第5回|お金をかけないで続ける、という選択
今日は朝から一気にここまで走り切った。AIOSEOからYoastへ入れ替え、IndexNowを有効にし、robots.txtで方針を言葉にして、FAQも作り直し、GA4の枠まで整えている。一区切りついたところで、私は最初に決めていた前提に立ち返った。
LLMのSEOは、まだ従来SEOほど費用対効果が読みやすい段階ではない。少額のツールでさえ、毎月の固定費になると慎重になる。だから私は、Keyword.comは14日間の無料期間で「どんなデータが見えるのか」を確かめたら解約するつもりでスタートした。
(会話)
私「無料期間が終わったら解約する。数字は欲しいけど、まだ固定費にする気にはならない」
AI「わかった。じゃあ、無料期間のうちに“次は自力で回せる見取り図”を持ち帰ろう」
無料期間の目的がはっきりすると、やるべきことが自然に絞れた。
無料期間で、何が見えたのか
AIOの出現と、誰が引用されたか。トラッカーの画面には、日ごとに小さな結果が並ぶ。GA4には、AI由来の参照元からの足跡がほんの少しずつ増える。最初はどちらもゼロに近い。それでも、ゼロは空っぽではない。枠を整えたからこそ、最初に入ってくる光の細さまで拾える。
私は三つだけに絞って見た。
AIOが表示された割合。unicus.topが引用に含まれた割合。GA4での滞在やコンバージョンの変化。数字は跳ね上がらない。それでも気づくことがある。FAQに一問足す、冒頭に短い定義を置く、内部リンクを一本増やす。そんな小さな変更の翌週、AIOが出るクエリがわずかに増えることがある。引用の枠に自分のドメインが顔を出すことがある。
(会話)
私「劇的ではない。でも、確かにゼロのままではない」
AI「十分だよ。いまは“観察→小変更→再観察”の速さがいちばん効く」
解約を前提に、何を残すか
解約は予定どおりにする。その代わり、無料期間でつかんだ骨組みを手元に残す。私は三つだけに絞った。
1つめは、GA4の探索レイアウト。ディメンションはページの参照元URL。指標はセッション、エンゲージドセッション、コンバージョン。AIっぽい参照元を正規表現でまとめたフィルタを保存しておく。これが「クリック後」を受け止める受け皿になる。
2つめは、母集団クエリの表。最初の二十語、広げた百語、さらに足した三十語。スプレッドシートに写して、週に一回だけ手で検索してAIOが出るか、引用にunicus.topが入るかをメモする。面倒なら二十語に戻してもいい。芯が残れば比較はできる。
3つめは、週の同じ時間に見る習慣。見るのは二つだけ。AIOの出現率と、自社の引用率。良かった週は何を足したか、悪かった週は何をしなかったか。短く書き留める。線で見れば、焦りは減る。
(会話)
私「要するに、ツールは“練習相手”。基本を覚えたら、自分のペースで走ればいい」
AI「そう。大事なのは、観察を止めないこと」
小さな場面が教えてくれたこと
印象に残っている場面がいくつかある。FAQが出ないと悩んだ時間。原因はブロックの“名札”だった。YoastのFAQで作り直すと、すぐに機械にも質問と答えとして伝わった。IndexNowのEnableを押す前の数十秒。押してしまえば、更新の伝達は仕組みに任せられる。robots.txtに短いひと言を足して、サイトマップの行を添えたとき。小さな宣言でも、外に向けて言葉にすると気持ちが定まる。
そしてGA4。日本語UIの言い換えに何度も足を取られた。「ページの参照元URL」「書式なしテキスト」。一度対応表が頭に入ると、作業のスピードが変わった。人間側の迷いが減ると、運用は軽くなる。
(会話)
私「派手なテクニックは何もしていないのに、不思議と気持ちに余裕が出た」
AI「土台が揃うと、迷いが減る。そのぶん、内容に時間を使えるようになる」
これからの自分に渡す、最低限の道具
私は最後に、自分へのメモを短く置いておく。
GA4の探索は固定。ページの参照元URL、主要な指標、AI参照元のフィルタ。
母集団クエリは芯を維持。二十語でも百語でもいいが、同じ集合で週次比較。
毎週同じ時間に二つの割合を見る。動かなければ、FAQを一問足す。冒頭に定義を置く。内部リンクを一本増やす。
これなら費用はかからないし、続けられる。慎重な私でも、やってみようと思える。
(会話)
私「結局、無料でやれる範囲の“続く形”が欲しかったんだと思う」
AI「それでいい。いまは、その選択がいちばん合理的」
終わりに
今日のうちに、土台から計測の枠まで整えた。Keyword.comは予定どおり解約する。でも観察はやめない。数字はゆっくり動く。引用は気まぐれだ。それでも、土台とリズムを無料で持ち続ける価値はある。
Enableを押す数十秒、FAQの名札を入れ直す数分、GA4の訳語に戸惑って深呼吸をひとつ。そうした小さな場面の積み重ねで、ゼロは線に変わる。費用対効果に確信が持てないなら、いまはそれでいい。無料でできるところまでやり、続けられる形を残す。次の光は、その先で見える。
ブラウザを閉じる前に、カレンダーのリマインダーだけ確認した。来週の同じ時間、同じ枠を開く。数字が動いていなくても、窓枠は磨いておく。私の仕事は、まずそれで十分だ。
