大規模言語モデル、自己説明能力は「極めて不正確」とAnthropic調査で判明

AnthropicがLLMの自己説明能力を調査。AIは自身の内部処理を説明できると主張するが、実際には高度に信頼性が低いことが判明。AI判断の透明性に課題。

大規模言語モデル、自己説明能力は「極めて不正確」とAnthropic調査で判明

AI開発企業のAnthropicは2025年11月、大規模言語モデル(LLM)が自身の内部処理を説明する能力について調査を実施しました。大規模言語モデルとは、ChatGPTやClaudeのように、大量のテキストデータから学習し、人間のような文章を生成するAIシステムのことです。この調査により、LLMは自分がどのように判断や回答を導き出したかを説明できると主張しますが、その説明は実際の内部処理と大きく異なることが明らかになりました。研究チームは、AIが示す「自己認識」の兆候を一部確認したものの、「内省の失敗が標準的な状態である」と結論づけています。この発見は、AI判断の透明性や説明責任を求める動きが強まる中、重要な意味を持ちます。なぜなら、AIシステムが自身の判断プロセスを正確に説明できなければ、医療診断や法的判断など重要な場面での利用に大きな制約が生じるためです。

調査で明らかになった自己説明の不正確さ

Anthropicの研究チームは、自社のClaudeモデルを含む複数のLLMに対して、特定の質問に答えた理由や判断プロセスを説明するよう求めました。その結果、AIモデルは流暢で説得力のある説明を生成しますが、その内容は実際の内部計算プロセスとは大きく異なることが判明しました。例えば、AIが「Aという理由でBと判断した」と説明しても、実際の内部処理を解析すると全く異なる要因が判断に影響していたケースが多数確認されました。

研究では、AIモデルの内部状態を直接観察する技術を用いて、モデルが生成する説明と実際の処理を比較しました。その結果、説明の正確性は状況によって大きく変動し、全体として「高度に信頼性が低い」という評価になりました。特に複雑な推論を要する質問では、説明と実際の処理の乖離が顕著でした。

背景と経緯

AI技術の発展に伴い、AIシステムの判断プロセスを人間が理解できる形で説明する「説明可能なAI」の重要性が高まっています。特に欧州連合のAI規制法など、世界各国でAIの透明性を求める法規制が整備されつつあります。医療診断、融資審査、採用判断など、人々の生活に直接影響する分野でAIが使われる場合、その判断根拠を説明できることが不可欠とされています。

これまでLLMの開発企業は、モデルに自身の判断理由を説明させることで透明性を確保できると主張してきました。しかし、AIが生成する説明が実際の内部処理を正確に反映しているかは十分に検証されていませんでした。Anthropicは、AI安全性研究に注力する企業として、この問題に正面から取り組む調査を実施しました。

技術的な詳細と発見された「自己認識」の兆候

研究チームは、LLMの内部表現を解析する技術を用いて調査を行いました。LLMは数十億から数千億のパラメータと呼ばれる数値で構成されており、これらが複雑に相互作用して出力を生成します。研究者は、特定の概念や判断がモデル内部でどのように表現されているかを追跡しました。

興味深いことに、調査では一部のケースでLLMが自身の内部状態について正確な情報を持っている兆候が見つかりました。これは限定的な「自己認識」の形態と言えます。例えば、モデルが特定の情報を「知っている」か「知らない」かについて、ある程度正確に判断できる場合がありました。しかし、このような正確な自己認識は例外的であり、多くの場合、モデルは自身の処理について誤った説明を生成しました。

従来のAIシステムは完全なブラックボックスとされてきましたが、この研究は、LLMが部分的には自身の状態を認識できる可能性を示唆しています。ただし、その能力は非常に限定的で信頼性に欠けるため、実用的な説明可能性の実現にはまだ遠い状況です。

できること・できないこと

現在のLLMは、質問に対して流暢で論理的に見える説明を生成することができます。例えば、「なぜこの答えを選んだのか」と尋ねると、理由を列挙し、推論の流れを示すことができます。また、限定的な状況では、自身が持っている情報や確信度について、ある程度正確な判断を示すこともできます。

一方で、これらの説明が実際の内部処理を正確に反映しているとは限りません。LLMは説得力のある説明を生成するよう訓練されていますが、それは必ずしも真実の説明ではありません。複雑な推論や判断においては、説明と実際の処理の乖離が特に大きくなります。また、モデルが「なぜ間違えたのか」を正確に説明することも困難です。今後の研究により、より正確な自己説明能力を持つモデルの開発が期待されますが、現時点では根本的な限界があると言えます。

私たちへの影響

このニュースは、AIシステムを業務や意思決定に活用している企業や個人に重要な影響を与えます。AIが提供する説明を額面通りに受け取ることはできず、批判的に評価する必要があることが明確になりました。

短期的な影響としては、医療、法律、金融など高度な説明責任が求められる分野でのLLM利用に慎重な姿勢が求められます。AIの判断を最終決定の根拠とする前に、人間による検証が不可欠です。また、AI規制の議論においても、単にAIに説明を生成させるだけでは透明性の要件を満たさないという認識が広がるでしょう。

中長期的な影響としては、より信頼性の高い説明可能なAIの開発が加速すると予測されます。Anthropicのような企業が、AIの内部処理を正確に解釈し説明する新しい技術の開発に注力することが期待されます。ただし、LLMの複雑性を考えると、完全に透明で説明可能なシステムの実現には長い時間がかかる可能性があります。利用者は当面、AIの説明を参考情報として扱い、最終判断は人間が行うという原則を維持する必要があるでしょう。

出典:LLMs show a “highly unreliable” capacity to describe their own internal processes(arstechnica.com)

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