マスク氏のxAI、創業メンバー9人退社で組織再構築 AIコーディングツール開発を仕切り直し

イーロン・マスク氏のxAIが2026年3月、創業メンバー11人中9人が退社し組織を再構築中。AIコーディングツールの競争力不足が課題で、Cursor社から2人の幹部を採用。年半ばまでの巻き返しを目指す。

マスク氏のxAI、創業メンバー9人退社で組織再構築 AIコーディングツール開発を仕切り直し

イーロン・マスク氏が率いるAI研究所xAIが、2026年3月13日に大規模な組織再編を進めていることが明らかになりました。3年前の創業時に参加した共同創業者11人のうち、現在残っているのはわずか2人です。マスク氏は自身のSNS「X」で「xAIは最初から正しく構築されていなかったため、基礎から再構築している」と説明しました。この再編の直接的な理由は、同社のAIコーディングツールがAnthropicやOpenAIの競合製品に対して競争力を持てていないことです。AIコーディングツールとは、プログラマーがコードを書く作業を支援するAI技術のことで、現在AI業界で最も収益性の高い分野とされています。xAIはこの分野での遅れを取り戻すため、競合のCursor社から2人の幹部を新たに採用し、2026年半ばまでに追いつくことを目指しています。

今週の大量退社と組織再編の経緯

2026年3月12日、xAIの共同創業者であるZihang Dai氏とGuodong Zhang氏が会社を去りました。この退社は、マスク氏が同社のAIコーディングツールがAnthropicの「Claude Code」やOpenAIの「Codex」と効果的に競争できていないと不満を表明した直後のことでした。マスク氏によると、3月12日に全社ミーティングが開催され、どのように競合に追いつくかが議論されたといいます。

実は今週の退社だけではありません。1か月前の2月にも、2人の共同創業者を含む11人のシニアエンジニアが会社を去っています。マスク氏はこれを「より大きなビジネスに適した再編成」と説明していました。しかし、その再編だけでは不十分だったようです。フィナンシャル・タイムズの報道によれば、マスク氏が経営する別の会社SpaceXとTeslaの幹部がxAIに派遣され、従業員を評価して基準に達しない人材を解雇しているとのことです。

現在残っている共同創業者は、Manuel Kroiss氏とRoss Nordeen氏の2人のみです。マスク氏を含めた3人で、会社の立て直しに取り組んでいます。

AIコーディングツールが重要な理由

なぜAIコーディングツールがこれほど重要なのでしょうか。それは、この分野がAI企業にとって最も収益を生み出す技術だからです。AIコーディングツールとは、プログラマーがソフトウェアを開発する際に、コードの自動生成や補完、バグの発見などを支援するAIアシスタントのことです。例えば、プログラマーが「ユーザーログイン機能を作りたい」と指示すると、AIが必要なコードを自動的に書いてくれるような機能です。

xAIの言語モデル「Grok」は、年初に性的な画像や攻撃的な画像を生成できる規制の緩さで利用者を急増させました。しかし、そうした話題性だけでは持続的なビジネスにはなりません。AI業界では、コーディングツールこそが安定した収益源になると考えられています。そのため、xAIがこの分野で遅れていることは、単なるイメージの問題ではなく、深刻なビジネス上の課題なのです。

LinkedInのデータによると、xAIの従業員数は5000人強です。これに対してOpenAIは7500人以上、Anthropicは4700人以上を抱えています。人材面でも競合に対して劣勢にあることがわかります。

Cursor社から2人の幹部を採用

組織再編の中で、明るい兆しもあります。2026年3月、Andrew Milich氏とJason Ginsberg氏がAIコーディングツール企業CursorからxAIに加わりました。2人はCursorでプロダクトエンジニアリングを共同で統括していた人物です。

Cursorは、xAIとは異なり、自社でAIモデルを開発していません。代わりに、OpenAIなどの大手AI企業が提供するモデルを利用してサービスを構築しています。そのような企業の幹部がxAIに移籍したことは、自社でAIモデルを持ち、それを動かすための計算資源を直接管理できることの重要性を示しているのかもしれません。xAIの最大の資産である独自の最先端AIモデルは、依然として優秀な人材を引きつける魅力があるようです。

マスク氏は人材確保にも力を入れています。3月13日、マスク氏はXで、同僚のBaris Akis氏とともに過去に不採用とした応募者の書類を見直していると明かしました。面接の機会を与えるべきだった有望な候補者に連絡を取る予定だといいます。マスク氏は「申し訳ない」と、連絡を取らなかった応募者たちに謝罪しました。

