デルが明かすAI PC販売不振の実態、マイクロソフトのCopilot戦略に暗雲

デルがCES 2026で、AI PC(Copilot PC)の販売不振を明言。消費者はAI機能に混乱し購入に至らず。マイクロソフトのCEOが製品改善に直接関与する事態に。PC業界は従来型の販売戦略への回帰を迫られています。

デルが明かすAI PC販売不振の実態、マイクロソフトのCopilot戦略に暗雲

2026年1月、世界最大級のPC製造企業であるデルが、CES 2026の記者会見で衝撃的な発表を行いました。同社の副会長兼最高執行責任者ジェフ・クラーク氏は、AI機能を搭載したPC(AI PC)について「AIの約束は満たされていない」と述べ、消費者の需要が期待を大きく下回っていることを認めました。デルの製品責任者ケビン・ターウィリガー氏も「消費者はAIに基づいて購入していない。むしろAIは消費者を混乱させている」と明言しています。

この発言は、マイクロソフトが推進するCopilot PC戦略に対する重大な警鐘です。マイクロソフトは、Windows 11をAI搭載の「エージェント型OS」に変革し、古いWindows 10ノートパソコンをCopilot PCに置き換えることを強く推奨してきました。しかし、実際の市場では、消費者はこのAI機能の価値を理解できず、購入動機にもなっていないのが現状です。この状況を受けて、マイクロソフトのCEOサティア・ナデラ氏自身が製品改善に直接関与し、バグや欠点を指摘するメールを製品チームに送るなど、異例の対応を取っています。

デルが明かした販売不振の実態

CES 2026の記者会見で、デルの経営陣は率直に現状を語りました。ジェフ・クラーク副会長は冒頭の挨拶で「AIがエンドユーザーの需要を促進するという期待があったが、1年前に思っていたようにはなっていない」と述べました。これは、2025年にAI PCが市場を牽引すると予測していた同社の期待が裏切られたことを意味します。

さらに製品責任者のケビン・ターウィリガー氏は、2026年のPC製品ラインナップのメッセージングが「AIファースト」ではないことを強調しました。これは1年前の戦略からの大きな転換です。同氏は「1年前はAI PCが全てだったが、この1年で学んだことは、特に消費者の観点から、彼らはAIに基づいて購入していないということだ。実際、AIは特定の成果を理解する助けになるどころか、むしろ混乱させている」と説明しています。

この発言は、WindowsやCopilotという名前を直接挙げてはいませんが、マイクロソフトのAI製品を指していることは明白です。家庭ユーザーにとって明確な利点を提供できておらず、ChatGPTからのシェア獲得にも苦戦しているのが実情です。

背景と経緯

マイクロソフトは2024年から2025年にかけて、AI機能を搭載したCopilot PCを大々的に推進してきました。Windows 11にCopilot機能を統合し、新しいAI PCには専用のニューラルプロセッシングユニット(NPU)とは、AI処理を高速化するための専用チップのことです。例えば、画像認識や音声処理などをCPUやGPUよりも効率的に実行できます)を搭載することを要求しました。

同社のCEOサティア・ナデラ氏は、モバイルデバイスやタブレットへのプラットフォームシフトで失敗した経験から、AI時代の重要なプラットフォームシフトでは失敗を避けたいと強く考えています。そのため、Windows PCをAI時代の中心的なデバイスとして位置づける戦略を推進してきました。

しかし、市場の反応は期待外れでした。The Informationの最近の報道によると、ナデラ氏は過去数カ月間、マイクロソフトで「最も影響力のある製品マネージャー」となり、消費者向けCopilotアプリに関する製品グループに直接フィードバックを送っています。彼は、Copilotが競合のGemini(Googleの製品)に遅れをとっているという認識を強く意識しており、チャットボットで気づいたバグや欠点について直接メールを送っているとのことです。

マイクロソフトの課題

マイクロソフトには、未完成の製品を出荷し、市場の反応を見ながらゆっくりと改善していくという評判があります。この手法は新しいカテゴリーのスタートアップには有効かもしれませんが、マイクロソフトのような大企業には失敗のレシピとなります。顧客は未完成の製品を試して否定的な印象を持ち、その否定的な口コミは製品の欠陥が修正されても広がり続けます。結果として、マイクロソフトの評判はさらに傷つくのです。

さらに、マイクロソフトの真の収益源は消費者ではなく、一度に10万ライセンス単位で購入する企業顧客です。企業では、IT部門がエコシステムを管理し、インストールするソフトウェアを義務付けることができます。しかし、そこでも企業顧客が、実際には存在しない利点のために月額20ドルをユーザーあたり追加で支払う必要はないと判断するシナリオは容易に想像できます。

AI PCの現状と将来

技術的には、主要なPC製造企業が今年出荷する新しいPCはすべてAI PCとなります。これらには、Qualcomm Snapdragon Xプロセッサ、または新しいIntel Core Ultra Series 3やAMD Ryzen AI CPUが搭載されています。これらのプロセッサには強力なNPUが組み込まれており、将来的にAI処理が必要になったときに活用できます。

つまり、今AI PCを購入する顧客は、将来に備えた投資をしていることになります。1年後、2年後、あるいは3年後には、これらのマシンに搭載された強力なNPUが本領を発揮できるワークロードが登場するかもしれません。しかし、現時点ではその時期は来ていません。

できること・できないこと

現在のAI PC(Copilot PC)では、理論上はAIアシスタント機能を使って文章作成の支援を受けたり、画像生成を行ったりすることができます。例えば、メールの下書きを作成したり、プレゼンテーション資料のアイデアを出したりする使い方が想定されています。また、NPUを活用した画像処理や音声認識も可能です。

しかし、実際には多くの制約があります。まず、これらの機能の多くはChatGPTやGoogle Geminiなどのウェブサービスでも利用でき、高価な新しいPCを購入する必要性が感じられません。また、Copilotの機能は競合製品と比較して遅れており、消費者にとって明確な利点が見えにくい状況です。企業向けの有料版(月額20ドル)についても、その価値に見合うだけの機能が提供されているかは疑問です。

将来的には、より高度なAI機能が開発され、NPUの性能を活かせるアプリケーションが登場する可能性はあります。しかし、それがいつになるかは不透明であり、現時点では「将来への投資」という位置づけにとどまっています。

私たちへの影響

このニュースは、新しいPCの購入を検討している消費者や企業に重要な示唆を与えます。現時点では、AI機能を主な理由として高価なAI PCを購入する必要性は低いと言えるでしょう。

短期的には、PC購入の判断基準を従来通りの要素、つまりプロセッサの性能、メモリ容量、ストレージ、画面品質、バッテリー寿命などに置くことが賢明です。AI機能は「おまけ」として考え、将来的に役立つかもしれない程度の認識で十分でしょう。企業のIT部門も、Copilotの有料版への投資については、実際の業務での有用性を慎重に評価する必要があります。

中長期的には、マイクロソフトがCopilotの機能を大幅に改善し、真に価値のあるAI体験を提供できるようになる可能性はあります。CEOが直接関与して製品改善に取り組んでいることは、同社の本気度を示しています。しかし、それが実現するまでには時間がかかるでしょう。

ただし、新しいPCを購入する際には、NPU搭載のプロセッサを選んでおくことで、将来的にAI機能が充実したときに対応できるという利点はあります。価格差が小さければ、将来への備えとして検討する価値はあるでしょう。

出典:AI PCs aren’t selling, and Microsoft’s PC partners are scrambling(www.zdnet.com)

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