元Salesforce共同CEO創業のAI企業Sierra、21カ月で年間収益1億ドル達成

元Salesforce共同CEOのブレット・テイラー氏が創業したAIカスタマーサービス企業Sierraが、創業21カ月で年間経常収益1億ドルを達成。企業のAIエージェント導入が急速に進む。テック企業だけでなく伝統的企業も顧客に。

元Salesforce共同CEO創業のAI企業Sierra、21カ月で年間収益1億ドル達成

2025年11月21日、サンフランシスコを拠点とするAIスタートアップSierraが、創業からわずか21カ月で年間経常収益1億ドルに到達したと発表しました。年間経常収益とは、継続的なサービスから得られる年間の売上見込み額のことです。この数字は企業の成長性を測る重要な指標として使われています。Sierraは企業向けのAIカスタマーサービスエージェントを開発する企業で、元Salesforce共同CEOのブレット・テイラー氏と、Googleで18年間勤務したクレイ・ベイバー氏が共同創業しました。この急成長は、企業がAIエージェントを実際のビジネスに導入し始めていることを示す重要な指標となっています。テック業界だけでなく、医療や金融といった伝統的な業界の企業も顧客となっており、AI技術の実用化が幅広い分野で進んでいることがわかります。

創業者も驚く急成長の実態

Sierraの共同創業者であるテイラー氏とベイバー氏は、自社ブログで「予想よりもはるかに早い成長だ」と驚きを表明しています。両氏は豊富な経験を持つ業界のベテランです。テイラー氏はGoogleマップの共同開発者で、FacebookではCTOとして「いいね」ボタンの開発に携わりました。その後、文書作成ツールQuipを創業し、2016年にSalesforceが7億5000万ドルで買収しています。2023年までSalesforceの共同CEOを務めていました。一方のベイバー氏は、GmailやGoogleドライブなどの製品開発を率いてきた人物です。

2023年にテイラー氏がSalesforceを退職した後、ベイバー氏が昼食に誘い、そこでSierraの立ち上げを決めたといいます。2人は2005年にGoogleで出会い、当時テイラー氏がベイバー氏をアソシエイトプロダクトマネージャーとして採用した経緯があります。20年近い関係性が、この新しい挑戦の基盤となっています。

幅広い業界での顧客獲得

Sierraの顧客には、テック企業と伝統的企業の両方が含まれています。テック企業としては、配達サービスのDeliverroo、コミュニケーションプラットフォームのDiscord、経費管理のRamp、電気自動車メーカーのRivian、金融サービスのSoFi、動画配信のTubiなどが名を連ねています。

創業者たちが特に驚いたのは、テック業界以外の伝統的企業からの採用です。セキュリティサービスのADT、清掃機器メーカーのBissell、靴ブランドのVans、保険会社のCigna、衛星ラジオのSiriusXMなど、設立から長い歴史を持つ企業もSierraを導入しています。テイラー氏とベイバー氏は、テック企業がAIカスタマーサービスエージェントを試すことは予想していましたが、伝統的企業も顧客になったことには驚いたと述べています。

Sierraが提供するAIエージェントの機能

SierraのAIエージェントは、これまで人間のオペレーターが行っていたカスタマーサービス業務を自動化します。具体的には、医療機関での患者認証、商品の返品処理、クレジットカードの再発行手続き、住宅ローンの申請サポートなどを行うことができます。これらは単純な質問応答ではなく、複数のステップを含む複雑な業務プロセスです。

従来のチャットボットとの違いは、より高度な理解力と処理能力にあります。従来のチャットボットは決められたシナリオに沿った対応しかできませんでしたが、AIエージェントは状況を理解し、適切な判断を下しながら業務を完遂できます。例えば、顧客の問い合わせ内容を理解し、必要な情報を確認し、システムに入力し、結果を顧客に伝えるという一連の流れを自動で行えるのです。

競合状況と市場での位置づけ

AIカスタマーサービス市場では、DecagonやIntercomといったスタートアップが競合として存在します。しかし、Sierraは自社がこの分野のリーダーであると主張しています。この主張を裏付けるように、同社は2025年9月にGreenoaks Capitalが主導する3億5000万ドルの資金調達を実施し、企業価値は100億ドルと評価されました。他の投資家には、Sequoia、Benchmark、ICONIQ、Thrive Capitalといった著名なベンチャーキャピタルが含まれています。

年間経常収益1億ドルに対して企業価値100億ドルということは、売上の100倍の評価を受けていることになります。これは非常に高い評価倍率ですが、急成長を続けていることがこの高評価の理由となっています。

独自の価格設定モデル

Sierraは、一般的なサブスクリプション型の定額料金ではなく、成果ベースの価格設定を採用しています。これは、完了した業務に対して料金を請求する仕組みです。例えば、AIエージェントが顧客の問い合わせを解決した件数や、処理した返品の数に応じて料金が発生します。

この価格モデルには顧客にとってのメリットがあります。使った分だけ支払うため、初期投資のリスクが低く、効果が出なければ費用も抑えられます。また、Sierraにとっても、顧客の成功が自社の収益に直結するため、より良いサービスを提供する動機付けになります。この価格設定が、幅広い業界での採用を後押ししている可能性があります。

できること・できないこと

SierraのAIエージェントにより、企業は24時間365日の顧客対応が可能になります。例えば、深夜に顧客がクレジットカードの紛失を報告した場合、AIエージェントが本人確認を行い、カードの停止手続きと再発行の申請を即座に処理できます。また、複数の言語での対応も可能なため、グローバル展開している企業にとっては大きなメリットとなります。人間のオペレーターと比べて、待ち時間が短く、一貫した品質のサービスを提供できる点も利点です。

一方で、まだ難しいこともあります。非常に複雑な問題や、感情的な配慮が必要な状況では、人間のオペレーターの方が適切に対応できる場合があります。例えば、深刻なクレームや、顧客が強い不満を抱えている場合などです。また、システムに登録されていない特殊なケースや、判断が難しいグレーゾーンの問題については、人間にエスカレーションする必要があります。今後、AI技術の進化により、これらの制約は徐々に改善されていくでしょう。

私たちへの影響

このニュースは、企業の顧客サービス部門で働く人々と、サービスを利用する消費者の両方に影響を与えます。消費者にとっては、より迅速で効率的なカスタマーサポートを受けられるようになる可能性があります。深夜や休日でも即座に対応してもらえるようになり、待ち時間が大幅に短縮されるでしょう。

短期的な影響については、一部の定型的なカスタマーサービス業務がAIに置き換わっていく可能性があります。ただし、完全に人間が不要になるわけではなく、複雑な問題への対応や、AIのサポート、システムの管理といった新しい役割が生まれます。中長期的な影響としては、カスタマーサービスの仕事の性質が変化し、より高度なスキルが求められるようになると考えられます。問題解決能力や共感力、判断力といった人間ならではの能力がより重要になるでしょう。

ただし、AIエージェントの導入が全ての企業や業務に適しているわけではありません。企業の規模、業種、顧客層によって、導入の効果は異なります。また、プライバシーやセキュリティの観点から、慎重な導入が必要な分野もあります。技術の進化と社会への影響を見極めながら、適切なバランスを見つけていくことが重要です。

出典:Bret Taylor’s Sierra reaches $100M ARR in under two years(techcrunch.com)

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