Alliance)という技術です。これは、テレビ用の同軸ケーブルでインターネット信号を伝送する仕組みです。最新のMoCA 2.5規格では、最大2.5Gbpsの速度に対応しています。この速度は、一般的な光回線の速度と同等です。

Wi-Fiは便利ですが、ビデオ会議中に接続が途切れたり、大容量ファイルの転送に時間がかかったりする問題があります。特に在宅勤務が増えた現在、安定した通信環境の重要性が高まっています。有線接続は、Wi-Fiと比べて速度が安定し、遅延も少なくなります。

この技術を使えば、賃貸住宅でも大規模な工事なしに有線ネットワークを構築できます。必要なのは、各部屋のケーブル端子に接続する小型のアダプターだけです。設置費用も、新規にイーサネット配線を行う場合の数分の一で済みます。

MoCA技術の仕組みと必要な機器

MoCAアダプターは、同軸ケーブルとイーサネットケーブルを相互に変換する装置です。本体には2つの接続端子があります。一方は同軸ケーブル用、もう一方はイーサネットケーブル用のRJ45端子です。

設置方法は簡単です。まず、壁のケーブル端子とMoCAアダプターを短い同軸ケーブルで接続します。次に、アダプターのイーサネット端子とパソコンやルーターをイーサネットケーブルで繋ぎます。これだけで、既存のケーブル配線が高速ネットワーク回線として機能し始めます。

記事で紹介されているTrendnet TMO-312C MoCA 2.5アダプターは、1台あたり約100ドル程度です。ルーター側に1台、使用したい部屋に1台ずつ設置します。複数の部屋で有線接続が必要な場合は、それぞれの部屋にアダプターを追加すれば対応できます。

ケーブルモデムの中には、MoCA機能を内蔵している製品もあります。その場合、ルーター側のアダプターは不要です。光回線など、ケーブル以外でインターネットに接続している場合でも、ルーター側にMoCAアダプターを1台追加すれば同じように利用できます。

既存のケーブル配線が使える理由

多くの住宅には、各部屋にテレビを設置できるよう同軸ケーブルが配線されています。これらのケーブルは、もともとテレビ信号を伝送するために設置されました。しかし、同軸ケーブルの伝送能力は、テレビ信号だけに限定されません。

同軸ケーブルは、高周波信号を効率よく伝送できる構造になっています。HDTV(高精細テレビ)の信号を問題なく伝送できるケーブルであれば、インターネット信号も十分に伝送可能です。記事の執筆者は、20年以上前に設置された古いケーブルでも、100フィート(約30メートル)以上の距離で1Gbpsの速度を安定して実現できたと報告しています。

ただし、極端に古い住宅で、ケーブルの劣化が激しい場合は注意が必要です。ケーブルの品質によっては、期待した速度が出ない可能性もあります。しかし、現在HDTVを視聴できている環境であれば、ほとんどの場合問題なく使用できるでしょう。

この方法の最大の利点は、既存の設備を活用できることです。新たに壁や天井に穴を開ける必要がなく、賃貸住宅でも実施できます。工事業者を呼ぶ必要もないため、費用を大幅に抑えられます。

設置時の注意点と推奨される追加機器

MoCAネットワークを設置する際、セキュリティと性能向上のために推奨される機器があります。それがPOE(Point of Entry)フィルターです。これは、建物にケーブルが引き込まれる地点に取り付ける小型の装置です。

POEフィルターには2つの重要な役割があります。第一に、ネットワーク信号が建物の外に漏れるのを防ぎます。これにより、近隣の住宅から自宅のネットワークにアクセスされるリスクを減らせます。第二に、1GHz以上の高周波信号を建物内に反射させることで、通信性能を向上させます。

記事で紹介されているBelden製のPOEフィルターは、約10ドルと低価格です。取り付けは簡単で、ケーブルモデムの前段階、建物への引き込み部分のケーブルにねじ込むだけです。専門知識がなくても、数分で設置できます。

複数の部屋でMoCAを使用する場合、ケーブル分配器が必要になることもあります。これは、1本のケーブル信号を複数の経路に分ける装置です。ただし、多くの住宅では既に分配器が設置されているため、追加購入が不要な場合もあります。

この技術でできること・できないこと

MoCA技術により、Wi-Fiが届きにくい場所でも安定した高速インターネット接続が可能になります。例えば、ルーターから離れた書斎や寝室、地下室や屋根裏部屋などです。厚い壁や複数の階層で隔てられた場所でも、ケーブル配線さえあれば問題ありません。

具体的な使用例として、在宅勤務用のデスクトップパソコンへの接続があります。ビデオ会議や大容量ファイルの送受信が頻繁にある場合、有線接続の安定性は大きなメリットです。また、4Kや8Kの高画質ストリーミングを楽しむスマートテレビの接続にも適しています。

さらに、Wi-Fiアクセスポイントの増設にも活用できます。MoCAアダプターにWi-Fiルーターを接続すれば、電波の届きにくい場所に新たなWi-Fiエリアを作れます。これは、メッシュWi-Fiシステムの代替手段としても有効です。

一方で、制約もあります。最も重要なのは、建物内にケーブル配線が存在しない場合は使用できないことです。また、ケーブルテレビサービスを利用している場合、テレビ信号とネットワーク信号が干渉しないよう、適切な周波数帯の設定が必要になることがあります。さらに、非常に古い建物で、ケーブルの品質が著しく劣化している場合は、期待した速度が出ない可能性もあります。

私たちへの影響

このニュースは、在宅勤務者や賃貸住宅に住む人々に大きな選択肢を提供します。これまで、安定したインターネット環境を求めて引っ越しを検討していた人も、既存の住居で問題を解決できる可能性があります。

短期的な影響としては、Wi-Fiの不安定さに悩んでいた人が、比較的低コストで有線ネットワークを構築できるようになります。MoCAアダプターは1台100ドル程度で、2台購入しても200ドル程度です。これは、専門業者にイーサネット配線工事を依頼する場合の費用(数千ドル)と比べて、大幅に安価です。

中長期的には、住宅の価値評価にも影響する可能性があります。既存のケーブル配線が、高速ネットワークインフラとして再評価されるでしょう。また、賃貸物件のオーナーにとっても、大規模な工事なしに物件の付加価値を高める手段となります。

ただし、注意点もあります。MoCA技術は便利ですが、すべての状況で最適な解決策とは限りません。新築住宅や大規模リフォームを計画している場合は、最初からイーサネット配線を設計に組み込む方が長期的には有利です。また、ケーブル配線の状態によっては、期待した性能が得られないこともあるため、購入前に返品ポリシーを確認しておくことをお勧めします。

出典:Bye bye, Wi-Fi: How to add a wired network to your home without running Ethernet(www.zdnet.com)

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