長期プロジェクト「Macrohard」の現状

xAIは、コーディングツールよりもさらに野心的なプロジェクトに取り組んでいます。それが「Macrohard」と呼ばれる計画です。マスク氏は、この名前を「マイクロソフトへの面白い言及」だと考えているようです。Macrohardの目標は、ホワイトカラー労働者がコンピューター上で行えるあらゆる作業を実行できるAIエージェントを作ることです。

AIエージェントとは、人間の指示を受けて自律的に複数のタスクを実行できるAIシステムのことです。例えば、「来週の会議の資料を作成して、参加者にメールで送っておいて」と指示すると、AIが自動的にデータを集め、資料を作成し、メールを送信するといった一連の作業を行います。

しかし、このプロジェクトも順調ではありません。2月にプロジェクトリーダーに選ばれたToby Pohlen氏は、数週間で退社しました。Business Insiderの報道によると、Macrohardプロジェクトは現在一時停止しているとのことです。

これに対してマスク氏は、Macrohardが実はTeslaとの共同プロジェクトであることを初めて明らかにしました。Teslaも「Digital Optimus」と呼ばれる補完的なエージェントを開発しているといいます。この名前は、Teslaが開発中の人型ロボット「Optimus」にちなんだものです。マスク氏の説明では、xAIの言語モデルがTeslaのエージェントに指示を出し、タスクを実行させる仕組みになるとのことです。

競合他社も同様のビジョンを追求

xAIのビジョンは野心的ですが、独自のものではありません。AI検索エンジンのPerplexityは、新しい「Everything is Computer」というサービスで、企業ユーザーに専用の「デジタル代理人」を提供し、デジタルタスクを調整する機能を目指しています。また、起業家のPeter Steinberger氏も、OpenClawで人気の個人エージェントを作成した後、現在OpenAIで同様の取り組みを進めています。

つまり、xAIが目指す方向性は業界のトレンドと一致していますが、同時に激しい競争にさらされているということです。

SpaceXとの統合がもたらす圧力

xAIが結果を出すべきプレッシャーは、社内だけでなく社外からも高まっています。xAIは現在SpaceXの一部となっており、SpaceXの株式公開が予想されています。そのため、資金を消費し続けるxAI部門は、言語モデルGrokの実際の利用拡大を示すことが求められています。つまずいているAI部門の話は、マスク氏が投資家に読んでほしくないストーリーです。

SpaceXの従業員数と比較すると、xAIの5000人という規模は決して小さくありません。しかし、収益性の面では課題が残っています。AIコーディングツールでの競争力確保と、長期的なAIエージェントプロジェクトの成功が、xAIの今後を左右することになるでしょう。

できること・できないこと

現在のxAIは、言語モデルGrokを通じて、テキスト生成や画像生成などの基本的なAI機能を提供できます。例えば、質問に答えたり、文章を作成したり、画像を生成したりすることが可能です。また、独自の最先端AIモデルと大規模な計算資源を持っているため、他社のモデルに依存せずにサービスを開発できる強みがあります。

一方で、現時点ではAIコーディングツールの分野で競合に遅れを取っています。AnthropicのClaude CodeやOpenAIのCodexと比べて、プログラミング支援の精度や機能が不足しているようです。また、野心的なMacrohardプロジェクトは一時停止しており、ホワイトカラー業務を全面的に自動化するAIエージェントの実現にはまだ時間がかかるでしょう。マスク氏は2026年半ばまでにコーディングツールで競合に追いつくと予測していますが、それが実現できるかは今後の開発次第です。

私たちへの影響

このニュースは、AI業界の動向に関心を持つ人々や、プログラミングに携わる開発者に影響を与えます。xAIの組織再編と競争力強化の取り組みは、AI業界全体の競争が激化していることを示しています。

短期的な影響については、xAIがCursor社から優秀な人材を獲得したことで、AIコーディングツールの開発が加速する可能性があります。これにより、プログラマー向けのAI支援ツールの選択肢が増え、機能や価格面での競争が進むかもしれません。開発者にとっては、より高性能なツールを選べるようになる可能性があります。

中長期的な影響としては、xAIがMacrohardプロジェクトを成功させれば、オフィスワークの自動化が大きく進展する可能性があります。メール送信、資料作成、データ分析など、現在人間が行っている多くの業務をAIが代行できるようになるかもしれません。ただし、このビジョンはPerplexityやOpenAIなど他社も追求しており、xAIが先行できるかは不透明です。

ただし、xAIの現在の混乱状態を考えると、これらの影響が実現するまでには時間がかかるでしょう。創業メンバーの大量退社や組織再編は、短期的には開発速度の低下につながる可能性もあります。AI業界の競争は激しく、xAIが巻き返しに成功するかどうかは、今後数か月の取り組み次第といえるでしょう。

出典:‘Not built right the first time’ — Musk’s xAI is starting over again, again(techcrunch.com)

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